第4章 第1節 各論 1.外交実施体制の強化 外務省は、政府全体の厳しい財政事情を踏まえ、合理化努力を行いつつ、外交実施体制の整備に取り組んでいる。 2009年7月、外務省は限られた人的資源を優先度の高い業務に投入し、国内外の情勢変化に応じた機動的な外交を進めるため、重点機構強化計画を作成し実施した。具体的には、気候変動問題の重要性及びその関連業務の急増を踏まえて、体制を強化したほか、アフガニスタン・パキスタンや安全保障政策関連の体制も強化した。また、新JICAの発足等も踏まえて、ODAに関する政策企画立案部門や一元的実施体制を強化するため、国際協力局の機構改革を行った。さらに、対中経済外交、EPA、欧州経済関連業務を始めとする経済外交を進める体制を充実させた。 在外公館は、海外において国を代表するとともに、情報収集、邦人援護、相手国・地域との関係促進などの分野で重要な役割を果たす外交力の源泉である。2009年度には5大使館(パラオ、エストニア、キルギス、ベナン、ルワンダ)を開設した。これにより日本の在外公館(実館)数は、大使館133、総領事館64、政府代表部7の合計204となる。この数は、米国の265公館、中国の240公館等と比較して依然として少ないが、政府全体の予算の見直し方針を踏まえ、2009年度においては翌年度の在外公館の新設を行わないこととした。 外務省の定員について、2009年度においては、在外公館で計100人の増員を行い、定員数は合計5,703人(外務本省2,175人、在外公館3,528人)となった。この人員数は、例えば、英国、ドイツの約7,000人の体制と比較していまだ十分とは言えないため、政府全体での厳しい予算・定員事情の中で、今後も事務合理化による定員の再配置も進めつつ、人員体制の整備を行っていく。また、2010年度においては、合計37人(外務本省11人、在外公館26人)の定員の増員を行う予定である。 組織図 以上のような外交実施体制を支える予算に関しては、外務省は、2009年度予算において、[1]「オール・ジャパンの総力を結集した機動的外交」、[2]「平和協力国家として、国際社会の平和と発展への一層の貢献」、[3]「外交力の基盤強化」を三本柱とする総額6,700億円(対前年度比1.4%減)を計上した。 また、2009年度の第2次補正予算では、[1]アフガニスタン支援経費、[2]アジア・アフリカ等気候変動緊急支援、[3]GFATMへの拠出、[4]その他国連関連分担金などについて総額2,505億円を計上し、緊急性が高く、義務的又は外交上の必要性が高い事項に対応した。 地域別の在外公館数と設置国 外務省としては、9月の政権交代を受け、2010年度も政府全体の予算編成方針等にのっとって、引き続き、更なる合理化努力を行い、ほかの主要国に劣らぬ外交実施体制の水準を確保できるように努めていきたいと考えている。 2009年度重点外交政策のための主な予算措置 2009年度外務省所管予算(2010年1月現在)