各論 1 海外への情報発信 (1)海外広報 日本についての海外への情報発信は、日本及び日本人への理解を深め、「日本ファン」を世界で増やしていくために極めて重要な取組である。外務省は、海外における対日認識を調査・分析し、各国・地域の特性を踏まえながら、外国のオピニオンリーダー(世論形成で主導的な役割を果たす人物)の日本への招へい、外国における講演会、広報誌や映像資料の制作、インターネットの活用(1)などの多様な手段を通じて、日本の政策や社会・文化といった幅広い一般事情に関し、積極的に海外への情報発信を行っている。また、外国人観光客の増加につながる日本の魅力の紹介やコンテンツ(情報)、デザイン、食などの分野における日本企業の海外展開に資する広報事業にも取り組んでいる。 さらに、東日本大震災後の風評被害対策や日本ブランドの復活・強化についても、在外公館を通じた地方の魅力発信プロジェクトや対日理解促進のための招へい事業を展開し、日本産品の安全性や東北を始めとする日本の地方の魅力などに関する海外発信を積極的に行った。また、被災地の復興への取組に関する広報、震災でも示された日本人の強靱な精神性、日本の製品・技術・ポップカルチャーの底流にある日本的な価値に対する理解促進を目的として、被災県の県知事を英国と香港に派遣し、日本と被災県についての発信活動を行ったり、6月の「リオ+20」や2013年1月の「日・ASEAN友好協力40周年キックオフレセプション」の機会を利用した日本/東北ブランド普及のための事業をそれぞれ開催地であるリオデジャネイロ(ブラジル)やジャカルタ(インドネシア)で実施した。 また、主要外交課題において広報文化外交が重要な役割を果たすという認識に基づき、戦略的な広報文化外交を推進するため、外務大臣を本部長とするパブリック・ディプロマシー戦略本部を設置し、10月に第1回会合を開催した。 (2)諸外国における日本についての論調と海外メディアへの発信 2012年は、日本の東日本大震災からの復興と原子力政策の行方、竹島問題への対応、尖閣諸島をめぐる日中関係の緊張、円高、デフレ、消費税、TPP協定などに関する日本の経済政策、衆議院選挙と安倍政権の政策に対して、海外メディアから高い関心が寄せられた。そのほかにも、東京スカイツリーの完成、山中伸弥京都大学教授のノーベル賞受賞などについても広く海外で報じられた。 日本の外交政策に対する国際社会の理解や支持を得るためには、海外メディアを通じた戦略的かつ効果的な対外発信が不可欠である。外務省は、G8・G20サミット、国連総会、APEC首脳会議、ASEM首脳会合、ASEAN関連首脳会議などあらゆる外交機会を捉え、海外メディアに対し日本の立場についてきめ細かな情報提供や取材協力を行った。また、太平洋・島サミット、原子力安全に関する福島閣僚会議といった国内で開催された主要外交行事に際しては、関心を持つジャーナリストをこれらの会議に合わせて各国から招待し、取材機会を提供することによって、会議の成果などに関する効果的な情報発信を実施した。このほか、総理大臣や外務大臣の外国訪問などの重要な機会には、記者会見やインタビュー、海外の新聞への寄稿などを実施している。 3月の震災後1年に際しては、国際社会からの支援に改めて感謝の意を表するとともに、復興への決意を示すため、総理大臣及び外務大臣が主要国際メディアによるインタビューを複数実施した。また、総理大臣の論説を世界各国のメディアに寄稿した結果、計58か国・地域の65メディアに掲載されるに至った。このほか、各国駐在の大使・総領事から震災後1年に際するメッセージを各国の現地メディアに発信し、延べ137メディアで報じられた。2月末には、東京電力福島第一原発事故への対応状況を透明性のある形で国際社会に説明するため、内閣官房・外務省・東京電力主催で外国メディア向けの同原発の取材ツアーを実施し、計15メディアが同原発のサイト内を取材し、その状況につき報道した。 領土保全の分野では、竹島については、李明博(イミョンバク)韓国大統領の同島上陸を受け、また、尖閣諸島をめぐる情勢については、日本政府が尖閣三島の所有権を取得した後の中国側の対応を受け、総理大臣、外務大臣、各国駐在大使などによる国際主要メディアのインタビュー・寄稿の実施などを行い、これを通じて日本の基本的立場や主張の正当性について理解と支持の拡大に努めた。 1 「外務省ホームページ(英語版)」(http://www.mofa.go.jp/)は、日本の外交政策に関する情報を、また「Web Japan」(英語、一部多言語)(http://web-japan.org/)では日本の一般事情を発信している。また、在外公館でも、全ての大使館・総領事館が、独自のホームページを開設し、現地の言語や英語で情報を発信している。