第2章 第2節 各論 1.米国 (1)日米政治関係 イ 日米首脳間での取組 日米両国間では、首脳レベルを始め、あらゆるレベルで相互の信頼関係の強化と緊密な政策協調が行われている。 2月、麻生総理大臣は、オバマ政権下でホワイトハウスを訪問する最初の外国首脳として、オバマ大統領と日米首脳会談を行った。同会談において両首脳は、日米同盟を基軸として、アジア太平洋地域の平和と繁栄を確保し、金融・国際経済、アフガニスタン・パキスタン、気候変動・エネルギーなどの地球規模の課題に共に取り組んでいくことを確認した。また、7月のG8ラクイラ・サミット(於:イタリア)の際には、麻生総理大臣とオバマ大統領は、北朝鮮への対処が日米両国にとって高い優先事項であるとの認識のもと、引き続き日米両国が緊密に連携していくことの重要性を確認するとともに、COP15の成功に向けて緊密に協力していくことで一致した。また、核不拡散分野においては引き続き日米がIAEAで協力していくことを確認した。 9月に就任した鳩山総理大臣は、就任直後に出席した国連総会に際してオバマ大統領と首脳会談を行った。同会談においては、鳩山総理大臣から、日米同盟を日本外交の基軸として重視していく考えを伝達し、両首脳は日米関係の強化で一致するとともに、地域の課題や地球規模の課題についても、建設的で未来志向の日米関係を築き、従来にも増して協力の幅を広げていくことを確認した。また、北朝鮮、インドネシアを含むアジア太平洋地域情勢及び気候変動、アフガニスタン・パキスタン、核軍縮・不拡散を含む地球規模の課題についても意見交換を行った。また、鳩山総理大臣は、10月の第173回国会における所信表明演説において、日米両国の同盟関係が世界の平和と安全に果たせる役割や具体的な行動指針を、日本からも積極的に提言し、協力していけるような緊密かつ対等な日米同盟を構築し、日米の二国間関係はもとより、アジア太平洋地域の平和と繁栄、更には地球温暖化や「核兵器のない世界」など、地球規模の課題の克服といった面でも、日本と米国とが連携し協力し合う、重層的な日米同盟を深化させていく方針を明らかにした。 11月には、オバマ大統領が初めてのアジア歴訪の最初の訪問地として日本を訪れ、鳩山総理大臣と首脳会談を行った。同会談において両首脳は、二国間関係はもとより、アジア太平洋地域や地球規模の課題における日米協力を強化するとともに、2010年の日米安全保障条約締結50周年に向けて、同盟深化のための協議プロセスを開始することで一致した。また、APECを含むアジア太平洋地域における連携強化を確認し、首脳会談終了後には、気候変動交渉に関する日米共同メッセージ、「核兵器のない世界」に向けた日米共同ステートメント及び日米クリーン・エネルギー技術協力に関するファクトシートを発出した。また、オバマ大統領は、東京において米国の対アジア政策に関するスピーチを行い、米国をアジア太平洋国家の一員と位置付け、同地域で米国がリーダーシップを維持・強化していく決意を表明するとともに、日米同盟はアジア太平洋地域の繁栄と安全の基盤であるとし、平等で相互尊重に基づいたパートナーシップという同盟精神を守り続けていくと言明した。 2010年は現行の日米安全保障条約の締結から50年の節目の年に当たる。50年前に署名がおこなわれた日にあたる1月19日、鳩山総理大臣とオバマ大統領は、それぞれ談話を発表し、アジア太平洋地域やグローバルな課題における日米協力を一層強化し、日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させることを確認した。 首脳会談に臨む鳩山総理大臣(右)とオバマ米国大統領(11月13日、東京 写真提供:内閣広報室)) ロ 日米外相間での取組 日米外相間では、オバマ政権発足直後の2月にクリントン国務長官が最初の外国訪問先として日本を訪問し、中曽根外務大臣と外相会談を行った。