第2章 地球儀を俯瞰する外交 2 カナダ (1)カナダ情勢 10月、第42回連邦下院総選挙が実施され、自由党が単独過半数を獲得した結果、約10年ぶりに政権が交代し、11月4日、ハーパー首相が辞任し、トルドー新内閣が発足した。 外交面では、カナダは伝統的に緊密な米加関係を背景に国連、北大西洋条約機構(NATO)、G7、G20、米州機構(OAS)など多国間の場を活用した外交を展開し、90年代半ばには、平和構築構想(紛争予防、復興支援)を打ち出すとともに、国連平和維持活動、対人地雷問題、人間の安全保障の推進等に積極的に取り組んできた。トルドー新政権は、外交政策の基本を多国間主義とすると表明し、伝統的なマルチ外交へ回帰するとの方針を示している。外交上の優先課題である気候変動分野で向こう5年間で総額26億5,000万カナダドルの新興国向け支援を表明しているほか、国連平和維持活動(PKO)活動への関与強化も見込まれる。 経済面では、1月に韓国との自由貿易協定(FTA)交渉が発効し、7月にはウクライナとのFTAが妥結した。また、2016年2月に署名に至ったTPP協定の参加国であり、アジア太平洋地域の国々との経済関係の構築や、域内における貿易の拡大に継続的に取り組んでいる。 (2)日・カナダ関係 岸田外務大臣は、11月、フィリピンでのAPEC閣僚会合の機会にディオン外相との間で外相会談を行った。両外相は、核軍縮、地域と国際社会の平和と安定及び繁栄に向けて協力していくことで一致したほか、アジア太平洋地域情勢に関するやり取りの中で、一方的な現状変更の試みは国際社会共通の懸念であることや紛争の平和的解決といった法の支配の重要性を確認した。また、経済分野においても、両外相は、TPP協定が地域にもたらす恩恵について認識を確認するとともに、二国間の貿易投資を更に発展させていくことで一致した。 さらに、安倍総理大臣は、同じく11月、APEC首脳会議の際にトルドー首相との間で首脳会談を行った。両首脳は安全保障分野での協力を強化することで一致したほか、上記外相会談でのアジア太平洋地域情勢に係る両国の認識を再確認した。 日加首脳会談におけるトルドー首相と安倍総理大臣(11月18日、フィリピン・マニラ 写真提供:内閣広報室) 経済分野では、この首脳会談において、両首脳はTPP協定が地域の貿易、投資及び経済成長を促進するものであるとの認識で一致した。安倍総理大臣からは、カナダからのLNG輸出の早期実現や日系企業のビジネス環境の改善に向けた協力を要請した。また、日・カナダ両首脳は、科学技術や気候変動等の幅広い分野での二国間協力を継続していくことで一致した。 このほか、11月には両政府が参加する形での有識者間の対話である第13回日・カナダ安全保障シンポジウムがオタワで実施され、活発な意見交換が行われた。2016年2月、岸田外務大臣は、カナダを訪問し、ディオン外相と会談を行った。両外相は、G7に向けた連携のほか、アジア太平洋地域の重要なパートナーである日本とカナダが、北朝鮮、テロ、サイバーといった国際社会が直面する喫緊の課題について国際社会を共にリードしていくことを確認した。