第2章 地球儀を俯瞰する外交 2 アフリカ開発会議(TICAD)プロセス (1)これまでの経緯 日本の対アフリカ外交は、アフリカ開発会議(TICAD)プロセスを重要な柱としている。冷戦終結後の90年代前半に、国際社会のアフリカへの関心が低下した際に、アフリカ支援を行うため、1993年に第1回会議が東京で開催された。以来、5年に一度アフリカ各国首脳が集まる首脳級会合が開催されている。TICADは、日本と国連、世界銀行、UNDP、アフリカ連合委員会(AUC)が共催する多国間の枠組みであり、アフリカによる「オーナーシップ(自助努力)」と国際社会との「パートナーシップ」を基本理念に掲げている。 (2)第5回アフリカ開発会議(TICAD V)に向けた準備 2013年3月、アディスアベバ(エチオピア)において、TICAD V閣僚級準備会合が岸田外務大臣も出席して開催され、46人の閣僚級首席代表などが出席した。同会合では、TICAD Vが目指すべき成果や主要な論点のほか、TICAD Vで採択する予定の成果文書について議論を行い、合意した。その後、TICADプロセス20周年となった6月に、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)が横浜で開催された(詳細については110ページの特集を参照)。 ハイレマリアム・エチオピア首相と会談する岸田外務大臣(右)(3月16日、エチオピア・アディスアベバ) TICADV閣僚級準備会合の様子(3月16日、エチオピア・アディスアベバ) アフリカ開発の国際的枠組み 第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の開催とその成果 1.TICAD Vの概要と成果 2013年6月1日から3日まで横浜でTICAD Vが開催されました。日本からは安倍総理大臣・岸田外務大臣などが出席したほか、39人の国家元首・首脳級を含むアフリカ51か国からの代表、31か国の開発パートナー諸国及びアジア諸国からの代表、72の国際機関及び地域機関の代表、民間セクターやNGOなどの市民社会の代表など、約4,500人以上が参加し、日本での最大規模の首脳級国際会議となりました。また、様々なサイドイベントが開催され、多くの市民が参加しました。 TICAD Vでは「躍動するアフリカと手を携えて(Hand in Hand with a More Dynamic Africa)」を基本メッセージとし、TICAD Vの主要テーマである「強固で持続可能な経済」、「包摂的で強靱な社会」、「平和と安定」に沿って、今後のアフリカ開発の方向性について活発な議論が行われました。 安倍総理大臣は、基調演説において、日本のアフリカ支援の基本姿勢とODA約1.4兆円を含む官民による最大約3.2兆円の取組、「安倍イニシアティブ」を含む産業人材育成やサヘル地域への開発・人道支援などを内容とするアフリカ支援パッケージを打ち出しました。成果文書として、今後のアフリカ開発の方向性を示す「横浜宣言2013」、同宣言に基づき今後5年間のTICADプロセスの具体的取組を示すロードマップである「横浜行動計画2013−2017」の2つの文書が採択されました。 安倍総理大臣(中央)と各国首脳たち(6月1日、横浜 写真提供:内閣広報室) 2.TICAD V以後の対アフリカ関係 TICAD Vで高まった日本のアフリカに対する関心を維持し、支援策を着実に実施するために、TICAD V後も対アフリカ外交が積極的に行われています。9月26日には国連総会の機会に、安倍総理大臣も出席して日・アフリカ地域経済共同体(RECs)議長国首脳会合をニューヨークで開催し、農業開発や食料安全保障について意見交換を行ったほか、11月24日から12月5日まで、アフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションをコンゴ共和国、ガボン、コートジボワールに派遣しました。TICAD Vのフォローアップを通じた日・アフリカ関係の一層の発展が今後も期待されています。また、2014年1月には安倍総理大臣がアフリカ3か国を訪問し、TICAD Vで約束した「早期のアフリカ訪問」が実現しました。