同会談において両大臣は、在日米軍再編の着実な実施等を通じた日米同盟の一層の強化で一致するとともに、北朝鮮及び中国等のアジア太平洋地域情勢、アフガニスタン、気候変動・エネルギー、金融・世界経済、アフリカ開発等の地球規模の課題に関して幅広く意見交換を行い、相互の考えについて理解を深めた。さらに、両大臣は、在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定の署名を行った。 4月の北朝鮮によるミサイル発射及び5月の北朝鮮による核実験実施の前後には、日米同盟に基づく連携の下、日米間で緊密に意見交換が行われた。3月、ハーグ(オランダ)で開催されたアフガニスタンに関する国際会議に際して行われた日米外相会談において、中曽根外務大臣から、北朝鮮によるミサイル発射は地域の平和と安定を損なうものであり、国連安保理決議違反であって容認できない、関係国の働きかけにもかかわらず発射を強行する場合には、新たな決議を採択する可能性も念頭に国連安保理で強いメッセージを発信することが重要である旨述べたのに対し、クリントン国務長官からは、北朝鮮が発射を強行する場合、日米が一致して行動し、強いメッセージを発出することが重要である旨の発言があった。その後、両外相は頻繁に電話会談を行い(4月に4回、5月に1回、6月に1回、7月に1回)、国連安保理決議第1874号の採択を含む北朝鮮問題への対応について、緊密な連携を行った。 7月、プーケット(タイ)におけるASEAN関連外相会議に際して行われた日米外相会談においては、中曽根外務大臣から、北朝鮮問題、アフガニスタン・パキスタン情勢、気候変動・エネルギーなどの日米協力が進展しており、日米同盟を重層的に強化していきたい旨述べたのに対し、クリントン国務長官から、日米間の協力は非常にうまくいっており、日米同盟を更に強化していく必要があるとして、北朝鮮によるミサイル発射及び核実験に対する国連安保理決議の採択に至る日米協力に言及しつつ、このような協力を更に進めていく必要があるとの認識が示された。 9月に就任した岡田外務大臣は、就任直後に出席した国連総会に際してクリントン国務長官と外相会談を行った。同会談において、クリントン国務長官から、日米同盟は米国外交の礎(いしずえ)であり、アジア太平洋地域の平和と繁栄の基礎である、歴史的に強固な日米関係の幅を広げ、更に深いものとしていきたい、いろいろな問題についてはパートナーシップの精神に基づいて考えていきたい旨述べ、岡田外務大臣から、今後、30年、50年以上先に持続可能な、より深い日米関係を作っていきたい、そのために目の前にある様々な課題についてお互いに議論しながら解決していきたい旨応答した。両大臣は、日米安保、北朝鮮、アフガニスタン・パキスタン、気候変動及びイラン情勢についても意見交換を行った。 11月のAPEC閣僚会議の際にシンガポールにおいて行われた日米外相会談において、両大臣は、直後に予定されているオバマ大統領の訪日の際には、2010年が現行の日米安全保障条約締結50周年であることを念頭に、日米同盟を更に深化させることが重要であると確認するとともに、在日米軍再編を含む日米関係、北朝鮮、APEC、ASEANを含むアジア太平洋地域情勢、アフガニスタン、イランを含む地球規模の課題について意見交換を行った。 2010年1月にハワイにおいて行われた日米外相会談では、両大臣は、普天間飛行場の移設については真剣に取り組むことが重要であるが、日米間には協力して対応すべき重要な課題がほかにも数多くあり、それらについてもきちんと対応していく必要があるとの認識で一致し、普天間問題についてお互いの立場を確認した上で、現行の日米安全保障条約締結50周年に当たる2010年に、これから30年、50年、日米同盟が持続可能となるよう、同盟深化のための協議プロセスを開始した。また、対アフガニスタン支援、イラン核問題、北朝鮮問題、ミャンマー情勢、気候変動、核軍縮・不拡散等について積極的かつ建設的な議論を行った。