第4節 日本への理解と信頼の促進に向けた取組 総 論 効果的に外交政策を実施するためには、各国の政策決定者のみならず、その支持基盤である一般国民にも直接働きかけることが重要である。特に近年、各国における情報通信技術の急速な発達や民主主義の発展などを背景に、外交政策に対する世論の影響力が増大している。日本としては、海外広報を通じ、日本の外交政策や国内事情に関する諸外国国民の理解の増進を図るとともに、多方面にわたる日本の魅力を積極的に発信し、文化交流や人物交流を促進することで、各国国民の対日イメージや親近感の向上に努めている。 外務省は、海外での日本語普及、伝統文化からポップカルチャーに及ぶ多様な日本文化の紹介、有識者を対象とした外交政策などの発信、一般国民を対象とした日本事情の紹介などを行っている。2010年には、国際交流基金を通じて設置している、海外の日本語教育機関をつなぐ「JFにほんごネットワーク(通称:さくらネットワーク)」への参加機関が全世界で100か所を超えた。また、上海国際博覧会(上海万博)やJAPAN EXPO 2010などの国外イベントを活用し、日本文化、日本事情の発信に努め、より深い日本への理解や関心の増大を目指した。 これらの取組に加え、対日理解を深めてもらうため、人物交流や知的分野の交流も進めており、国際世論への影響力が強い人々や、将来各界で指導的立場に就くことが有力視されている人々などを日本に招待するとともに、留学生など海外の若者の受入れ促進や、日本の有識者による各種国際会議への参加支援などを行っている。 日本が推進する「新成長戦略」実現のためには、日本の持つ強みを積極的に諸外国に発信することが必要であるとの考えから、外務省としても、パッケージ型インフラ海外展開支援、クールジャパン戦略の推進、観光立国の推進といった関連する各分野で、関係省庁や諸機関と連携を図りながら、情報発信を強化している。例えば、横浜でのアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の開催期間に合わせ、内閣官房、内閣府、経済産業省、観光庁と連携し、世界の全地域を対象にCNNインターナショナルを通じた日本特集番組やコマーシャルの放送及び特設ウェブページの開設など、集中的なキャンペーンを行った。 また、外務省は、各国と日本の間の友好関係を再確認し、相互理解の増進を図る目的で、外交関係上の節目となる年に官民が連携して「周年事業」を展開している。さらに、開発途上国に対しては、文化無償資金協力を実施している他、国連教育科学文化機関(UNESCO)などと協力しつつ、文化遺産の保存修復や人材育成を積極的に支援したり、文化分野での国際協力の枠組み作りや規範の策定に知的貢献を行っている。