第3章 第1節 4.軍縮・不拡散・原子力 (1)概観 日本は、自国の安全を確保・維持し、また、日本国憲法にうたわれる平和主義の理念に基づき平和で安全な世界を目指すため、国際社会の責任ある一員として、軍縮・不拡散に取り組んできている。この対象となるのは、大量破壊兵器(一般に核兵器・生物兵器・化学兵器をさす。)・ミサイルとそれ以外の通常兵器である。 核兵器に関しては、核の惨禍を二度と起こさないという唯一の被爆国としての決意から、核兵器や紛争のない平和な世界の実現を目指し、主体的な外交努力を行っている。核軍縮・核不拡散・原子力の平和的利用を扱うNPTを基礎とする国際的な核軍縮・不拡散体制は、近年、北朝鮮やイランの核問題、核兵器を用いたテロの危険の増大、原子力の利用の拡大に伴う核物質拡散の潜在的な危険の増大等、重要な課題に直面している。同体制の堅持・強化は喫緊の課題であり、そのために日本は、NPT体制の運用について検討する作業プロセスに積極的に参加するとともに、NPT体制の実効性を担保するための検証や原子力の平和的利用の推進等を担うIAEAの活動に対し、支援・協力を行ってきている。 核兵器以外の大量破壊兵器である生物兵器や化学兵器については、それらの生産・保有等を禁止する生物兵器禁止条約(BWC)及びCWCが発効しており、その強化と普遍化に向けた努力を行っている。 また、通常兵器についても、クラスター弾や対人地雷といった非人道的な兵器の使用を禁止する条約の作成と強化、不発弾除去や小型武器回収といった被害国でのプロジェクトの実施や、各国の軍備の透明性を高めるための諸努力に取り組んでいる。 その他の多国間の枠組みとしては、軍縮分野で唯一の多国間交渉機関であるジュネーブ軍縮会議(CD)において、新たな条約交渉に向けた議論等が行われている。それ以外にもG8、国連等の様々な枠組みを通じた活動が行われている。また、大量破壊兵器やその運搬手段たるミサイル、通常兵器、さらにはその関連物資や関連汎用品等が拡散懸念国やテロ組織に拡散しないよう、供給者サイドから規制を行うための輸出管理の多国間の枠組み(輸出管理レジーム)に基づく各国の取組が以前にも増して重要となっている。さらに近年は、米国同時多発テロ事件を契機として、国家のみならず非国家主体(テロリストなど)への核兵器や核物質の移転の防止等(核セキュリティ)に関し、国際社会全体による取組の強化にも重点が置かれている。 日本は、これらの多国間の枠組みを通じた取組に加え、二国間の対話を通じた軍縮・不拡散外交も積極的に行っており、二国間原子力協定の締結等による原子力の平和利用の促進やロシアの退役原子力潜水艦の解体支援等、その活動は多岐にわたっている。 核不拡散・核軍縮に関する国連安全保障理事会首脳会合で演説する鳩山総理大臣(左から2番目、左は岡田外務大臣) (9月24日、米国・ニューヨーク 写真提供:内閣広報室) (2)核軍縮 イ 核兵器不拡散条約(NPT) 5月に、ニューヨークにおいて開催された2010年NPT運用検討会議第3回準備委員会では、次回運用検討会議の暫定議題等の手続事項に合意が得られた。運用検討会議に向けた勧告案についても、その採択こそ見送られたものの、実質的な議論が行われた。 ロ 包括的核実験禁止条約(CTBT)(注1) 9月、ニューヨークにおいて開催された第6回CTBT発効促進会議に岡田外務大臣が出席し、未署名・未批准の発効要件国に対する働きかけの強化及び包括的な検証体制整備のための協力強化をうたったCTBT発効促進イニシアティブを発表した。 ハ ジュネーブ軍縮会議(CD) CDでは、5月、1998年以来11年ぶりにカットオフ条約(注2)交渉開始を含む作業計画に合意した。しかし、続いて行われた作業計画の実施に必要な決定案についての協議は、パキスタンの修正要求により合意に至らず、合意された作業計画の2009年中の実施は見送られることとなった。 二 米露核軍縮交渉 世界に存在する核兵器のうち、圧倒的な数を保有している米露の間では、モスクワ条約の下で、配備戦略核弾頭の削減が行われている。12月に詳細な検証規定を有し、モスクワ条約(注3)の基盤となっていた第一次戦略兵器削減条約(START T)(注4)が失効したが、その後も米露間で更なる核弾頭数・運搬手段数削減や検証・査察などに関する交渉が進められている。 