第4章 国民と共にある外交 3 地方自治体などとの連携 地方創生は内閣の最重要課題の1つであり、外務省としても地方創生に結び付く力強い外交を推進するため、本省及び在外公館が一体となり、地方の活性化に資する様々な施策を積極的に推進している。 日本国内では、2015年に開始した外務省の施設である飯倉公館を活用した地方創生支援プロジェクトを香川県(2月)、茨城県(6月)及び和歌山県(11月)との共催により実施した。これは、外務大臣とそれぞれの県知事との共催で各国駐在大使、各国商工関係者等を飯倉公館に招き、セミナーやレセプションを開催するものであり、いずれも多数の関係者が出席する中、地方の多様な魅力を内外に広く発信した。 香川県知事との共催レセプションでのステージパフォーマンス(2月9日、東京(外務省飯倉公館)) 茨城県知事との共催レセプションでのブースの様子(6月1日、東京(外務省飯倉公館)) 和歌山県知事との共催レセプションでの鏡開き(11月10日、東京(外務省飯倉公館)) これに加え、2016年には、地方の魅力をグローバルに発信する新たな取組を開始した。これは、外務大臣始め外務省のハイレベルが、自ら駐日外交団と共に日本の地方を訪れ、地元の方々と対話を行い、地方の魅力を世界に発信することにより、地方と世界をつなぎ、地域の更なる活性化を目指すものである。このプロジェクトの一環として、11月に、岸田外務大臣等は宮城県を訪問した。 「地方を世界へ」プロジェクト:松島大漁かきまつり in 磯島への参加(11月23日、宮城県松島町) 上記のほか、駐日外交団等を対象とした「地域の魅力発信セミナー」及び「地方視察ツアー」を実施した。2月には、外務省で宮城県、宮崎県、奈良県橿原市、栃木県が、また、6月には、都内ホテルで長野県、神奈川県横須賀市、長崎県壱岐市、三重県鈴鹿市が、それぞれの魅力を発信する「地域の魅力発信セミナー」を実施し、駐日外交団等から、それぞれ70から80人の参加を得た。同セミナーでは、参加自治体から駐日外交団等に対し、各地域の観光の魅力や投資環境の利点を訴えるプレゼンテーションを行い、その後各地域の特産品や観光を紹介するブース出展と交流会を行った。 地域の魅力発信セミナー:交流会の様子(6月30日、東京) また、駐日外交団が参加する「地方視察ツアー」を栃木県(2月)、神奈川県横須賀市(5月)、長野県(7月)、福岡県福岡市・長崎県壱岐市(11月)で実施し、毎回20から30人程度の駐日外交団が参加した。外交団は地域の研究・文化・産業施設等を視察したほか、自治体首長との意見交換、地元の各種団体や学生との交流を行った。 地方視察ツアー:市長主催歓迎レセプション(5月23日、神奈川県横須賀市) 地方視察ツアー:観光列車「ろくもん」(7月29日、長野県上田市) 地方視察ツアー:外交団を出迎えるゆるキャラ「人面石くん」(11月8日、長崎県壱岐市) さらに、外務省では自治体に対し、最新の外交政策等に関する説明や意見交換の場を積極的に提供している。その一環として「地方連携フォーラム」を1月に開催した。第1部の外交政策説明会では「経済外交と官民連携」について説明し、第2部の分科会では「外国メディアを通じた海外発信」、「地方連携」、「ジャパン・ハウスを通じての日本の多様な魅力の発信」、「官民連携(ODAを活用した日本企業・地方自治体の海外展開支援)」及び「地方創生の取組(新型交付金等の活用)」について意見交換を行った。本フォーラムには、自治体の実務者を中心に約250人が出席した。 海外では、2015年に引き続き東日本大震災後の風評を払拭し、被災地等の地方自治体と連携して観光や食の魅力をPRする「風評被害対策海外発信支援事業」を、2016年2月にソウル及び台北(公益財団法人交流協会主催)で実施した。ソウルでは、在韓国日本大使公邸でのレセプションを現地政府関係者、観光・流通・報道関係者等を招いて開催し、青森県、宮城県、福島県及び鹿児島県が参加した。また台北では、オープニングレセプションを台湾当局関係者、食品・観光・報道関係者を招いて開催したほか、一般市民向けPRイベントを行い、岩手県、宮城県、福島県、千葉県及び愛媛県が参加し、2日間で約1万7,000人が来場した。 風評被害対策海外発信支援事業(2月26日、台北) また、在外公館施設を活用し、自治体が地方の魅力を発信し、地場産業や地域経済の発展を図るための支援策である「地方の魅力発信プロジェクト」をアジア、北米及び欧州地域で20件行った。このうち、例えばアジアでは、熊本県の上海事務所が、6月に在上海日本国総領事館と共催で熊本地震による観光を中心とした風評払拭、熊本への応援・義援金に感謝するイベントを総領事館で開催し、熊本を始め九州の魅力をPRした。 このほか、外務省では様々な取組を通じて日本と海外の間の姉妹都市交流を支援している。具体的には、在外公館長や館員が海外の姉妹都市提携先を訪問して、国際交流・経済交流関係担当幹部などと意見交換を行ったり、在外公館長が赴任する前や一時帰国した際に日本国内の地方の都市を訪問し、姉妹都市交流に関する意見交換や講演を行ったりすることで、地方の国際的取組への支援を行っている。加えて、日本の自治体と姉妹都市提携を希望している海外の都市等がある場合は、都道府県及び政令指定都市宛てに情報提供するとともに、外務省ホームページの「グローカル外交ネット」で広報するなどの側面支援を行っている(2)。 また、各地の日本産酒類(日本酒や日本ワイン等)の海外普及促進の一環として、各在外公館による任国の要人や他国外交団との会食で日本産酒類を提供したり、天皇誕生日祝賀レセプション等の大規模な行事の際に日本酒で乾杯をするなど日本産酒類を紹介する機会を設けている。この結果、世界各地において、これらの会食やレセプションの参加者から、日本産酒類に対する好意的な感想・評価が得られるとともに、理解の増進や関心の喚起が図られている。 さらに、地方の企業支援として、開発途上国の急速な経済開発に伴いニーズが急増している水処理、廃棄物処理、都市交通、公害対策等に対応する優れた知見を蓄積している地方の中小企業に対して、日本の地方自治体と連携してODAを活用した海外展開支援を行い、開発協力を進めている。これは、地元企業の国際展開やグローバル人材育成、日本方式のインフラ輸出にも寄与し、ひいては地域経済・日本経済全体の活性化にもつながっている。 2 2017年2月現在日本との姉妹提携数(都道府県、市区町村含む。)が多い国は、多い順に米国(448件)、中国(362件)、韓国(163件)、オーストラリア(108件)、カナダ(70件)等(一般財団法人自治体国際化協会による集計、同協会ホームページhttp://www.clair.or.jp/j/exchange/参照)