第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交 第4節 日本への理解と信頼の促進に向けた取組 総論 〈背景〉 今日、広報文化外交をめぐる環境は大きく変化しつつある。 第一に、多くの国々が政策広報や文化交流に多くの資源を投入するようになり、広報文化外交の世界においても、国家間の競争が激しくなっている。 第二に、世界の情報量が飛躍的に増大し、情報伝達の在り方もますます多様化する中、海外の一般市民やオピニオン・リーダーを含め、知日層・親日層の裾野を幅広く拡大するには、これまでの施策に加えて、新たな発信の在り方が求められている。 第三に、政府のみならず、シンクタンク、メディア、個人など専門性を有する多様な主体が一層活発に活動しており、国際的に影響力のあるネットワークを形成している。これらの主体と積極的に交わることも、日本が国際社会における存在感を発揮し、信頼と好感を得る上では、不可欠である。 〈基本方針〉 日本は、戦後70年にわたり、アジア太平洋地域や世界の平和、発展、民主化などに大きな貢献を果たしてきた。今後も、先の大戦の深い反省や戦後の平和国家としての歩みを踏まえながら、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の観点から、地域の平和と繁栄に貢献するとともに、国連安保理改革、核軍縮・不拡散、気候変動、「女性が輝く社会」の実現、防災を始めとする開発課題といった地球規模の課題に取り組み、世界の平和と繁栄に引き続き貢献していく考えである。外務省は、こうした立場を、対外発信の枠組みを効果的に活用しつつ、世界に向けて発信していく。 〈戦略的対外発信の強化〉 外務省の2015年度予算案には、戦略的な対外発信に充てる予算を大幅に増額して計上した。こうした予算を効果的に活用し、日本の「正しい姿」を強く発信していくのみならず、日本の多様な魅力を活かして、親日派・知日派を拡大し、戦後70年、そしてそれ以降の日本の対外発信を強化していく。 〈文化外交〉 多様な文化が共存する世界において、文化の多様性を尊重しつつ、相互理解を進めていくことは、平和と繁栄の基盤づくりにつながる。こうした考えの下、日本の伝統文化やポップカルチャーへの理解を深めるとともに、人的・知的交流や日本語の普及に努めている。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向け、スポーツを通じた国際貢献策「Sport for Tomorrow」を推進していく。さらに、ユネスコなどと協力し、世界の有形・無形の文化遺産の保護への取組と、日本の文化遺産の世界遺産一覧表及び無形文化遺産代表一覧表への登録を進めていく。