ホ 核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND) 日豪首脳の合意に基づく共同イニシアティブとして発足したICNNDは、2010年NPT運用検討会議の成功と核兵器のない世界に向けた具体的な勧告等を提示することを目的に、4回の本会合及び4回の地域会合(注5)を開催した。12月15日、東京においてその結果を取りまとめた報告書が、ICNND委員会の共同議長を務める川口元外務大臣及びエバンズ元オーストラリア外相から、鳩山総理大臣及びラッド・オーストラリア首相に提出された。 ヘ その他多国間での取組 7月に行われたG8ラクイラ・サミット(於:イタリア)では、核兵器のない世界に向けた状況をつくることなどを約束した成果文書が発表された。9月の核不拡散・核軍縮に関する国連安保理首脳会合には、日本から鳩山総理大臣が出席し、唯一の被爆国として日本には核軍縮を推進する道義的責任があることなどを宣言する演説を行った。同会合では、核軍縮・核不拡散・原子力の平和的利用・核セキュリティ(いわゆる核テロ対策)を幅広く網羅した安保理決議第1887号が採択された。12月には、日本が1994年から毎年国連総会に提出している核軍縮決議案(注6)が圧倒的支持を得て採択された。8年間反対を続けていた米国が、初めて共同提案国となった上で賛成に回った。このほか、日本は、ソ連崩壊に伴う頭脳面での拡散防止のための国際科学技術センター(ISTC)に参加し、大量破壊兵器の研究開発に従事していた科学者・研究者等の民生転換を支援している。 ト その他二国間での取組 様々な国との間で二国間軍縮・不拡散協議を行い、協力関係を深めた。また、核軍縮・不拡散と日本海の環境汚染防止の観点から、日露非核化協力委員会を通じて、ロシア退役原子力潜水艦解体支援関連事業(注7)を実施している。 大量破壊兵器、ミサイル及び通常兵器(関連物質等を含む)の軍縮・不拡散体制の概要 (3)不拡散 イ 地域の不拡散問題 北朝鮮の核・ミサイル問題は、国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり、特に核問題は国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦である。2002年10月にウラン濃縮計画の保有を認めたことを契機として核問題が深刻化し(注8)、2006年7月にテポドン2を含む7発の弾道ミサイルの発射、10月に核実験実施発表に至った。2007年から2008年にかけて寧辺(ヨンピョン)の3つの核施設(5MW(メガワット)実験炉、再処理工場及び核燃料棒製造施設)の無能力化作業への着手及び核計画についての申告もなされたが、2009年4月にミサイルを発射、5月に2回目の核実験を実施し、6月に新たに抽出されるプルトニウム全量の兵器化及びウラン濃縮作業着手を発表した。7月には複数発の弾道ミサイル発射、9月には試験的ウラン濃縮が最終段階に達した旨を宣明する書簡を国連安保理議長あてに送付し、11月には使用済核燃料棒の再処理を成功裏に終了した旨を発表するなど、強硬姿勢を強めている。日本は、2005年9月の六者会合共同声明に明記された、北朝鮮の「すべての核兵器及び既存の核計画の放棄」に向けた措置が着実に実施されるよう、引き続き関係国とともに努力していく考えである。 また、IAEA(注9)に無申告のウラン濃縮関連活動が2002年に発覚したイランの核問題も、国際的な核不拡散体制への重大な挑戦であり、2003年以降、当該活動の停止等を求める累次のIAEA理事会決議(注10)及び国連安保理決議(注11)が採択されてきた。IAEAとの協議を通じて策定された「未解決の問題」を解明するための「作業計画」(2007年8月)の実施以降も、「疑わしい研究」の解明は一向に進んでいない上、2009年9月には、新たなウラン濃縮施設が明らかになるなど、イランは依然として国連安保理決議に反してウラン濃縮関連活動を継続・拡大している。11月には、IAEAは、2006年2月以来となるIAEA理事会決議を採択し、IAEAへの完全な協力や、未申告の核関連施設建設を行っていないことをIAEAに保証することを求めた。日本は、関係国と緊密に連携しつつ、イランとの独自の関係に基づく働きかけを継続し、核問題の平和的・外交的解決に向け努力していく考えである(詳細については第2章第6節3.