第4章 国民と共にある外交 第2節 海外における日本人への支援 総論 海外に渡航する日本人は年間延べ約1,747万人(2013年)、海外に在住する日本人は約126万人(2013年10月現在)に上っている。海外に渡航及び在住する日本人の増加に伴い、日本人が海外において事件・事故に巻き込まれたり、テロ、暴動や自然災害などに遭遇する危険性も増している。海外における日本人の生命・身体を保護し、利益を増進することは、外務省の重要な任務の1つである。 外務省は、海外におけるテロ・誘拐を含む事件や事故、戦乱や紛争、自然災害や感染症などに関する情報を国民に対して適時提供している。また、必要な安全対策をとるよう呼びかけてきている。危険に巻き込まれた日本人に対しては、可能な限りの支援を行えるように、その体制や基盤の強化に努めてきている。特に、2013年1月に発生したアルジェリアにおける日本人などに対するテロ事件を教訓として、海外に在住する日本人や海外の日本企業の安全確保策を強化してきた。また、2014年8月から2015年2月にかけてのシリアにおける邦人殺害テロ事件を踏まえ、「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」を立ち上げ、海外における邦人の安全対策について、今後の必要な施策とその実現に向けた方策について改めて検討を行っている。 2014年は、西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネでエボラ出血熱が流行した。外務省は、渡航者や海外に在住する日本人に対し、流行国への渡航や滞在に関する注意喚起を行うとともに、流行状況や感染防止策などの情報提供を行ってきている。 また、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)が、2014年4月1日に発効した。外務省は、条約の実施に中心的な役割を担う「中央当局」として、不法に連れ去られた子の返還や、国境を越えた子との面会交流の実現のための援助を行っている。 日本国大使館や総領事館では、海外における日本人の生活を支えるために旅券(パスポート)や各種証明の発給、戸籍・国籍関係届出の受理、在外選挙の実施などの基本的な行政サービスを提供している。また、日本人学校や補習授業校への支援などを通じて、海外で暮らす日本人の生活基盤を支えている。さらに、日本との「架け橋」となって各国との関係緊密化にも貢献してきた日本人移住者や日系人への支援も行っている。加えて、領事専門家の育成や研修の強化、官民協力のネットワーク強化などを通じ、日本人の安全の保護や利益の増進を担う領事業務がより充実したものとなるよう取り組んでいる。