各論 1 中東和平 (1)イスラエル・パレスチナ間の直接交渉をめぐる状況 2010年9月に米国の仲介により、両当事者間の直接交渉が開始されたが、2011年9月、イスラエルが10か月間の入植活動の停止を延長しなかったため、現在まで交渉は中断している。2011年5月、オバマ米国大統領が直接交渉の指針を示したが、ネタニヤフ・イスラエル首相はこの指針を拒否した。9月、カルテット(米国、ロシア、EU、国連)は、今後の交渉の行程を定め、両当事者に早期の交渉再開を求める声明を発出した。10月には、エルサレムでカルテットの特使が、イスラエル・パレスチナ双方と個別に協議を実施した。両当事者は3か月以内に領土と安全保障に関する「包括的な提案」を提出することで合意したが、一方で両当事者による交渉再開への合意はなかった。また、10月31日に、パレスチナのユネスコ(国際連合教育科学文化機関(UNESCO))加盟が承認されたことを受け、イスラエル政府は翌11月1日、その報復として、東エルサレムと西岸の入植地建設の加速化、及びパレスチナ自治政府への税還付凍結を決定した。さらに、ユネスコへの200万米ドルの拠出金も凍結している。2012年1月には、両者の交渉担当者が直接交渉に向けた対話を再開させたが、交渉再開の見通しは立っていない。 (2)国連をめぐる状況 2011年は、パレスチナによる国際場裏における動きが活発化した。 和平プロセスの停滞を受け、アッバース・パレスチナ大統領は、2011年9月23日に国連加盟を申請し、現在安保理にて審議中である。また、(1)で述べたとおり、ユネスコに対しても加盟申請を行った。 (3)中東和平に関する日本の取組 日本は、国際社会と連携しながら、日本の独自の役割を模索しており、@政治的働きかけ、A対パレスチナ支援、B信頼醸成の三本柱に加え、これらの取組の総体であるC「平和と繁栄の回廊」構想を推進している。 対パレスチナ支援については、中東和平への確固たる意志を確認し、和平プロセス進展を促進するとともに、パレスチナ人の民生を安定させ、将来のパレスチナ国家実現を支援とするとの観点から、「人道支援」、「国づくり・改革支援」、「信頼醸成支援」、「経済自立化支援」を重点分野として積極的に支援を展開している。日本からの支援額は、1993年度以降、米国、EUに次ぎ、12億米ドルを超える。 さらに、飯村豊中東和平担当特使(政府代表)がイスラエル・パレスチナを始めとする中東和平関係国・地域を訪問、各国要人と会談を重ね、中東和平実現に向け働きかけている。