第3章 国益と世界全体の利益を増進する外交 2 地球規模の課題への取組 (1)ミレニアム開発目標(MDGs)・ポスト2015年開発アジェンダ ミレニアム開発目標(MDGs)は、2015年までに国際社会が貧困削減、保健、教育などの開発分野において達成すべき、世界共通の目標である。具体的な数値目標とその達成期限を定めたMDGsは、開発分野の羅針盤と言える。MDGs達成のため、日本は国際社会での議論や取組をリードしている。 2015年9月には、2015年より先の国際開発目標(ポスト2015年開発アジェンダ)が採択される。ポスト2015年開発アジェンダは、MDGsの教訓や経験を活かしつつ、国際社会の変化を考慮し、新たな課題に対処できる枠組みとする必要がある。人間の安全保障の理念に基づき、保健や防災といった日本の強みを活かし、新興国、NGO、民間セクターなどが協力する枠組みにすべく、日本は議論に積極的に貢献している。 例えば、2014年5月にヤウンデ(カメルーン)で開催された第1回TICAD V閣僚会合において、岸田外務大臣は、人間の安全保障を推進する開発の3つの要素として包摂性、持続可能性、強靭性が不可欠であるとの考えを提唱した。7月には三ツ矢外務副大臣が国連経済社会理事会(於:ニューヨーク(米国))で、特に都市開発と防災の重要性に触れる形で日本の考えを発信した。 また、2013年3月から13回にわたり国連「持続可能な開発目標(SDGs)オープン・ワーキング・グループ」の会合が開催され、2014年7月、ポスト2015年開発アジェンダの主要な基盤となるSDGs報告書がまとめられ、17のゴールとその下の169のターゲットが提案された。8月には、国連「持続可能な開発のための資金に関する政府間専門家委員会」の報告書が提出された。これらのプロセスには日本もメンバーとして積極的に参加し、議論に貢献した。 ア 人間の安全保障 人間の安全保障とは、人間一人ひとりを保護するとともに、自ら課題を解決できるよう能力強化を図り、個人が持つ豊かな可能性を実現できる社会づくりを進める考え方である。日本は、人間の安全保障を外交の柱の1つと位置付け、国連などにおける議論や日本のイニシアティブにより国連に設置された人間の安全保障基金の活用、草の根・人間の安全保障無償資金協力などの支援を通じ、10年以上にわたって、この概念の普及と実践に努めてきた。ポスト2015年開発アジェンダの策定に向けた議論においても、人間中心のアジェンダが重要であるとの認識が共有され、人間の安全保障の考え方が反映されている。 人間の安全保障の概念 イ 防災分野の取組 世界で毎年2億人が被災(犠牲者の9割が開発途上国の市民)し、自然災害による経済的損失が年平均1,000億米ドルを超えることから、防災の取組は貧困撲滅と持続可能な開発の実現にとって不可欠である。多数の災害の経験を有する日本は、防災分野で積極的な国際協力を実施している。日本が持続可能な開発における重要性を積極的に主張したこともあり、SDGs報告書では、防災に関するターゲットが複数含まれている。また、7月に東京にて、クラーク国連開発計画(UNDP)総裁の出席も得てUNDPの人間開発報告書の国際公式発表が行われた。安倍総理大臣は、この人間開発報告書のテーマである強靭性の構築に向けて、UNDPを始めとする国際機関や国際社会と連携し、防災分野などで積極的に貢献していくと強調した。9月の国連気候サミット(於:ニューヨーク(米国))では、安倍総理大臣が強靭性セッションの共同議長を務め、冒頭発言で日本の国際防災協力を紹介し、第3回国連防災世界会議の成功に向けた各国の協力を呼びかけた。 2015年3月に仙台市で開催される第3回国連防災世界会議(1)の機会も利用し、これまでの災害で得た経験と教訓を世界と共有し、各国の政策に防災を取り入れる防災の主流化を引き続き推進する考えである。 国連気候サミット強靭性セッションで共同議長を務める安倍総理大臣(9月23日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室) ウ 教育分野の取組 教育分野では、「日本の教育協力政策2011-2015」に基づき、少なくとも700万人(延べ2,500万人)の子供に質の高い教育環境を提供する取組を実施しており、MDGsと万人のための教育(EFA)ダカール目標(2)の達成に向けて貢献している。