イランを参照)。 シリアによるIAEA保障措置(注12)の履行に関する問題も、2008年11月以降、IAEA理事会において取り上げられている。 ロ 大量破壊兵器等の拡散防止の取組 日本は、不拡散体制の強化のため様々な外交努力を行っている。IAEAは、原子力の平和的利用の促進と原子力の軍事的利用への転用防止を目的とする国際機関であり、日本はIAEA指定理事国(注13)としてその活動に人的・財政的貢献を行っている。7月に行われたIAEA事務局長選挙においては、天野之弥在ウィーン国際機関日本政府代表部大使が当選を果たし、9月の総会による承認を経て、12月に日本人として、またアジアから初めて第5代IAEA事務局長に就任した。IAEAの保障措置は、核物質等が軍事的目的に資するような方法で利用されないことを確保するための検認制度であり、また、国際的な核不拡散体制の中核的な措置である。日本はより多くの国が追加議定書(注14)を締結するよう様々な協議の場で各国に働きかけており、IAEAと協力し、追加議定書締結に向けた地域セミナーへの人的・財政的支援を実施している。 輸出管理体制は、兵器やその関連汎(はん)用品の供給能力を持ち、かつ不拡散に同意する国々による輸出管理の協調のための枠組みであり、核兵器、生物・化学兵器、ミサイル(注15)、通常兵器のそれぞれに関する多国間の輸出管理レジームが存在するが、日本はこれらすべてに参加・貢献している。 このほか、日本は、「拡散に対する安全保障構想(PSI)」(注16)への積極的な参加に加え、不拡散体制への理解促進と取組の強化を目指し、他国への働きかけを行っており、2003年度からアジア不拡散協議(ASTOP)(注17)を、また、1993年度からアジア輸出管理セミナー(注18)をそれぞれ開催するなど、拡散問題に対する地域的取組の強化を率先して進めている。 (4)原子力 イ 多国間での取組 近年、国際的なエネルギー需要の拡大や地球温暖化問題への対処の必要性から、発電過程で温室効果ガスを排出しない原子力発電が再評価されており、その拡充及び新規導入を計画する国が増加している(「原子力ルネサンス」)。IAEA等によれば、現在原子力発電を稼働している30か国中26か国が新規原子力発電所の建設を計画しており、40か国以上が原子力発電の新規導入に関心を示している。一方で、原子力発電に利用される技術や機材、核物質は軍事転用が可能であることから、核拡散、核テロリズム及び原子力事故といった危険への対応が国際社会の大きな課題となっている。 日本は、原子力の平和的利用において、核不拡散、原子力安全、核セキュリティの「3S」(注19)の確保が不可欠との立場に立ち、二国間、多国間の枠組みを通じて、「3S」を国際社会の共通認識とするための外交を展開している。 「3S」のうち、特に核セキュリティは、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件以降国際的な関心が高まっており、様々な取組が行われてきている。2006年には、米露の主導により「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」(注20)が開始された。日本はこのイニシアティブを支持しており、関連する会合に参加し、グローバルな核テロ対策強化のための協力を行っている。また、日本は地域レベルでの核セキュリティ強化のための取組も行っている。2010年1月に、東京においてIAEAとの共催により「アジア諸国における核セキュリティ強化に関する国際会議」(注21)を開催し、アジア諸国における核セキュリティ能力の向上にも取り組んでいる。さらに2010年4月には、オバマ米国大統領の提唱により、核セキュリティ・サミット(注22)が米国で開催される予定であり、日本はその準備会合を開催するなど、サミットの成功に向けた貢献を行っている。 ロ 二国間原子力協定 二国間の原子力協力については、5月のプーチン・ロシア首相が訪日した際に日露原子力協定に署名した。カザフスタンとは2007年から原子力協定の締結交渉を継続して実施してきているほか、韓国とも1月に首脳間で原子力協定の締結交渉開始に合意し、7月に第1回交渉を実施した。 (5)生物兵器・化学兵器 イ 生物兵器 BWC(注23)は、生物兵器の開発・生産・保有等を包括的に禁止する唯一の多国間の法的枠組みであるが、条約遵守の検証手段に関する規定がない。