第4章 国民と共にある外交 第3節 国民の支持を得て進める外交 総論 〈国民への積極的な情報発信〉 外交政策を円滑に遂行するに当たっては、国民の理解と支持が必要不可欠であり、政策の具体的内容や政府の役割などについて、迅速で分かりやすい説明を行うことが重要である。このため、外務省は、各種メディアや講演会・刊行物等を活用し、機動的かつ効果的な情報発信の体制強化に努めている。 迅速な情報発信のため、外務大臣、外務副大臣又は外務報道官のいずれかによる定例記者会見の場が設定されているほか、必要に応じ、臨時の記者会見を行っている。また、特定の問題に関し日本の立場を表明する外務大臣談話や外務報道官談話、外交活動などについて情報を発信する外務省報道発表を随時発出している。さらに、これらの情報発信に加えて、外務大臣、外務副大臣や外務大臣政務官がテレビなどに出演し、国民に対し外交政策を直接説明しているほか、外交活動の取材調整も行っている。 インターネットを通じた情報発信としては、外務省ホームページにおいて、総理大臣や外務大臣の外交活動に関する情報を迅速に発信するとともに、日本の外交政策や各国情勢などの最新情報や基礎情報を提供している。また、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどのソーシャルメディアを活用した情報発信にも努めている。 「国民と対話する広報」の一環として、外務大臣による講演会を開催しているほか、外交政策や国際情勢についての理解促進や次世代の日本を担う人材育成のために、全国の国際交流団体、大学や高校などで外務省員による各種講演会を実施している。また、外務省ホームページの「ご意見・ご感想コーナー」などの広聴活動を通じて、国民との双方向コミュニケーションの向上にも努めている。 〈外交記録公開〉 外務省は、外交に対する国民の理解と信頼を一層促進するため、「外交記録公開推進委員会」を設置し、外交記録文書の迅速な移管と公開に積極的に取り組んでいる。また、公文書管理法にのっとり外交史料利用の利便性向上にも努めている。 〈外交実施体制の強化〉 多岐にわたる外交課題が山積する中、外交の基盤となる外交実施体制を一層拡充することが不可欠である。外務省は、国内外の情勢変化に対応した機動的な外交を進めるために、限られた資源を優先順位の高い業務に投入するとともに、外交実施体制の強化に引き続き取り組んでいる。 日本外交の海外における拠点となる在外公館については、2016年1月にモルディブ、ソロモン、バルバドス、タジキスタン、トルクメニスタン及びモルドバの6か国に大使館を、レオン(メキシコ)及びハンブルク(ドイツ)の2都市に総領事館を設置した。しかしながら、日本の在外公館数は他の主要国と比べて依然として低い水準にあり、引き続き在外公館の体制整備を戦略的に進めていく考えである。 人員についても、他の主要国と比較して、日本の外務省の人員数は少なく、複雑化する国際的な課題に適切に対処し、主要国と肩を並べて国際貢献をしていくためにも、より一層の増強が必要である。同時に、一人一人の外交官の使命感及び見識、語学能力の研鑽(けんさん)、及びこれらを通じた対外発信と情報収集の能力向上に資する研修制度の強化も必要である。今後も更なる合理化のための努力を行いつつ、必要な外交実施体制の確保に尽力していく。 このような外交実施体制を支えるとともに、戦後70年を機に、積極的平和主義の立場からの外交を力強く展開するため、外務省は2015年度予算において6,854億円を計上した。 〈外交における有識者などの役割〉 国家安全保障戦略(平成25年12月閣議決定)にも触れられているとおり、日本の外交・安全保障についての知的基盤を広げ、国民の幅広い参画を得た外交を推進することは、中長期的な外交力の強化につながる。このため、外務省は、外交・安全保障分野の国内シンクタンクとの連携を深め、その育成や支援を強化し、民間の有識者の知見を積極的に生かしていく考えである。