第4章 第2節 海外における日本人・日本企業への支援 【総論】 今日、海外には約111万人の日本人が居住し、海外へ渡航する日本人の数も年間1,590万人を超え、国際社会の様々な分野・地域で多くの日本人が活躍している。その一方で、日本人が海外で多種多様な危険に遭遇する機会も増加しており、日本人の生命・財産を適切に保護することは政府の重要な任務であるという考えの下、外務省では海外に滞在する日本人が安心して生活・旅行できるよう各種の支援・取組を行っている。 世界各地で発生するテロ・誘拐、事件・事故、新型インフルエンザ等の広域化する感染症、自然災害等に関する様々な情報を分析・提供することで、国民一人一人の危機管理意識を醸成するとともに、自ら安全対策を行うよう呼びかけており、これらの危険に日本人が巻き込まれた場合には、的確な支援が行えるよう支援体制の強化・整備を行っている。また、旅券(パスポート)、各種証明の発給、在外選挙の実施等基礎的な行政サービスの実施に加え、日本人学校・補習授業校への支援、医療・保健関係情報の提供を通じて、海外に暮らす日本人の生活基盤を支えている。 これら海外における日本人支援に加え、永年各国の政治・経済界等の発展に寄与し、日本と居住国との「架け橋」として両国の関係緊密化に貢献してきた日本人移住者・日系人の存在も日本外交にとって重要な資産であるとの認識の下、外務省では今後も両者に対する支援を行うとともに、多方面で協力を続けていく考えである。 また、近年グローバル化が進展する中、日本企業や個人が経済活動を行う上で、海外市場での競争力を培い積極的に進出していくことは極めて重要になっており、日本企業が海外で活発な活動ができるよう支援することは、外務省の重要な課題の一つである。外務省では、日本企業が直面している諸問題について企業側からの意見を幅広く聴取しながら、日本企業からの問い合わせや要望に対応するとともに、諸外国との間で規制改革やビジネス環境改善に関する対話・協議を行い、相手国・地域に対して具体的な改善を求めている。 また、投資環境を整備し、海外に進出する日本企業や国民の経済的負担を軽減するために、租税条約、投資協定、社会保障協定の締結といった法的・制度的な基盤の整備、EPAの活用・運用改善も進めている。 さらに、「知的財産立国」を目指す日本として、二国間及び多国間協議の場で外国政府への働きかけを行うなど、日本企業の知的財産権保護の強化に取り組んでいる。