検証手段の導入については、生物剤や毒素への実効的な検証が極めて困難であるとの議論があり、条約をいかに強化するかが課題となっている。 2006年の第6回運用検討会議において、条約の強化のために、次回運用検討会議(2011年)までの年次会合プロセスが合意され、2009年は、8月の専門家会合及び12月の締約国会合で、「平和目的の生物学的科学技術の国際協力の向上のための、疾病サーベイランス、検知、診断及び封じ込め等の分野におけるキャパシティ・ビルディングの促進」について議論された。日本は、専門家会合において作業文書の提出や専門家によるプレゼンテーションを実施したほか、締約国会合において「JACKSNNZ」(注24)を代表して共同作業文書を提出し、議論の活性化に貢献した。 ロ 化学兵器(CWC) CWC(注25)は、化学兵器の生産・保有・使用等を包括的に禁止し、既存の化学兵器の全廃を定めるとともに、条約の遵守を検証制度(申告と査察)により確保しており、大量破壊兵器の軍縮に関する条約としては画期的な条約である。 CWCの目的である化学兵器のない世界を実現する上で、普遍化促進及び国内実施措置強化は不可欠であり、日本はこれらの課題に対して積極的に取り組んできている。1月に、日本が条約締結促進を支援してきたイラクがCWCに加入したほか、11月には東京で化学プロセスの安全管理に関するワークショップを開催した。 また、日本は、CWCに基づき、中国に遺棄された旧日本軍の化学兵器について、国内の老朽化した化学兵器と同様に廃棄義務を負っており、中国と協力しつつ、一日も早い廃棄の完了を目指して最大限の努力を行っている。 (6)通常兵器 イ クラスター弾(注26) クラスター弾の使用、所持、製造等を禁止する「クラスター弾に関する条約」が2010年8月に発効する。日本は、2009年7月に締結した。一方、特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)の枠組みでも、引き続きクラスター弾の規制について議定書交渉が行われている。日本は、クラスター弾の人道上の問題を深刻に受け止め、被害者支援や不発弾処理といった対策を実施してきた。今後もこのような支援を実施していくとともに、主要生産国・保有国に「クラスター弾に関する条約」への参加を働きかけていく考えである。 ロ 小型武器 国際社会に過剰に存在する小型武器が、非合法な武器の取引、紛争の長期化や激化、治安回復の遅れ等の問題を引き起こしている。日本は、小型武器決議の作成を始め、国連における議論に貢献すると同時に、武器回収、廃棄、啓発活動等の小型武器対策プロジェクトを支援している。 ハ 対人地雷 日本は、実効的な対人地雷禁止と、被害国への地雷対策支援の双方を強化する包括的な取組を推進しており、アジア太平洋地域各国への対人地雷禁止条約(オタワ条約)(注27)加入の働きかけに加え、1998年以降、40か国に約400億円の地雷対策支援を実施している。11〜12月、コロンビアで、オタワ条約の閣僚級会議が開催され、日本製の地雷除去機の展示やシンポジウムの開催により、産官学民一体となった日本の貢献を示した。 二 武器貿易条約(ATT)構想 武器の輸出、輸入及び移譲を管理し、「責任ある」貿易を確保するための武器貿易条約構想につき、7月の国連作業部会で、管理されない武器貿易が引き起こす諸問題に対処するための国際的取組の必要性を明記した報告書が採択された。2012年国連会議での条約作成を目指し、2010年から交渉プロセスが開始される。 ホ 国連軍備登録制度(注28) 2009年に3回の政府専門家会合が開催され、小型武器を登録対象とするか否かを含め、主要武器の輸出入を国連に登録する本制度の強化・改善策が話し合われた。 地雷除去の様子(写真提供:山梨日立建機) (注1)宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる空間における核兵器の実験的爆発及び核爆発を禁止。1996年に署名開放されるものの、発効要件国44か国のうち、米国、中国、インドネシア、エジプト、イラン、イスラエルが未批准、北朝鮮、インド、パキスタンが未署名のために、未発効。 (注2)核兵器国及びNPT非締約国(インド、パキスタン、イスラエル)の核能力を凍結することを目的とし、爆発装置の研究・製造・使用のための高濃縮ウラン及びプルトニウム等の生産禁止等を内容とする条約構想。 (注3)「モスクワ条約(戦略攻撃能力削減に関する条約:SORT: Strategic Offensive Reduction Treaty )」。米露の配備戦略核弾頭数を2012年末までに1,700〜2,200発に削減することを規定。 (注4)「第一次戦略兵器削減条約(Strategic Arms Reduction Treaty T)」。大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)及び重爆撃機の運搬手段の総数、配備戦略核弾頭数の総数等を制限する米ソ(露)間の条約。また、同条約は詳細な検証・査察規定を有しており、後に発効したモスクワ条約ではSTART Tを準用しているため、その後継条約について米露間で交渉が進められていたが、2009年12月5日に失効した。 (注5)本会合は、シドニー、ワシントン、モスクワ及び広島で開催。地域会合は、中南米(於:サンティアゴ)、北東アジア(於:北京)、中東(於:カイロ)及び南アジア(於:ニューデリー)で開催。 (注6)日本は、1994年以降毎年、核廃絶に向けた漸進的・現実的アプローチにのっとり、「全面的核廃絶」に向けた核軍縮決議案を国連総会に提出し、国際社会の圧倒的支持を得ている。2009年は、核軍縮決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」を提出し、国連総会で賛成171、反対2( インド、北朝鮮)、棄権8の圧倒的多数の支持を得て採択された。 (注7)本事業は、2002年6月のG8カナナスキス・サミットにおいて合意された、大量破壊兵器及びその関連物質の拡散防止を主な目的とする「G8グローバル・パートナーシップ」の一環として実施されているもの。6隻の退役原子力潜水艦解体協力の実績がある(「希望の星」事業)。 (注8)2003年1月には、北朝鮮はNPTから脱退することを通告し、その後、北朝鮮は、1994年10月に米朝間で署名された「合意された枠組み」の下で凍結していた5MW(メガワット)の実験炉を再稼働させ、使用済核燃料の再処理を再開した。 (注9)IAEA(International Atomic Energy Agency)は、1957年に設立され、その事務局はウィーンに所在。最高意思決定機関は全加盟国で構成され年1回開催される総会であり、総会に対して責任を負うことを条件に、35か国で構成される理事会がIAEAの任務を遂行する機関として機能している。2009年12月現在、151か国が加盟。 (注10)2003年9月のIAEA理事会決議や10月のEU3(英国、フランス、ドイツ)とのテヘラン合意を受け、イランは濃縮関連活動の停止の約束のほか、保障措置に関する是正措置やIAEA追加議定書の署名など一時的には前向きな対応を見せたものの、同活動を継続した。また、11月のEU3とのパリ合意により同活動を停止したものの、2005年8月には再開している。 (注11)国連安保理決議第1696号(2006年7月31日採択)、決議第1737号(2006年12月23日採択)、決議第1747号(2007年3月24日採択)、決議第1803号(2008年3月3日採択)、及び決議第1835号(2008年9月27日採択)を指す。決議第1696、1737、1747、1803号は、国連憲章第7章下で、イランに対し、すべての濃縮関連・再処理活動及び重水関連計画の停止、未解決の問題の解決等のため、IAEAに対するアクセス及び協力を提供することを義務付け、また、追加議定書の迅速な批准を要請している。さらに、決議第1835号は、イランに対しこれら4本の決議の義務を遅滞なく遵守するよう求めている。5本の決議のうち、決議第1737、1747、1803号は、核関連物資の対イラン禁輸やイランの核・ミサイル関連個人・団体の資産凍結等の憲章第7章41条下のイランに対する制裁措置を含んでいる。 (注12)IAEAが各国と個別に締結した保障措置協定に基づき、査察等の手段により検認活動を行うもの。NPT締約国たる非核兵器国は、NPT第3条に基づき、IAEAとの間で保障措置協定を締結し、国内のすべての核物質について保障措置を受け入れる(包括的保障措置)ことが求められている。 (注13)IAEA理事会で指定される13か国で、日本を始めG8等の原子力先進国が指定されている。 (注14)包括的保障措置協定に追加してIAEAとの間で各国が締結する議定書。追加議定書の締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲が拡大されるなど、検認活動が強化される。2009年12月現在、94か国が締結。 (注15)弾道ミサイルに関しては、輸出管理体制のほかにも、その開発・配備の自制などを原則とする弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)があり、日本はこれにも参加している。 (注16)PSI(Proliferation Security Initiative)とは、大量破壊兵器等の拡散阻止のため各国が国際法・各国国内法の範囲内で共同してとり得る措置を実施・検討するための取組で、2003年5月に開始。活動に際しては、特定の事態や対象国を想定はしない。2009年12月現在90か国以上が、PSIの活動に参加・協力している。日本は、PSI海上阻止訓練として、2004年10月に相模湾沖及び横須賀港内において「Team Samurai 04」を、2007年10月に伊豆大島沖及び横浜港、横須賀港にて「Pacific Shield 07」を主催。また、他国主催訓練及び関連会合にも積極的に参加している。 (注17)ASTOP(Asian Senior-level Talks on Non-Proliferation)とは、日本のほか、ASEAN10か国、中国、韓国、米国、オーストラリア、カナダ及びニュージーランドが参加し、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題について議論を行う日本主催の多国間協議。最近では2009年12月に開催。 (注18)アジア諸国政府の輸出管理担当者、民間企業、研究者等を日本に招待して、日本を始めとする輸出管理先進国の取組を紹介するとともに、アジア地域における輸出管理強化に向けて意見・情報交換するセミナー。最近では2010年1月に開催し、27か国・地域が参加。 (注19)核不拡散の代表的な措置であるIAEAの保障措置(Safeguards)、原子力安全(Safety)及び核セキュリティ(Security)の頭文字をとって「3S」と称されている。 (注20)核テロリズムに国際的に対抗することを目的に、数多くの関連会合やワークショップを開催している。2009年12月現在、76か国が参加し、4機関(EU、IAEA、国際刑事警察機構(ICPO-interpol)及び国連薬物犯罪事務所(UNODC))がオブザーバーとして参加している。 (注21)同会議は2006年に第1回が開催され、今回はそのフォローアップ会議として開催された。ASEANや中央アジアの諸国を中心に、アジア地域から17か国が招待された。 (注22)2009年4月のプラハ演説において提唱され、核テロを地球規模の安全保障に対する最も緊急かつ最大の脅威とし、そのための既存の体制の強化を目的としている。原発所有国や新規導入検討国等43か国及び4国際機関(国連、IAEA、EU、NATO)が招待される予定。 (注23)1975年3月発効。締約国数は163か国(2009年12月現在)。 (注24)JACKSNNZ:日本、オーストラリア、カナダ、韓国、スイス、ノルウェー、ニュージーランドの頭文字を略したもの。非EU西側諸国による非公式グループ。 (注25)1997年4月発効。締約国数は188か国(2009年12月現在)。 (注26)一般的に、航空機等から投下、発射される容器の中に複数の子弾を内蔵した弾薬のこと。不発弾が多いことが問題とされ、不発弾による民間人の被害が問題となっている。 (注27)対人地雷の使用、生産等を禁止し貯蔵地雷の廃棄、埋設地雷の除去等を義務付ける条約で、1999年3月に発効した。2009年12月現在の締約国数は、日本を含め156か国。 (注28)1991年に日本が当時のEC諸国と協力して提案した本件制度では、大規模侵攻用の攻撃兵器7カテゴリー(戦車、装甲戦闘車両、大口径火砲システム、戦闘用航空機、攻撃ヘリコプター、軍用艦艇、ミサイル及びミサイル発射装置)の通常兵器の輸出入に関する情報を国連事務局に提出することとなっている。