また、教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)理事会などの教育支援関連会合やEFAダカール目標の後継目標であるポスト2015年教育アジェンダ策定に向けた国際的な議論にも積極的に参加している。 エ 農業分野の取組 日本はこれまでG7やG20などの関係各国や国際機関とも連携しながら、開発途上国の農業・農村開発を支援している。特に2014年は、G20開発作業部会において、フランスと共に食料安全保障分野の共同ファシリテーターを務めた。 オ 水と衛生分野の取組 日本は、1990年代から継続して水と衛生分野でのトップドナーであり、日本の経験、知見、技術を生かした質の高い支援を実施している。国際社会での議論も積極的に推進し、3月には2014年世界水の日記念式典「水とエネルギーのつながり」が、10月には国連水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)会合がそれぞれ東京で開催された。 (2)国際保健 人々の生命を脅かし、あらゆる社会・文化・経済的活動を阻害する保健課題の克服は、人間の安全保障に直結する国際社会共通の課題である。日本は、世界で最も優れた健康長寿社会を達成しており、保健分野における日本の積極的な貢献に一層期待が高まっている。日本は、保健分野への支援を通じて、人々の健康の向上、健康の権利が保障された国際社会の構築を目指している。 このような理念の下、日本はこれまで多くの国や世界保健機関(WHO)、世界銀行(WB)、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、Gaviワクチンアライアンス、国連人口基金(UNFPA)、国連児童基金(UNICEF)といった様々な援助機関と協力しながら、感染症や母子保健、栄養改善などの保健課題の克服に大きな成果をあげてきた。しかし、依然として年間約358.4万人が三大感染症(3)により死亡しているほか、630万人の5歳以下の乳幼児(4)や約29万人の妊産婦(5)の多くが予防・治療可能な原因で死亡しており、更なる取組の強化が急務である。また、経済発展に伴い、開発途上国においても、新たな保健課題として、非感染性疾患への対応が求められている。 このような中、日本は保健を国際協力の重要課題と位置付け、2013年5月に策定した国際保健外交戦略により、MDGs達成に向けた取組に加え、全ての人が基礎的保健医療サービスを受けられることを意味するユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を推進している。UHCは、国内の保健医療サービスへのアクセスの格差を是正する役割を担い、多様化する保健課題に対し、開発途上国政府が自ら効果的な資源配分を行うことも可能にする。日本は、様々な国際会議などの機会を通じて世界各国とその経験を共有し、UHCの重要性を発信している。また、世界銀行やWHOなどとも協力しつつ、研修の実施などUHCに向けた支援に取り組んでいる。 また、エボラ出血熱や新型インフルエンザなどの新興・再興感染症による公衆衛生危機を未然に防ぐことは、安全保障の観点からも重要であり、各国における強靱な保健システムの構築やWHO国際保健規則の能力強化を促進するため、国際社会と連携しつつ進めている。 母親の子宮をイメージして作られたという新型の新生児用ベッドを視察する研修員(6月30日、高槻市・高槻病院 写真提供:今村健志郎/JICA) エボラ出血熱と闘う日本人たち 〜西アフリカからの手記〜 エボラ出血熱対策に携わる日本人専門家の派遣 私は2014年11月12日から12月24日までリベリアに派遣されエボラ出血熱流行の対応にあたった。世界保健機関(WHO)はこのような大規模な感染症流行の際に専門家を派遣するためのネットワークを2000年から運用している。今回は、このネットワークを通じて、WHOのリベリア事務所に設置されたエボラ対応チームに日本政府から派遣され、エボラ出血熱対応の支援を行った。 対応チームでの役割としては、当初は主に地域レベルの対応の支援を行うというものであった。派遣されていた11月中旬から12月中旬は、リベリアでの感染者数は減少傾向にあったものの、依然として毎日新たな感染者が発生していた。