2 アフガニスタン (1)政治・治安情勢 アフガニスタンでは、2001年のタリバーン政権崩壊以降、近代的な国家構築のための復興努力が続けられている。2009年8月には2回目となる大統領選挙及び県議会選挙が実施され、同年11月にカルザイ大統領が再選された。また、2010年9月には、アフガニスタン自身の手により、2回目となる下院議会選挙が実施された。 治安は不安定の度合いを強めており、特に、パキスタンと国境を接する南部、南東部、東部の治安は懸念すべき状況にある。9月の国連事務総長報告は、国際部隊の増加、アフガニスタン治安部隊による作戦の拡大及び反政府勢力の活動の活発化といった様々な要因により治安が悪化しており、治安事件発生件数は前年の同期(6月から9月)に比べ69%増加、また、簡易爆弾(IED)の使用も前年比で82%増加している旨などを報告している。アフガニスタン政府は、国際社会の支援を受け、国軍や警察の拡大や強化に取り組んでいる。また、北大西洋条約機構(NATO)が指揮をとる国際治安支援部隊(ISAF)の派遣人数が、2010年の1年間で4万5,000人以上増加するなど、治安面での国際社会による支援も強化されている。 (2)経済・社会状況 アフガニスタンの復興努力の結果、これまでに500万人の避難民が帰還した他、2009年から2010年には22.5%の経済成長率を記録した。教育分野では、就学人数が2001年の100万人以下から2007年には570万人に増加し、医療分野では、例えば、1歳未満の乳児に対するBCG及びポリオの予防接種率は、それぞれ2002年の59%、48%から2009年には85%、96%に改善した。 その一方で、アフガニスタンでは内戦が過去数十年にわたって続いたことから、今後の復興・開発に不可欠な基礎的インフラは未整備の部分が多く、地方への支援拡大も課題となっている。特に麻薬問題の解決は、最重要課題の一つである。アフガニスタンのケシ生産量は世界の生産量の92%を占めているとされているが、病害による影響により、2010年の生産量は前年比で48%減少した。 (3)日本の復興支援策 アフガニスタンの安定と復興は、国際社会全体が対処している最重要課題の一つである。現在、アフガニスタンには米軍が率いる連合軍の他、ISAF49か国・合計約13万名が駐留しており、2009年11月にカルザイ大統領が第二期大統領就任式で言及した、2014年末までのアフガニスタンへの治安権限の移譲に向け、治安確保などの任務に当たっている。また、2010年にはアフガニスタン政府の国づくりに向け、ロンドン国際会議(1月)、カブール国際会議(7月)が開催され、国際社会からはアフガニスタンに対する長期的コミットメントの継続が強調された。 日本は、アフガニスタンをテロの温床に逆戻りさせないとの決意の下、2002年1月にアフガニスタン復興支援国際会議(東京会議)を開催し、アフガニスタンの和平・復興の努力に対する国際社会の支援を取りまとめるなど、これまでアフガニスタン支援について国際社会で主導的な役割を果たしている。2010年6月にはカルザイ大統領が訪日し、菅総理大臣との間で日・アフガニスタン首脳共同記者発表を発表した他、7月には岡田外務大臣がカブール国際会議出席のためにアフガニスタンを訪問し、カルザイ大統領らと今後の支援の在り方について意見交換を行った。 日本はこれまで、政治プロセス、治安改善、復興の全てにわたりアフガニスタンへ支援を行っており、2001年10月から2010年12月までに日本が実施した支援実績は約25.1億米ドルに達している。また、アフガニスタン全土で活動する各国の地方復興チーム(PRT)7と連携した形でも支援を行っており、2009年5月以降、ゴール県のチャグチャランPRTに日本の文民を派遣するなど、地方への支援も強化している。 また、日本は2009年11月、アフガニスタン・パキスタンに対する支援策をその中身とする「テロの脅威に対処するための新戦略」を発表した。この支援策ではアフガニスタンに関しては、早急に必要とされる約800億円の支援を行うとともに、今後のアフガニスタンの情勢に応じて、2009年から概ね5年間で、最大約50億米ドル程度までの規模の支援を行うことを決定した。そこでは、@アフガニスタン自身の治安能力の向上、A元タリバーン末端兵士の社会への再統合、Bアフガニスタンの持続的・自立的発展のための支援の3つを柱としている。2010年12月現在、同支援策の下、これまでに約10億米ドル(約1,061億円)の支援を実施した。 日・アフガニスタン首脳会談に臨む菅総理大臣(右)とカルザイ・アフガニスタン大統領(6月17日、東京 写真提供:内閣広報室) 7 軍人及び文民復興支援関係者から構成される軍民混成の組織。