第2章 第6節 7.北アフリカ(マグレブ(注1)を含む) (1)エジプト エジプト政府は、2008/2009年の経済成長率を4.7%と発表しており、世界的な経済・金融危機にもかかわらず比較的堅調(けんちょう)な経済運営を行っている。引き続き規制緩和、民営化等経済改革を推進している一方、高い失業率や貧富の格差拡大に対応するため、雇用機会の創出、貧困対策にも力を入れている。外交面では、ガザ復興のためのパレスチナ経済支援に関する国際会議(於:シャルム・エル・シェイク)の開催、パレスチナ諸派間の国民対話の仲介努力等、中東和平、スーダン問題等の地域問題の解決に向けた努力を継続している。 日本との関係では、5月に中曽根外務大臣がエジプトを訪問し、ムバラク大統領やアブルゲイト外相と会談を行い、二国間関係及び地域問題での両国の協力を確認した。また、7月には日本・エジプト科学技術大学(E-JUST(イージャスト))構想への両国の協力を確認する政府間協定が発効し、9月には同校が実質的に活動を開始し、2010年2月に学生の受入れを開始した。 中曽根外務大臣(左)のムバラク・エジプト大統領表敬(5月3日、エジプト) (2)マグレブ アルジェリアは、近年、治安改善、経済改革で成果を上げており、主要国の企業が積極的に進出している。日本企業もプラント建設や高速道路建設等で進出しており、投資協定締結に向けた政府間協議も行われている。6月には、橋本外務副大臣が訪問し、メデルチ外相と会談した。 リビアは、2003年の大量破壊兵器計画の廃棄以降、国際社会への復帰を進め、2009年には国連安保理非常任理事国やAU議長国を務めた。さらに、9月には、リビアの国連大使を3度務めるなどしたアリ・トレイキ氏が、国連総会議長に就任した。また、3月にはバラーニ副外相(リビア外務省アジア担当書記)が訪日し、中曽根外務大臣と会談した。 モロッコは近年、農業・漁業・観光分野等の経済開発戦略を発表し、国家開発を進めている。自動車部品製造分野への日系企業進出を始め、二国間経済関係が深化しており、10月には第1回 日・モロッコ合同委員会が開催された。また、12月にベンハドラ・エネルギー・鉱山・水利・環境相が来日した。 チュニジアは、近年順調な経済成長を続けており、同国でも自動車部品分野で日系企業の進出が見られる。10月の大統領選挙では、ベン・アリ大統領が再選された。7月にアブダッラー外相が来日し麻生総理大臣と会談したほか、12月にジュイニ開発・国際協力相が来日した。 アラブ・マグレブ連合(AMU)との間では、2月、モロッコにおいて、駐マグレブ諸国の日本大使とベン・ヤヒアAMU事務局長との間で初の対話が実施され、12月にはベン・ヤヒアAMU事務局長が来日するなど、日本とAMU間の対話が行われた。 橋本外務副大臣(左)とメデルチ・アルジェリア外相との会談(6月26日、アルジェリア) ■コラム■ アフガニスタン・チャグチャランPRTでの文民支援 灼熱の太陽の下、子供たちが勉強している。 砂嵐も舞う不毛な土漠の一か所に、小さな子供たちが集まり、一冊の教科書を囲みながら、一生懸命、読み書きの勉強をしているのだ。 「夏の暑さも厳しいが、冬は零下30度まで気温が下がる。学校の校舎があれば、この子供たちは一年中勉強ができるのだけど。」と村の長老たちが訴えてくる。 平成21年5月下旬、アフガニスタン支援のための地方復興チーム(PRT)に日本政府が派遣した文民4名の活動が始まった。活動の場所は、同国中西部ゴール県のチャグチャランPRTで、リトアニアなど7つの国々から、軍と文民が派遣されている。 私たち文民の仕事にとって、軍の協力も得ながらできるだけ県内を回り、県民は何を必要としているのか、しっかりと耳を傾け、自分の目でみることが何より重要である。冒頭の長老たちの訴えの背景には、ゴール県にある学校の9割が校舎のない「青空教室」であるという厳しい現実がある。 派遣から1年が経ち、日本の支援で県内あちこちに校舎も建ち始め、地元の人々から「チャグチャランに日本が来てくれて本当によかった。」「私たちの生活に希望も見えてきた。」「この子供たちが大きくなるのが楽しみだ。」といった嬉しい言葉も届く。職務環境は厳しいが、こういう言葉を糧に、アフガニスタンの明るい未来作りを応援していきたい。 チャグチャランPRT日本文民事務所(外務省から派遣) 官澤(かんざわ)治郎 現地での活動の様子 (注1)バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の6か国からなる。