第4章 国民と共にある外交 第1節 世界とのつながりを深める日本社会と日本人 総論 〈外国人の活力を日本の成長へ〉 日本と外国との間で人の往来を増やすことは、経済の活性化や異文化間の相互理解につながる。このような考えから、外務省は、外国人の日本への入国や円滑な滞在のための利便性の向上を図っている。 現在、政府は観光立国推進及び地方創生を重視しており、外務省は、前年に引き続き、ASEAN諸国を中心にビザ発給要件の緩和を実施した。円安などの様々な要因もあり、2014年の訪日外国人数は約1,300万人を超え、過去最高を記録した。一方で、観光立国推進と世界一安全な日本の両立を図るため、厳格なビザ審査にも取り組んでいる。 日本経済の更なる活性化を図り、競争力を高めていくためには、有能な人材を国内外問わず確保することが重要である。「『日本再興戦略』改訂2014」では外国人材の一層の活用が掲げられている。外務省は、外国人材を受け入れるための制度が人権を尊重したものとなるよう、関係省庁と協力している。また、外国人の受入れや社会統合に伴う具体的課題や取組について、国民参加型の議論の活性化に努めている。 〈国際機関と日本人〉 国際機関には、様々な国籍の職員が集まり、それぞれの能力や特性を活かして、地球規模の課題を解決するために活動している。 日本は、財政的・知的貢献に加え、人的貢献も行ってきている。より多くの日本人が国際機関で活躍すれば、国際社会における日本のプレゼンス強化につながることが期待され、日本の人的資源も豊かになる。 外務省は、国際機関で活躍・貢献できる人材の発掘・育成・支援・情報提供などを実施しており、優秀な日本人が世界で活躍できる環境づくりに引き続き積極的に取り組んでいく。 〈NGOとボランティア〉 今日、政府以外の主体の力を活かし、オールジャパンでの外交を展開する観点から、開発途上国などに対する支援活動の担い手や政策提言を行うチャネルとして、非政府組織(NGO)の重要性が近年ますます高まっている。保健、水・衛生、教育、防災、環境・気候変動や難民・被災民に対する緊急人道支援など、日本が得意とし、国際社会に貢献できる分野で、NGOの役割は大きい。外務省は、NGOを国際協力における重要なパートナーと位置付け、資金協力、活動環境整備、政策対話などを通じて、連携強化に努めている。 青年海外協力隊(JOCV)やシニア海外ボランティア(SV)などの、国際協力機構(JICA)ボランティア事業の参加者は、派遣された国・地域の現地において、人々と同じ目線で開発課題の解決に向け一緒に汗を流して取り組んでおり、国際協力の重要な担い手である。こうした事業は日本の「顔の見える援助」を代表する取組として各国から高い評価を得ており、現地の経済・社会の発展のみならず、日本とこれらの国・地域との間の相互理解や友好親善の促進にも大きな役割を果たしている。また、帰国したボランティア事業参加者の知識や経験が日本社会に還元されるとの観点からも、これら事業の意義は大きい。 〈地方自治体などとの連携〉 国際的な相互理解、信頼関係の構築、日本のブランド力強化など幅広い分野で重層的に良好な国際関係を築いていく上で、地域の団体・市民や地方自治体などは極めて重要な役割を果たしている。 外務省は、地方自治体などを、外交を推進していく上での重要なパートナーと位置付け、オールジャパンでの総合的外交力の強化を目指している。このために、@地方の魅力の世界への発信、A地方の国際的取組の支援、B国際交流に関する広範囲な情報の提供に重点を置きつつ、地方自治体などとの様々な連携策を実施している。 また、安倍内閣の最重要課題である「まち・ひと・しごと創生」に政府一丸となって取り組むため、外務省でも「外務省まち・ひと・しごと創生対策本部」を立ち上げ、地方創生に資する地方と海外の連携強化のため、力強い外交を推進している。