2 カナダ (1)日加関係(日加経済関係を含む) 首脳間では、5月のG8ドーヴィル首脳会議に際して菅総理大臣がハーパー首相との間で首脳会談を行ったのを始め、9月には国連総会の際に野田総理大臣とハーパー首相との首脳会談、また12月には両首脳間の電話会談が行われた。これらの首脳会談では、日加関係進展のための幅広い分野での意見交換が行われ、日加EPA共同研究会合を早期に終了し、交渉開始に向けて取り組むことで一致した。 東日本大震災に際しては、カナダから、毛布2万5,000枚、線量計等5,005台及び放射線サーベイメーター等153台の支援を受けた。また、6月には、カナダ政府は、世界に先駆けて日本産食品の輸入管理強化措置を完全撤廃し、カナダ主要5都市で震災後の日本とのビジネス関係の再構築を訴えるセミナーを開催し、8月には旅行制限措置を見直す等、東日本大震災からの復旧・復興に向けて多大な支援を行った。 政府間の対話では、8月に日加外務・防衛次官級「2+2」対話が実施され、安全保障をめぐる様々な議論が行われた。 日加経済関係に関しては、2月に行われた日加次官級経済協議において、日加両政府は日加間のEPAの可能性に関する共同研究を開始することで一致し、3月、4月、及び7月にそれぞれ共同研究会合を開催した。 (2)カナダ情勢 2011年5月、第41回カナダ連邦下院総選挙が実施され、その結果、ハーパー首相が率いるカナダ保守党が、2006年の保守党政権発足以降初めて過半数を獲得し、安定した政権運営が可能となった。新民主党(NDP)は結党以来最多議席(103議席)を獲得、野党第一党の地位に就いた。他方、自由党及びブロック・ケベコワ(BQ)は結党以来最少議席(それぞれ34議席及び4議席)にとどまり、それぞれの党首自身も落選するなど、カナダ連邦下院における野党構成が大きく変化した。 5月の施政方針演説では、雇用と経済成長を政府の最重要課題と位置付け、@「雇用と経済成長」のほか、A「財政赤字削減」、B社会保障等の「各家庭への施策」、C「国防強化」、D「犯罪対策」、E「コミュニティ及び産業のための施策」、F政党助成金撤廃や上院改革等の「説明責任強化のための施策」の7項目を重点課題とした優先政策を発表した。 外交面では、アフガニスタン支援、米国・米州等の伝統的友好国・地域の重視、経済(FTAなど)・外交などを引き続き基本方針として追求した。アフガン復興支援では、7月に戦闘任務が終了し、アフガン国家治安組織に訓練や職業能力向上サービスを提供する支援に移行している。対米関係では、2011年のハーパー首相の2度の訪米等を通じ、経済分野や国境管理等の関係強化が図られている。また、経済外交では、EUやインドとのFTA交渉を始めとする経済活性化・雇用促進に資する外交が展開されている。 カナダ経済は、世界的な金融危機による景気後退期以降は順調に推移してきており、実質GDP(前期比)も2011年第2四半期にアルバータ州北部の山火事及びメンテナンスのための工場閉鎖による石油製造の縮小に伴う石油・ガス産業の輸出減、並びに日本の大震災に起因する自動車部品等の供給混乱による自動車関連産業の輸出減少等により、一時的に後退するものの、概(おおむ)ねプラス成長を維持している。カナダ銀行は、政策金利を2010年9月に1%まで引き上げ、1年以上据え置いている。失業率は2011年9月には約3年ぶりに7%を切り、雇用も徐々に回復している。