3 科学技術外交 科学技術は、国防、経済、産業など様々な分野における国力の源であり、イノベーションを通じて経済成長を支える基盤である。日本は、世界最高水準の科学技術力をいかして、持続可能な成長や気候変動、防災、感染症、エネルギー、水・食料などの地球規模の課題の解決に向けた外交を推進するとともに、日本と世界の科学技術を発展させるための外交に取り組んでいる。また、ソフトパワーとしての日本の科学技術の発信も行っている。 (1)各国・地域との科学技術協力 二国間では、相手国との科学技術分野における協力の原則や枠組み、協力活動の形態、知的所有権の扱いなどを定める科学技術協力協定を締結している(1)。2012年には、米国、オーストラリア、中国、北欧・中東欧諸国など12か国との間でそれぞれ科学技術協力協定に基づく合同委員会(2)を開催し、科学技術協力の現状、今後の協力の方向性や在り方などについて協議した。 また、在外公館(海外にある大使館、総領事館等)を通じた発信を強化するため、グリーン・イノベーションや材料科学などの分野において、著名な日本人科学者や専門家を東南アジア、南米、欧州、アフリカの10か国(3)に派遣し、現地の科学技術コミュニティや学生、一般市民などに向けて、日本の優れた科学技術を紹介した。また、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症対策などの分野で、開発途上国と日本の科学者が共同して行う地球規模の課題解決に資する研究などをODA(4)を活用して支援した。 (2)多数国間での科学技術協力 多国間での協力においては、例えば、日本は、科学技術面での開発課題や情報通信技術(ICT)に関する議論が行われている国連開発のための科学技術委員会について、2012年4月のメンバー国選挙に立候補し選出されており(任期は2013年1月から4年間)、こうした場での国際的な議論に主体的に参画していく。 また、日本は、大規模国際科学技術プロジェクトにも積極的に関わっている。 例えば、熱核融合実験炉を建設・運用する「イーター(ITER)計画」をEU、米国などと共に主導しており、イーター機構長には本島修教授が2010年から就任している。6月にワシントン、11月にカダラッシュ(フランス)で開催されたイーター理事会においては、イーター機構から、機構本部ビルなどの建設活動が着実に進展しているとの報告が行われた。 建設中のイーター実験炉(写真提供:Credit@ITER Organization, http://www.iter.org/) 1 日本は、32の科学技術協力協定を署名又は締結しており、47か国・機関に適用されている。 2 2012年は、ハンガリー、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、イスラエル、ノルウェー、スペイン、米国、中国、オーストラリア、南アフリカ、スイスとの間で合同委員会を開催した。 3 インドネシア、マレーシア、タイ、ブラジル、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、スペイン、ポルトガル、南アフリカ共和国。 4 開発途上国のニーズを踏まえ、外務省、文部科学省、JICA、JSTが連携し、対象国・地域の大学・研究機関と環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症対策などの分野で共同研究や能力向上支援を行う「地球規模課題対応国際科学技術協力事業」を実施するとともに、外務省、文部科学省、JICA、JSPSが連携し、対象国・地域の人材育成を目的として、当該国・地域の大学・研究機関などに科学技術全般の分野で共同研究を行う日本側研究者を派遣する「科学技術研究員派遣事業」を実施している。