第4章 第3節 各論 1.国民への積極的な情報発信 (1)各種メディアを通じた情報発信 外務省は、日本の外交政策等に対する国民の理解と支持を得るために、新聞・テレビ・インターネットなどの各種メディアを通じた的確な情報発信に努めている。具体的には、外務大臣、外務副大臣、外務報道官等により原則毎日行われる記者会見に加え、随時、各種の案件説明(ブリーフ)や懇談等を実施するとともに、外務大臣談話及び外務報道官談話や外務省報道発表などを発出している。さらに、2009年9月29日からは、ほかの省庁に先駆けて、大臣等の記者会見をインターネットメディアやフリーランス記者等にも開放した(いわゆる「会見のオープン化」)。また、有識者に対する外交関連情報のメールマガジンの配信や地方メディア関係者への外交関連情報の提供、各地方出身の外務省幹部に対する地方紙インタビューの手配など、外交政策や外務省の取組をより広く国民に理解してもらうため、様々な形での情報発信・取材協力に取り組んでいる。同様に、総理大臣や外務大臣が外国を訪問する場合にも、様々な形で迅速な情報提供を心掛けている。 岡田外務大臣就任記者会見(9月17日、東京・外務省) 各種メディアの報道において事実誤認と思われるものや、説明が十分でないものが見受けられた場合、外務省は、必要に応じて当該メディアに報道の訂正を求め、あるいは外務省の見解を会見で表明の上、その旨外務省ホームページ(注1)に掲載するなど、国民の正確な理解の促進に努めている。 文書による情報発信 口頭による情報発信 (2)ITを活用した情報発信 外務省は、外務省ホームページによる的確で迅速かつ分かりやすい情報の発信とその充実に取り組んでいる。特にホームページの使いやすさと見やすさに配慮し、外交政策について、国民に分かりやすい形での情報提供に努めている。2009年には、動画サイト「You Tube」に外務省動画チャンネルを開設し、大臣等による記者会見の模様の配信や、日本・メコン地域諸国首脳会議、FEALAC、APEC等国際会議に関する広報も実施している。 動画サイト「You Tube」の外務省動画チャンネル。 岡田外務大臣他による記者会見等の動画配信。 また、気候変動問題やアフリカ支援等、主要な外交政策を豊富な図表等により分かりやすく説明する政策広報資料をホームページに掲載している。 さらに、外務省ホームページを日本の「ゲートウェイ」と位置付け、英語による情報発信の充実や世界各国にある在外公館のホームページによる現地語での情報発信に取り組んでいる。 加えて、海外における国民の安全確保のための情報についても、海外安全ホームページ(注5)を通じて提供している(詳しくは第4章第2節「海外における日本人・日本企業への支援」を参照)。 このようなITを活用した情報発信を一層効率化するため、最新のコンテンツ管理システムを導入し、経費削減と臨機応変な情報発信にも取り組んでいる。 外務省ホームページのアクセス数(ページ・ビュー) 在外公館ホームページ開設状況 (3)国民との対話 外務省は、外務大臣や外務省職員が国民と直接対話を行う「国民と対話する広報」を推進している。 2002年4月以来、全国各地で国民と外務大臣が直接対話を行う機会を設け、国民の関心の高い日本の外交政策のあり方や国際情勢について、映像や手話通訳等も用いながら分かりやすく説明するとともに、参加者の質問や意見にも率直に答えている。 ODAについては、日本のODA政策や具体的取組を国民に紹介することなどを目的として、ODAについてのシンポジウム「国際協力について語ろう(2009年3回実施)」や、外務省職員を中高大学、地方自治体、NGO、企業等に派遣する「ODA出前講座(2009年45回実施)」を開催している。 さらに、地方自治体や国際交流団体等民間団体からの申請に基づいて、外務省と共催で行う「国際情勢講演会」、若い世代の国際理解を促進するため、大学や高校に外務省職員を派遣して行う「外交講座」・「高校講座」、大学生と若手外務省職員との意見交換の場である「学生と語る」など各種講演会を実施し、好評を博している。次代を担う大学生が、日本の外交政策や国際情勢に対する関心や理解を深めるとともに、ディベート能力の向上を通じ、国際社会で活躍する有為な人材を育成することを目的とした「大学生国際問題討論会」では、毎回質の高い議論が行われている。 また、交流年や、APEC、軍縮・不拡散などの重要外交案件について、図表や写真等を用いて分かりやすく解説したパンフレットを作成し、親しみやすい広報に努めている。また、民間誌「外交フォーラム」の買い上げは、事業仕分けの結果を踏まえ本年度限りで廃止し、引き続き外交に関する国内での議論を喚起する必要性から、外務省としては新たな外交専門誌を発行することとしている。 そのほか外務省では、外務省ホームページや首相官邸ホームページ、電子政府の総合窓口(e-Gov)のご意見コーナー、さらに電話やファックス、書簡といった様々な媒体を通じた広聴活動を行い、寄せられた意見を外務省の幹部・政策担当部局に周知している(注6)。また、外交に関する特定のテーマについての世論調査を実施し、結果を公表している(注7)。国民から質問が寄せられることの多いテーマについては、外務省ホームページに掲載するなど、国民との双方向のコミュニケーションに努めている。 国民から寄せられた意見(広聴室受付分) (4)情報公開の推進と外交記録の公開 外務省は、自らの活動を国民に対して説明する責務を全うするため、日本の安全や他国との信頼関係、対外交渉上の利益、個人情報の保護などに配慮しつつ、2001年4月に施行された「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)」に基づき情報公開を行っている。具体的には、2009年は、818件の開示請求が寄せられ、約12万ページ以上の文書が開示された。このほか、1976年以来、戦後の外交記録のうち、原則として作成後30年が経過したものを、順次、外交史料館において公開しており、2009年末までに約1万4,000冊の記録を公開した。また、9月には、外務大臣命令により、いわゆる「密約」問題に関する調査が開始されたが、この中で、今後の外交文書の公開のあり方についても、有識者から提言がなされている。 (注1)外務省ホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/ (注2)外務大臣談話等には、外務大臣談話のほか外務大臣コメントも含む。 (注3)原則、すべての外務省報道発表を、報道機関に提供するのとほぼ同じタイミングで外務省ホームページに掲載し、国民が直接閲覧できるように改善している。 (注4)外務報道官が、省内外のゲスト・スピーカーを招いて実施する報道関係者との懇談会。 (注5)海外安全ホームページ http://www.anzen.mofa.go.jp/ (注6)2003年に広聴室を設置し、国民から寄せられた意見を外交政策の企画・立案や業務を遂行するに当たっての参考としている。 (注7)2009年1月、「ODAに関する意識調査」及び「海外安全に関する意識調査」を実施し、調査結果をホームページで公表している。