第4章 国民と共にある外交 第1節 世界とつながりを深める日本社会と日本人 総論 日本と海外の間で人の往来を増やすことは、経済の活性化、異文化間の相互理解の促進などの効果を生み得る。このような考えから、外務省は、外国人の日本への入国・滞在を円滑化し、各種交流を活発化させること、また、様々な日本人や日本の団体が海外との交流に携わることを重視している。 日本に入国する外国人は、2010年には年間約944万人に上り、2000年(約527万人)に比べ約2倍近くとなった。また、日本に長期滞在する外国人(外国人登録者)の数も、2010年末で約213万人に上り、2000年(約169万人)の約1.3倍と増加している。 外国人の日本入国を促進することが重要である一方、日本の利益を害するおそれがある外国人などの入国は防がなければならない。日本に入国しようとする外国人は、ビザ(査証)をパスポート(旅券)に受ける必要があり(1)、ビザは入国管理上問題ないと判断できる外国人に対し、在外公館(海外にある大使館、総領事館など)で発給している。外国人は、日本に入国する際には、有効なパスポート及びビザを提示し、入国審査を受ける必要がある。このように、ビザの発給及び入国審査により、外国人の日本入国の可否を判断している。近年、来日する外国人が増加していることを受け、外務省は、外国人観光客や商用訪問者などを対象に、ビザの発給の迅速化に努めている。 また外務省は、東日本大震災の被災地域への支援のため、特に被害が甚大であった岩手県、福島県、宮城県を訪問する外国人に対し、ビザ手数料の免除を開始した。さらに、中国人に対しては、2011年7月から、沖縄を訪問する中国人観光客を対象とした「沖縄数次ビザ」の運用を開始した。その結果、2011年7月から12月の間に沖縄を訪問する中国人観光客への個人観光ビザ発給数は、2010年同時期と比較して約38倍増の約8,900件に達した。さらに、2010年6月に閣議決定された「新成長戦略」に基づき、外務省は、2011年1月から新たに創設した「医療滞在ビザ」の運用を開始し、治療などの目的で外国人が日本に入国しやすくするための措置を講じている。 また、日本に長期滞在する外国人の増加に伴い、国内では教育・雇用・住居などの分野において様々な問題が生じている。そのため、外務省はこのような問題に取り組む目的で、地方自治体、国際移住機関(IOM)などと共同で、2010年に引き続き、2011年2月に第2回目となる国際ワークショップを開催し、「将来における我が国の外国人政策を中心として」というテーマで議論を行い、啓発活動に努めた。 一方、政府以外の主体の力もいかす、オールジャパンでの外交を展開する一環として、例えば、国際協力に対する市民の関心の高まりを背景に、開発途上国などに対する支援活動の担い手としての重要性が近年ますます高まっている非政府組織(NGO)を国際協力における重要なパートナーと位置付け、連携強化に努めている。日本のNGOは、アジアを中心にアフリカ、中東など世界各地において、貧困削減や人道支援のために地域住民に密着したきめの細かい支援活動を実施している。また、現地での支援活動のみならず、開発途上国の現状などに関する専門的知見を持ち、人権・教育・保健・環境といった様々な分野でNGO間のネットワークを形成し政策提言活動を行うなど、その活動範囲は幅広い。 また、国際協力機構(JICA)ボランティア事業である青年海外協力隊(JOCV)やシニア海外ボランティア(SV)の参加者も現地の人々と同じ目線で、その国が抱える問題の解決へ一緒に汗を流して取り組んでおり、国際協力の重要な担い手である。日本の「顔の見える援助」の代表として各国から高い評価を得ており、その国の経済・社会の発展のみならず、日本と各開発途上国の間の相互理解や友好親善の促進にも大きな役割を果たしている。また、帰国したボランティア参加者の知識や経験の日本社会への還元でも成果が上がっている。さらに、より良いJICAボランティア事業の実現に向け、2011年7月に、「草の根外交官:共生と絆のために 〜我が国の海外ボランティア事業〜」と題する新たな政策を発表し、制度的見直しを含め、その実現に取り組んでいる。 また、幅広い分野で良好な国際関係を育てていく上で、地方・地域の役割は大きい。近年、地方自治体や地方の団体・市民による取組は幅広くかつ活発に行われ、国際社会で高い評価を得ている。国際的相互理解、信頼関係の構築、日本のブランド力強化などの観点から、地方・地域は、外交において極めて重要な役割を果たしている。 この現状を踏まえ、外務省は地方・地域を、外交を推進していく上での重要なパートナーであると位置付け、オールジャパンでの総合的外交力の強化を目指しており、そのために、@地方の魅力を世界に発信、A地方の国際化支援、B国際交流に関わる広範囲な情報提供に重点を置きつつ、地方自治体などとの様々な連携策を実施している。特に、東日本大震災の風評被害対策支援及び地場産業や地域経済の再生支援は重要な課題であり、外務省は国際市場の中で、「開かれた復興」を支援するための多様な取組を実施している。 青年海外協力隊事業参加者に対する外務大臣感謝状の授与式で帰国隊員と懇談する加藤外務大臣政務官(中央奥)(9月28日、東京) 1 日本が査証免除の取決めなどを行っている国の国民は、日本入国に際して、査証を必要としない。