第2章 第6節 5.湾岸諸国 湾岸協力理事会(GCC)諸国(注1)は、近年、石油輸出以外の分野も視野に入れた産業の多角化に向けた努力を行ってきているが、石油・天然ガスの輸出収入や外国人労働力に多くを依存するという経済構造は大きく変化していない。2008年9月以降の世界経済・金融危機と、それに前後して発生した原油価格の下落が、GCC各国の経済に大きな影響を与えたことに加え、11月には、アラブ首長国連邦のドバイにおける債務返済延長要請が、新たな国際金融不安の震源となった。 例年開催されるGCC首脳会議は、12月にクウェートにおいて第30回会合を開催した。6月に署名された通貨統合協定は、サウジアラビア、クウェート、バーレーン、カタールの4か国で発効し、GCC中央銀行の準備に当たる通貨評議会の設置が決定された。鉄道や電力網整備による経済統合強化についても確認された。 治安問題については、8月にイエメンからサウジアラビアに入国したアル・カーイダ系分子がサウジアラビアの内務次官に自爆テロを試み、また、11月には、イエメンのシーア派反政府武装勢力が国境を越えてサウジアラビア領に侵入し、これをサウジアラビア軍が爆撃等により阻止するなど、イエメン情勢の安定が課題となっている。また、イエメン国内では、11月にサヌアで日本人1名が地元部族に誘拐され、8日後に解放されるという事件が発生した。ソマリア沖・アデン湾では海賊事件の発生件数は2008年を超えて増加しており、引き続き日本を含めた域内外諸国による海賊対策の取組が行われている。 日本との関係については、安倍晋三総理大臣特使(元総理大臣)が1月にサウジアラビアを訪問した。3月及び5月には、福田康夫総理大臣特使(前総理大臣)が、アラブ首長国連邦、オマーン、バーレーンをそれぞれ訪問した。これらの訪問において、良好な二国間関係について各国要人との間で確認するとともに、関係を一層強化する重要性を強調した。また、カタールのタミーム皇太子が5月に公式訪日した。そのほか、二国間協定ではクウェートとの租税条約が1月に、サウジアラビアとの租税条約が6月に、基本合意に達し、また、2006年に創設された日・カタール合同経済委員会は、第4回会合(閣僚級)が11月に東京で開催され、エネルギー分野等における双方向の投資活動を活発化させ、関係強化を図っていくことが確認された。 (注1)バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の6か国からなる。