第2章 地球儀を俯瞰する外交 2 カナダ (1)日・カナダ関係 首脳間では、2013年1月に安倍総理大臣とハーパー首相との間で電話会談、6月のG8サミットでは首脳会談が行われた。9月には、安倍総理大臣がカナダを訪問し(総理大臣による国際会議出席ではない二国間の文脈でのカナダ訪問は2006年以来7年ぶり)、ハーパー首相と首脳会談を行い、地域情勢について意見交換を行った。二国間関係についても、両首脳は、日加物品役務相互提供協定(ACSA)の実質合意、羽田空港の昼間の時間帯の双方の航空企業の就航開始に向けての協議の開始、北極に関する協議の強化、カナダからの低廉かつ安定的なLNG輸入の実現に向けた協議の推進などについて一致した。また、岸田外務大臣は、4月のG8外相会合、7月のASEAN関連外相会議の際に、ベアード外相と会談を行い、地域情勢や二国間関係について意見交換を行った。さらに、5月、衆議院の招待でシーア下院議長が訪日した。 両政府が参加する形での有識者間の対話としては、5月にオタワにおいて第11回日・カナダ安全保障シンポジウムが開催された。 経済分野では、1月に日・カナダ貿易投資対話が開催され、両国の貿易・投資を更に促進するため、貿易政策、ビジネス環境、資源エネルギー分野などについて幅広い意見交換を行った。また、日加EPA交渉は、2013年中3回実施された。 両国の間では、このほか、その他様々な交流が行われているが、「キズナ強化プロジェクト」により、1月及び3月にカナダの高校生など計100人が訪日し、被災地などを訪問するとともに、3月に被災地の高校生など計100人がカナダを訪問した。5月からは、日加両国の高校生の交流事業(招へい・派遣各200人、計400人)である「KAKEHASHI Project-The Bridge for Tomorrow-」を開始し、2013年末までに150人の招へいと25人の派遣を実施した。 カナダのKAKEHASHIプロジェクト参加者一行の表敬を受ける石原外務大臣政務官(前列中央)(10月28日、東京) (2)カナダ情勢 2011年の下院総選挙による過半数獲得後、ハーパー首相は、安定した政権運営を行ってきたが、2013年は、複数の上院議員による手当不正受給問題などの影響によって、与党である保守党に対する支持率が低下した。 外交面では、同国は、基本的価値(自由、人権、民主主義、法の支配など)を前面に出す原理原則に忠実な外交政策やカナダ経済の活性化・雇用促進につながる外交政策を重視している。また、5月から2年間の予定で、カナダは北極評議会の議長国を務めている。 経済外交では、引き続き雇用創出や経済成長に資する自由貿易を推進しており、TPP協定交渉に参加し、EU、インド、韓国などとのFTA交渉を進めている。また、国内経済については、「カナダ経済行動計画(Economic Action Plan) 2013」において、世界経済が不透明な中、引き続き経済成長と雇用創出、2015年度までの均衡財政の達成に重点を置いている。主な施策に、職能訓練補助、インフラ整備支援や製造業セクターに対する支援が挙げられている。財政見通しについては、予想される失業率の低下、低いインフレ率を反映し、雇用保険支出や高齢者給付、債務償還費の低下、さらに税の抜け穴対策等により歳入増が見込まれることなどにより、2015年度にはわずかながら財政収支の黒字化が見込まれるとしている。