第2章 第4節 2.欧州地域機関との協力 (1)北大西洋条約機構(NATO)との協力 NATOは冷戦後の安全保障環境が変容する中で、国際的な平和と安定のための取組を強化し、アフガニスタンにおける国際治安支援部隊(ISAF)や、ソマリア沖での海賊対策等、域外での展開に力を入れている。4月にNATO設立60周年を記念して、フランスのストラスブールとドイツのケールにおいて開催された首脳会合では、クロアチアとアルバニアが新規加盟を果たし、28か国体制となったほか、フランスがNATOの統合軍事機構に復帰した。8月には、ラスムセン新事務総長(前デンマーク首相)が就任した。 日本はNATOと基本的価値とグローバルな安全保障上の課題の解決に向けた責任を共有するパートナーであり、具体的な協力を着実に進展させている。 アフガニスタンでは、2007年に構築された、NATOの地方復興チーム(PRT)と連携しつつ、日本が草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じてNGOなどを支援する枠組みにより、12のPRTと連携した68事業(2009年12月現在)が実施されている。これらの事業の円滑な実施のため、カブールでは、日本の連絡調整員がNATOと緊密に連携している。また、5月からは日本の文民支援チームがチャグチャランPRTに派遣され、開発援助調整に当たっている。さらに、日本は同国におけるNATO・ISAFのヘリコプターによる空輸能力を向上させるための協力も実施している。 また、ほかの地域でも、NATO平和のためのパートナーシップ(PfP)信託基金を通じ、アゼルバイジャンにおける不発弾処理プロジェクトに対する協力を実施しており、日本は、引き続き平和構築分野において、NATOとの協力を強化していく考えである。 (2)欧州安全保障協力機構(OSCE)・欧州評議会(CE)との協力 OSCEは、北米、欧州、中央アジアの56か国が加盟する世界最大の地域安全保障機構である。2009年には、ギリシャによる議長国のもと、6月のコルフ島における非公式外相会合、12月のアテネにおける外相理事会等において、ロシア提案の欧州安全保障条約構想を中心に議論が行われた。安全保障問題がグローバル化する中、日本はOSCEのパートナー国として、OSCEとの対話と協力を促進しており、2009年にはOSCEのアフガニスタン国境管理プロジェクト5案件を財政支援し、アフガニスタン・中央アジア国境における税関、国境警備能力の強化を通じて同地域の平和と安定に貢献している。6月には、日・OSCE共催会議を東京で開催し、日本と欧州で共通する安全保障上の課題に対処するために知見の共有を図ったほか、ド・ブリシャンボーOSCE事務総長の中曽根外務大臣への表敬においても、日本とOSCEの協力を継続することの重要性につき一致した。 CEは、民主主義、人権、法の支配等の分野における国際社会の規準づくりに重要な役割を果たす、47か国が加盟する欧州の地域国際機関であり、東欧や中央アジア・コーカサス諸国等で民主化支援事業等を実施している。日本は、アジアで唯一のオブザーバー国として、2009年も様々な会合に積極的に参加した。また、南東欧地域やコーカサス地域の国々における政治、経済、文化分野の次世代指導者を育成することを目的とする政治研究スクールの、ウクライナでの会議(9月)を支援した。 欧州の主要な枠組み