特に首都のモンロビアでの感染拡大が続いており、モンロビアから飛び火する形で地方にもホットスポットと呼ばれる感染者の集積する場所が次々と発生している状況であった。派遣期間の前半は、主にこのようなホットスポットのある地域の活動の支援を行っていた。また、感染制御・サーベイランス・社会動員など6つのチームに各国から40人程度の専門家が派遣されており、後半には、地域の活動の支援に加え、これら対応チーム全体の調整も行っていた。 リベリア各地に派遣されているWHOのコーディネータと地域での流行への対応の協議 (12月2日、Margibi County) エボラ出血熱は、本来それほど制御の困難な感染症ではないが、リベリアを含む3か国では保健医療基盤が脆弱(ぜいじゃく)であり、さらに国際社会の対応が遅れたことが、今回のような大規模な流行につながったと考えられている。地域規模化の進展と共にこのような感染症が国境を越えて伝播(でんぱ)するリスクは確実に増加している。日本への波及を未然に防ぐという観点からも、このような流行への対応にも日本がより積極的な国際貢献をしていく必要がある。 東北大学大学院医学系研究科教授 押谷 仁 外務省職員の国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER)への派遣 エボラウィルスの共同発見者で、ロンドン大学公衆衛生大学院学長のピオット博士は、2014年11月の日本での講演で、この人道的危機を招いたのはWHOの能力欠如であると断じた。UNMEERを理解する鍵だ。UNMEERはWHOの技術的知見と他の国連機関のオペレーション能力を組み合わせて設立された。この能力は、技術的知見の上に危機を予測し対応する判断力も含むが、最前線にあった国境なき医師団が状況はコントロールできないと世界に警告を発した2014年6月、ようやくWHO指導部は実質的行動を開始した。 そして10月、国連で初めての保健ミッションであるUNMEERが国連事務総長のリーダーシップで立ち上がり、機動力に優れたWFP(世界食糧計画)が医療資材を調達するなど、各機関の強みを活かした活動が行われた。多くのWHO職員がUNMEERの旗の下に参集し、その活動は高く評価されている。 小沼UNMEER事務総長特別代表シニア・アドバイザー (写真提供:Anthony Banbury) こうして12月には事態が沈静化に向かう中、私はUNMEER事務総長特別代表のシニア・アドバイザーに迎えられた。戦略的助言が私の任務である。感染国の将来の対応能力強化も見据え、ピオット博士の協力もいただき、医療データで国際的権威を誇る保健指標評価研究所(IHME)とUNMEERの共同プロジェクトを立ち上げた。保健が国連の緊急課題となるのは、2000年のエイズ以来だ。その際はグローバルファンドという機関の設立につながった。国際社会はエボラ出血熱による高い犠牲を払い、二度とこのような事態を起こさないためにどうすべきかの回答も求められている。 UNMEER事務総長特別代表シニア・アドバイザー 小沼 士郎 (3)環境問題・気候変動 ア 地球環境問題・持続可能な開発 日本は、多数国間環境条約や各種フォーラムなどを通じ、資源の枯渇や自然環境の破壊に対処し、持続可能な開発の実現に向けて積極的に取り組んでいる。9月には、第3回小島嶼開発途上国(SIDS)国際会議がサモアで開催され、気候変動を始めとする環境問題による影響を受けやすいSIDS諸国における持続可能な開発について議論が交わされた。11月には、愛知県・名古屋市や岡山市において、日本政府と国連教育科学文化機関(UNESCO)が共催して持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議を開催した。また、2012年の国連持続可能な開発会議(リオ+20)で国連環境計画(UNEP)の強化について合意されたことを受け、6月、第1回国連環境総会(UNEA)がケニアで開催され、閣僚級成果文書や環境分野の様々な課題に関する決議が採択された。 (ア)生物多様性 10月には、平昌(ピョンチャン)(韓国)で生物多様性条約の第12回締約国会議(COP12)が開催され、2010年に名古屋で開催されたCOP10で採択された愛知目標の実現状況に関する中間評価が行われるとともに、開発途上国における生物多様性保全のための国際的資金量を2倍にすることが合意された。