さらに、1月19日には、日米安全保障協議委員会(「2+2」)の閣僚による共同発表を発出し、二国間関係はもとより、アジア太平洋地域や地球規模の課題における日米協力を強化し、日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させていくことを確認した。 日米外相共同記者会見に臨む岡田外務大臣(左)とクリントン米国国務長官(2010年1月12日、米国・ハワイ) ハ 戦略対話 日米両国は、地域・国際社会が直面する諸課題について、中長期的観点からの情勢認識や共通戦略の調整の場として、戦略対話を行っている。4月にはキャンベラ(オーストラリア)で日米戦略対話高級事務レベル会合を開催し、日米関係、北朝鮮を含むアジア情勢、アフガニスタン・パキスタン、イラン、国連安保理改革等について議論を行うとともに、本協議を継続していく重要性を再確認した。6月には東京で次官級の日米戦略対話を実施し、日米関係のほか、中国、ミャンマーなどのアジア太平洋地域情勢、アフガニスタン・パキスタン、イランなどの中東情勢、国連安保理改革、核軍縮・不拡散などの地球規模の課題について率直な意見交換を行い、国際社会が直面するこれら諸課題に日米で共に対処し、日米同盟を重層的に強化していくことで一致した。 また4月及び9月に、アジア太平洋地域における平和と安定の促進という共通の戦略的利益を有する、日本・米国・オーストラリア3か国による、日米豪戦略対話高級事務レベル協議及び第4回 日米豪TSDを開催し、3か国の連携と協力の拡大に努めた。 (2)日米経済関係 今日の日米経済関係は、かつての摩擦に象徴される関係から、建設的な対話を通じた協調の関係へと変ぼうを遂げ、二国間の経済関係のみならず、アジア太平洋地域経済、世界経済の諸課題、さらに地球規模の課題に対して、日米両国が緊密に連携するなど、経済分野における日米協力は大きく広がっている。1月に発足したオバマ政権との間でも、こうした経済分野における日米協力は着実に進展している。 二国間の経済関係については、例えば、2月の首脳会談において両首脳は、クリーン・エネルギーや省エネルギー分野で、日米協力を具体化させるための協議を開始することで一致し、11月の首脳会談においては、国立研究所間の共同活動、島嶼(しょ)(沖縄・ハワイ)地域の経験共有のためのタスクフォースの設置、スマートグリッド分野での情報共有・標準開発などの当面の共同取組分野を特定する「日米クリーン・エネルギー技術協力に関するファクトシート」を発出した。また、オバマ大統領が推進する米国の高速鉄道計画に関連して、2月の首脳会談において、この分野での日米協力を探求することとなり、11月の首脳会談後の総理大臣主催夕食会では、鳩山総理大臣からオバマ大統領に対し、日本の新幹線等について紹介した。さらに航空分野では、12月の日米航空協議において、2010年の増枠を踏まえた羽田、成田路線の輸送力に関して日米両国航空当局間で合意に達するとともに、日米航空関係の更なる自由化に向けた新たな枠組みの内容について大筋合意が得られるなど、意義深い成果があった。一方、2010年1月の外相会談では、クリントン国務長官から、日本のエコカー補助金制度が米国車を排除しているとして、米議会での懸念が高まっているとして問題提起があり、日米間で連絡を密にしていくことで一致した。 アジア太平洋地域経済については、特に、2010年及び2011年のAPEC議長を日米が順に務めることを踏まえ、11月の日米外相会談において、APECの将来の方向性についても日米間で協議していくことで一致したほか、同月の日米首脳会談においても、APECの成功とアジア太平洋における新たなビジョン作りに向けて日米間で連携していくことで一致するなど、日米間の協力を進めることを確認した。 世界経済の諸課題については、2008年の世界経済・金融危機後の世界経済情勢を踏まえ、2009年2月の首脳会談では、世界経済の回復に向けて全力を尽くしていくことで一致した。