第2章 地球儀を俯瞰する外交 2 北アフリカ地域情勢(リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、モーリタニア) 欧州・アフリカ・中東の結節点であるマグレブ地域は、歴史的、文化的、言語的共通性を有し、近年、地域としての潜在性が注目されている。一方、当該地域からイラクやシリアに渡った外国人戦闘員の帰還問題や欧州等への不法移民・難民問題もあり、政治体制及び治安情勢の安定が重要課題となっている。 リビアでは、カダフィ政権の崩壊の後、部族社会に根ざす対立と治安の悪化が依然として深刻であり、西(トリポリ)と東(トブルク)の政府勢力に加え、国連を中心とした仲介努力により実現した政治合意に基づく国民統一政府の三勢力が併存している。2017年には、フランスの仲介によるシラージュ国民統一政府首相とハフタル・リビア国軍総司令官の会談(7月)、サラーメ国連事務総長特別代表(SRSG)のロードマップ発表(9月)及びエジプト、アルジェリア及びチュニジアによるリビア周辺国会合等、リビア問題解決に向けた国際社会の取組が進展した。一方、ISIL戦闘員の一部がイラク・シリアからリビアに活動拠点を移してきているとの報告もあり、治安情勢は不安定なままである。リビア国内及び周辺地域の安定のためにも、国際社会の後押しを受け、リビア人による包括的な政治対話が促進し、正統性を持った統一政府の樹立が期待される。 政治的民主化を達成したチュニジアでは、地域間経済格差の解消などの経済改革が課題となっている。2016年3月のリビア国境地域における治安部隊への襲撃事件以降、治安情勢は落ち着いているが、リビア情勢の影響もあり、治安の確保は引き続き重要課題となっている。 アルジェリアやモロッコでは、安定した政権運営が続いている。両国は、リビアやマリなど周辺国和平仲介にも尽力するなど、地域の平和と安定に貢献している。モロッコは、2017年1月にアフリカ連合(AU)に加盟し、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)加盟の意向も示している。今後の動向が注目される。 佐藤外務副大臣のアルジェリア訪問(12月23日、アルジェ) モーリタニアは、政情不安を抱えるマリとの長大な国境線を有しつつも、2012年以降テロ事件は発生しておらず、サヘル諸国の中では比較的安定を保っている。2017年1月には、ガンビアにおける平和的政権交代のための仲介を行い、地域の安定に貢献した。 同国は最も西に位置するアラブの国であるとともにサブサハラ・アフリカ地域に属しており、日本との関係では、ほかの北アフリカ諸国同様、2017年8月のアフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合及び9月の第1回日アラブ政治対話に参加している。