第2節 海外における日本人・日本企業への支援 総 論 海外に渡航する日本人は年間延べ約1,600万人に達しており、海外に在留する日本人も年々増加して、約113万人(2009年10月現在)に上り、国際社会の様々な分野や地域で多くの日本人が活躍している。その一方、海外で日本人が遭遇する危険も増加し、多様化している。海外における日本人の生命、身体及び利益を保護・増進することは外務省の重要な任務の一つであり、外務省は日本人が海外で安全にかつ安心して生活や活動ができるよう、各種取組を行っている。 まず、外務省は、テロ・誘拐を含む事件や事故、戦乱や紛争、自然災害や感染症など、海外における日本人の安全と安心に関わる情報を幅広く的確に収集し、提供している。また、これを通じて国民の一人ひとりに自ら危機管理意識を持って安全対策をとるように呼びかけている。一方、危険に巻き込まれた日本人に対しては、各地の事情に即し、可能な限りの支援を適切に行えるように、その体制や基盤の強化に努めている。 また、世界各国の日本国大使館や総領事館において、旅券(パスポート)や各種証明などの発給、在外選挙の実施など、基本的な行政サービスを提供することに加え、日本人学校や補習授業校への支援、医療・保健関係情報の提供などの施策を通じ、海外で活躍する日本人の生活基盤を支えている。こうした施策は、日本人・日本企業が海外へ展開し、活動する上でも重要なサービスとなっている。 さらに、長年にわたり各国の発展に寄与し、日本との「架け橋」となって関係緊密化にも貢献してきた日本人移住者や日系人の存在は、日本が開かれた国を目指す外交を進める上で重要な資産であり、移住者などへの支援を行ってきている。 グローバル化が進展し、新興国の台頭などにより国際経済環境が変化する中、日本企業や個人の海外での競争力を強化し、「強い経済」を実現していくことが極めて重要になっている。特に近年、世界的な経済連携の進展やアジアを中心としたインフラ需要の増大が見られる中で、日本企業に対する積極的な支援はますます重要である。外務省は、在外公館を始め、日本企業が直面している諸問題について企業から意見を幅広く聴取し、日本企業からの問い合わせや要望に対応するとともに、諸外国との間で規制改革やビジネス環境の改善に関する対話や協議を行い、相手国・地域に対して改善を求めている。 外務省は、海外に進出している日本企業の要望などを踏まえ、経済連携協定(EPA)の活用・運用改善に取り組むとともに、定期的に協定の運用状況について見直している。また、社会保障協定の締結により、二国間の社会保険料の二重負担や掛け捨ての問題などを解消し、海外に進出する日本企業や国民の負担の軽減を図っている。さらに、「知的財産立国」を目指す日本としては、模倣品や海賊版の被害を受けている日本企業からの相談内容に基づき、二国間及び多国間協議の場で外国政府への働きかけを行うなど、日本企業の知的財産権保護の強化に取り組んでいる。