また、名古屋議定書が50か国の批准を得て発効したことを受け、同議定書の第1回締約国会合が並行して開催された。 近年、ゾウやサイを始めとする野生の動植物の違法取引が深刻化し、国際テロ組織の資金源の1つとなっているとして注目されている。このような生物多様性への脅威に国際的に対処するため、2月、野生動植物違法取引に関する首脳・閣僚級国際会議がロンドンで開催され、違法取引の撲滅に関するイニシアティブを含む政治宣言を採択した。 (イ)森林 森林の減少・劣化は、持続可能な開発、気候変動の緩和と適応、生物多様性の保全を始めとする地球規模の課題と密接に関連している。2月の国連森林フォーラム(UNFF)専門家会合、11月の国際熱帯木材機関(ITTO)第50回理事会などにおいて、持続可能な森林経営に向けた世界規模の取組に関する議論が行われた。日本は、横浜に本部を置くITTOのホスト国として引き続き支援を行うとともに、こうした議論に積極的に貢献した。 (ウ)有害化学物質・有害廃棄物の国際管理 2013年10月に日本において採択された水銀に関する水俣条約に関し、11月、政府間交渉委員会(INC)第6回会合がバンコク(タイ)で開催され、同条約の発効を見据えた今後の作業などに関し議論が行われた。 また、同月、オゾン層の保護のためのウィーン条約第10回締約国会議及びオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書第26回締約国会合がパリ(フランス)で開催され、開発途上国支援のための多数国間基金の資金規模が決定されるとともに、オゾン層を破壊しないが温室効果の高いハイドロフルオロカーボン(HFC)の扱いについて、今後も検討を続けていくこととなった。 (エ)海洋環境 廃棄物の海洋投棄等を規制するロンドン議定書の第9回締約国会議では、新たに規制対象となった鉄の散布(例:二酸化炭素吸収や漁場造成等のため散布)等による海洋肥沃化等の海洋環境への影響を評価する専門家の選定手続等の議論がなされた。 また、日本海及び黄海の環境保全のため、日本・中国・韓国・ロシアが協力する北西太平洋地域海行動計画について、4月にソウル(韓国)で政府間特別会合、10月にモスクワ(ロシア)で第19回政府間会合を開催した。 イ 気候変動 (ア)概観 地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量を削減するためには、世界全体での取組が不可欠である。1997年の国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)では、先進国に対し温室効果ガス排出削減義務が課された。しかし、この枠組みには米国が参加せず、新興国や開発途上国が削減義務を負っていないため、2010年のCOP16で先進国と開発途上国の双方の削減目標や行動を位置付ける「カンクン合意」が採択された。2011年のCOP17では、将来の国際枠組みに関するプロセスとして「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会」を立ち上げ、2015年末までに全ての国が参加する新たな法的枠組みに合意し、2020年から発効させるとの道筋に合意した。その合意に基づき、現在交渉が進められている。 2014年は毎年行われているCOPに加え、9月に国連気候サミットが各国首脳の出席の下、国連本部(ニューヨーク(米国))で開催され、気候変動交渉における政治的モメンタムを高めるものとなった。12月にリマ(ペルー)で開催されたCOP20では、当初の日程を2日間延長して厳しい交渉が行われた結果、「気候行動のためのリマ声明」(Lima Call for Climate Action)が採択されるなど、今後の議論の前進につながる成果が得られた。 日本は様々な取組によってこうした国際交渉に積極的に貢献している。「第3回東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」(城内外務副大臣議長)や島嶼国との気候変動に関する政策対話の開催、緑の気候基金(GCF)への拠出に関する日米共同発表、二国間オフセット・クレジット制度(JCM)の推進は、その一例である。 (イ)国連気候サミット 安倍総理大臣は国連気候サミットにおいて、気候変動分野での1万4,000人の人材育成と、気候変動による悪影響を減らすための取組を計画策定から実施段階まで包括的に支援する「適応イニシアチブ」を含む新たな開発途上国支援策を発表した。適応イニシアチブは、特に島嶼国と防災分野の支援を重視している。また2013年度に発表した2013年から2015年の3年間で官民合わせて計1兆6,000億円(約160億米ドル相当)の開発途上国支援の約束を、1年半余りで達成したことを発表した。 (ウ)緑の気候基金(GCF)への拠出 GCFは、開発途上国による気候変動対策を支援するため、国連気候変動枠組条約に基づく資金供与の制度の運営を委託された多国間基金である。2010年のCOP16で設立が決定され、2011年のCOP17で委託機関として指定された。安倍総理大臣は、2014年11月のG20ブリスベン・サミットで、国会の承認が得られれば最大15億米ドルをGCFに対し拠出する考えを表明した。日本の拠出表明額は米国に次ぐ第2位である。 (エ)国連気候変動枠組条約第20回締結国会議(COP20) 〈COP20(12月1日〜14日)の概要〉 日本は、望月環境大臣を代表団長として交渉に臨んだ。COP20では、2020年以降の新たな枠組みの構築に向けて、各国が約束草案(削減目標)を提出する際に示す事前情報などを定めるCOP決定が採択された。望月環境大臣は、COP20議長国ペルー、COP21議長国フランス、EU、英国、中国など7つの国・地域の閣僚及び潘基文(パンギムン)国連事務総長など国際機関の長と会談を行い、新たな枠組みの構築に向けて協調していくことの重要性を確認した。 COP20のハイレベル・セグメントで演説を行う望月環境大臣(12月9日、ペルー・リマ) 〈望月環境大臣演説〉 ハイレベル・セグメントにおいて演説した望月環境大臣は、温室効果ガス排出量を「2050年までに世界全体で50%減、先進国全体で80%減」という目標を改めて掲げるとともに、日本ができるだけ早期の約束草案提出を目指すこと、日本の技術を活用した世界全体の排出削減への貢献、開発途上国の緩和行動及び適応に関する支援、資金支援などを進めていくことに言及した。 〈二国間オフセット・クレジット制度(JCM)署名国会合〉 JCMは、温室効果ガス削減につながる技術・製品・システム・サービス・インフラなどの開発途上国への提供などを通じた、開発途上国での温室効果ガスの排出削減・吸収への日本の貢献を定量的に評価し、日本の削減目標の達成に活用する仕組みである。2013年12月時点で9か国であったJCM署名国は2014年12月時点で12か国に増加した。COP20では、JCMに署名した12か国が一堂に会する「JCM署名国会合」を開催し、JCMの進捗の歓迎と更なる進展に向けて共同声明を発表した。 (オ)地域間の取組 2月には、先進国と開発途上国の気候変動交渉官を集めて「第12回「気候変動に関する更なる行動」に関する非公式会合」を東京で開催した。7月には、気候変動交渉において発言力のある島嶼国の政府・国際機関関係者を東京に集め「島嶼国向け気候変動政策対話」を開催した。また、10月にアジア諸国の政策担当者を横浜に招いて城内外務副大臣を議長とする主催の下「第3回東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」を実施した。 (4)北極・南極 ア 北極 (ア)北極における状況変化と日本の考え方 地球温暖化による北極圏の環境変化(海氷、永久凍土、氷床・氷河の融解)は、国際社会に、北極海航路の利活用や資源開発といった新たな可能性と同時に、温暖化の加速化や脆弱な自然環境に与える影響などの様々な課題をもたらしている。 こうした可能性と課題に対しては、広範な国際的協力の下、北極圏の環境変化の実態と地球環境全体への影響を科学的に解明し、変化を正確に予測し、対応策を導き出すとともに、北極圏の適切な経済的利用のあり方について国際的な共通理解を打ち立てる必要がある。その前提として、北極圏において法の支配に基づく対応が確保されることが不可欠である。日本は、この認識に基づき、北極の観測・研究に関する長年の蓄積と先端科学技術を活かして、北極をめぐる国際的な議論に積極的に関与していく。 (イ)北極評議会等への積極的な参加 日本は2013年5月に正式に北極圏国を中心とした多国間の政治的協議枠組である北極評議会(AC)(6)のオブザーバー資格を取得した。これを受け、北極高級実務者(SAO)会合、作業部会及びタスクフォース等の関連会合に政府関係者や研究者を派遣し、議論に一層積極的に参加することを通じ、ACの活動に貢献している。 また、こうした日本の北極への取組を積極的に発信する観点から、北極に関する国際会議(北極フロンティア(2014年1月、於:ノルウェー)、北極サークル(2014年10月、於:アイスランド))などに参加したほか、北極圏国を含む関係諸国との間で北極に関する意見交換を行っている。 北極海観測を行う砕氷船(写真提供:国立極地研究所) イ 南極 (ア)南極条約 1959年に採択された南極条約は、基本原則として、@南極の平和利用、A科学的調査の自由と国際協力、B領土主権・請求権の凍結を定めている。 (イ)南極条約協議国会議と南極の環境保護 毎年開催される協議国会議では、南極の環境保護、南極観測、南極条約事務局の運営、南極観光などに関する議論を行っている。特に近年は、年間観光活動が南極の環境に与える影響や南極地域における適切な観光の管理について、活発な議論が行われている。 また、「環境保護に関する南極条約議定書」などに従い、南極の環境保護が推進されている。 (ウ)日本の南極観測 日本の南極観測では、南極地域観測第VIII期6か年計画(2010年-2015年)に基づき、現在ならびに過去、未来の地球システムに南極域が果たす役割と影響の解明に取り組み、特に「地球温暖化」の実態やメカニズムの解明を目指し、長期にわたり継続的に実施する観測に加え、大型大気レーダーを始めとした各種研究観測を実施している。 1 グローバルな防災戦略について議論する国連主催の会議であり、第1回(1994年、横浜)、第2回(2005年、神戸)、第3回(2015年、仙台)ともに日本がホストした。第2回会議では2005年から2015年までの10年間の国際的な防災の取組指針である「兵庫行動枠組」が策定され、第3回国連防災世界会議では、その後継枠組み(ポスト兵庫行動枠組)が策定される予定 2 1990年代の万人のための教育(EFA:Education for All)に向けた取組は一定の成果をあげたものの、いまだに未就学児童や、日常的な読み書きや計算が十分にできない成人も多く存在しているとして、2000年4月にダカール(セネガル)で開催された「世界教育フォーラム」において採択された目標。就学前教育の拡大と改善、無償で良質な初等教育の保障、教育における男女平等などが掲げられている。 3 WHO Fact Sheet (http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs094/en/#) 、WHO Fact Sheet (http://www.who.int/tb/publications/factsheet_global.pdf?ua=1)、UNAIDS “Global Statistics”(http://www.unaids.org/en/resources/campaigns/2014/2014gapreport/factsheet) 2013年の死亡数 4 WHO Fact Sheet No. 178 (http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs178/en/) 2013年の死亡数 5 WHO Fact Sheet No. 348 (http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs348/en/) 2013年の死亡数 6 北極評議会(AC)は、北極圏国8か国(カナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン及び米国)をメンバーとして、1996年に設立された政府間のハイレベルの合議体である。ACは北極圏に関係する共通の課題(持続可能な開発、環境保護など)に関し、先住民社会などの関与を得つつ、北極圏諸国間の協力・調和・交流の促進を目的としている。