各論 1 海外への情報発信 (1)海外広報 日本についての海外への情報発信は、日本及び日本人への理解を深め、「日本ファン」を世界で増やしていくために極めて重要な取組である。外務省は、海外における対日認識を調査・分析し、各国・地域の特性を踏まえながら、外国のオピニオンリーダー(世論形成で主導的な役割を果たす人物)の日本への招待、外国における講演会、広報誌や映像資料の制作、インターネットの活用(1)など多様な手段を通じて、日本の政策及び社会、文化といった幅広い一般事情に関し、積極的に海外への情報発信を行っている。また、外国人観光客の増加につながる日本の魅力の紹介や、「クールジャパン」と呼ばれるコンテンツ、デザイン、食などの分野における日本企業の海外展開に資する広報事業にも取り組んでいる。 さらに、危機管理広報として、3月11日の東日本大震災発生直後から在外公館(海外にある日本の大使館・領事館など)を活用して、迅速かつ正確な情報提供を行い、海外における情報不足や誤解に対応してきた。震災の影響で深刻化した風評被害対策及び日本ブランドの復活・強化についても、補正予算も活用しながら、在外公館を通じた地方の魅力発信プロジェクト(第4章第1節3「地方自治体等との連携」参照)及び対日理解促進のための招へい事業を通じて、日本産品の安全性、東北を始めとする日本の地方の魅力等を海外に伝えてきている。今後はさらに、震災でも示された日本人の強靱(じん)な精神性、日本の製品や技術・ポップカルチャーなどの底流にある「日本的な価値」を海外に広めていくための取組を進めていく。 観光展に出展した日本ブースの様子(2012年2月、フィリピン) (2)諸外国における日本についての論調と海外メディアへの発信 2011年は、東日本大震災を受けて、日本の復興に向けた方針、東京電力福島第一原子力発電所の事故、被災地の復興状況、及び日本国民の震災対応に対して、海外メディアから高い関心が寄せられた。そのほかにも、野田新内閣の発足、円高と為替介入、サッカー日本女子代表の女子ワールドカップ優勝などに関して広く海外で報じられた。 日本の外交政策に対する国際社会の理解や支持を得るためには、海外メディアを通じた戦略的かつ効果的な対外発信が不可欠である。外務省は、G8サミット、国連総会、APEC首脳会議、ASEAN関連首脳会議、COP17などあらゆる外交機会を捉え、海外メディアに対し日本の立場についてきめ細かな情報提供や取材協力を行った。また、総理大臣や外務大臣の外国訪問などの重要な機会には、記者会見やインタビュー、海外の新聞や雑誌への寄稿などを実施し、日本の立場に関する積極的な対外発信を行っている。 さらに、震災後には、日本に関する報道が過熱化し、その中には事実誤認に基づくものも見られた。外務省は、様々な手段で日本の力強い復興について世界に発信するための努力を続けている。事実誤認に基づく海外報道に対しては、在外公館などを通じて速やかに反論投稿や申し入れを行い、食・製品・観光地などの日本の安全に関する風評被害対策に取り組んだ。加えて、震災に伴う国際社会からの日本への支援に対し謝意を表明するとともに、日本の世界に開かれた復興への決意を示すため、世界各国において総理大臣による寄稿文の掲載を働きかけた結果、計77か国・地域の157メディアにその寄稿文が掲載された。また、震災後も日本はビジネス先としても旅行先としても引き続き魅力的であることを発信するための外務大臣の寄稿文が、有力国際紙に掲載された。そのほかにも、世界中からジャーナリストを招待し、被災地の力強い復旧・復興の歩み、また、食・製品・観光地などの日本の安全性・魅力に関する取材機会を提供し、結果としてそれらジャーナリストが記事を掲載することにより、震災復興過程に関する正確な情報発信を通じ風評被害の解消を図った。 1 「外務省ホームページ(英語版)」(http://www.mofa.go.jp/)は、日本の外交政策に関する情報を、また「Web Japan」(英語、一部多言語)(http://web-japan.org/)では日本の一般事情を発信している。また、在外公館でも独自のホームページを開設して、現地に密着した情報を現地の言語や英語で発信している。