第2章 地球儀を俯瞰する外交 第5節 ロシア、中央アジアとコーカサス 総論 日露関係は、最も可能性を秘めた二国間関係である。 アジア太平洋地域の戦略環境が変化する中、同地域におけるパートナーとしてふさわしい関係をロシアと構築することは、日本の国益及び地域の平和と繁栄に資する。このような認識の下、2017年には、4回の首脳会談と5回の外相会談を始めとして様々なレベルで対話が行われ、政治、安全保障、経済、文化・人的交流等、幅広い分野での日露協力が進展した。 日露間の最大の懸案である北方領土問題については、北方四島における共同経済活動に関し、早期に取り組む5件のプロジェクト候補1が特定された。また、元島民の方々のための人道的措置として、航空機を利用した特別墓参が初めて実施されるなど、2016年12月のプーチン大統領の訪日の際に首脳間で合意した事項2の具体化が進められた。 政府としては、引き続き、首脳レベルを含む様々なレベルでの政治対話を積み重ねつつ、幅広い分野で日露協力を進める中で、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、ロシアとの交渉に精力的に取り組む方針である。 中央アジア・コーカサス諸国は、アジア、欧州、ロシア、中東を結ぶ地政学的な要衝に位置し、石油、天然ガス、ウランを始めとする鉱物などの天然資源が豊富である。また、この地域は、同諸国を含む地域全体の安定、テロとの闘い、麻薬対策といった国際社会が直面する重要課題に取り組んでいく上でも重要性が高い。 2017年、日本と中央アジア・コーカサス諸国は外交関係樹立25周年を迎えた(コラム「中央アジアの魅力発信~節目の年に漫画や料理から~」104ページ参照)。日本は、要人往来等を通じてこれら諸国との二国間関係の強化を引き続き図るとともに、「中央アジア+日本」対話の枠組等を活用した地域協力促進のための取組を続けている。 1 ①海産物の共同増養殖プロジェクト、②温室野菜栽培プロジェクト、③島の特性に応じたツアーの開発、④風力発電の導入及び⑤ゴミの減容対策 2 2016年12月の日露首脳会談の結果、両首脳は、平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明するとともに、北方四島における共同経済活動を行うための協議の開始に合意し、また、元島民の方々による墓参などのための手続を改善することで一致した。