また、いわゆる「バイ・アメリカン条項」を含む米国再生・再投資法が成立した直後の同会談で、日米両首脳が世界経済の回復に向け、保護主義への対抗は日米の重大な責務であることを確認することができたことは重要であった。9月の首脳会談では、世界経済の回復を確実なものとし、その持続可能な成長を実現するため、緊密に連携していくことで一致したほか、11月の日米首脳会談において、G8/G20を通じた世界経済の回復を含め、日米間で協力が進んでおり、これを更に進めていくことが望ましいとの点で一致した。 地球規模の課題については、特に気候変動問題について、9月の外相会談において先進国就中(なかんずく)日米両国が指導力を発揮していく必要があることで一致し、同月の首脳会談においても、COP15に向けた国際交渉を進めるために、緊密に協力していくことで一致した。11月の首脳会談では、「気候変動交渉に関する日米共同メッセージ」を発出し、COP15の成功に向けて、日米両国があらゆるレベルで関与していく決意を表明するとともに、COP15の場においても、日米両国は緊密に連携した。その後の2010年1月における外相会談では、多くの国からCOP15においてまとめられた「コペンハーゲン合意」への支持を得ることが重要であるとして、日米間の協力を進めていくことで認識が一致した。 日米間の経済対話としては、双方向の対話である「規制改革及び競争政策イニシアティブ」に取り組み、7月の首脳会談に向けて両首脳への第8回報告書を公表した。また、10月にはワシントンで「日米貿易フォーラム」を開催し、貿易及び貿易関連の問題について意見交換した。 日米貿易関係:「摩擦」から「協調」へ ●「摩擦」から「協調」へ 日米経済関係は、米国の貿易赤字に占める対日比率の低下、投資関係の強化、相互依存関係の深化、WTOによる紛争解決メカニズムの整備等により、かつての摩擦に象徴される関係から建設的な対話を通じた協調の関係へと変ぼう。 (3)米国情勢 イ 政治 1月、米国が深刻な経済危機に直面する中、オバマ大統領が就任した。オバマ大統領は、大統領選挙における勝利及び政権発足時の危機的状況を、大胆な「変革」(change)を実行するための好機としてとらえ、深刻な経済危機やアフガニスタンとイラクで続く戦争への対応といった当面の課題への対処のみならず、医療保険制度改革やグリーン・ニューディール政策といった大規模な改革を伴う野心的な政策目標を追求した。 就任約1か月後の2月には、総額7,870億米ドルに上る史上最大規模の景気対策法(米国再生・再投資法)を成立させ、最初の大きな成果を上げたのを始め、金融・住宅市場の安定化や米大手自動車メーカーの再建策といった、経済危機への緊急対応策を次々と打ち出した。また、医療保険制度改革、気候変動・エネルギー対策、教育改革、財政再建といった重点課題を政権の優先課題として提示し、改革実行に向けて議会に超党派の協力を呼びかけるとともに、医療保険制度改革、温室効果ガス削減のための排出量取引制度導入、金融機関に対する監視強化を求める金融規制強化等の改革という3大改革法案の年内成立を目指した。 米国議会においては、上下院とも民主党が多数党の地位にあり、共和党の支持がなくとも法案を通過させることが可能な議席数を確保していたが、議会は党派色を強め、主要法案の成立は難航した。 そのような中で米国における失業率は10%を上回り、雇用情勢は厳しさを増した。オバマ政権は当初、米国再生・再投資法の成立により、失業率の上昇を8%程度に抑えられるとしていたが、6月には失業率が9.5%を記録し、10月には10%を超えるに至った。雇用・経済政策に対する国内の不満等を受けて、政権発足100日目ごろまで60〜65%と比較的高い水準で安定していた支持率は徐々に低下し、 12月には50%前後で推移するようになった。2010年1月のマサチューセッツ州連邦上院特別選挙の結果、上院における安定多数 (60議席)を喪失したことは、医療保険制度改革法案の成否を始め、今後の政権の政策実現や中間選挙に向けた動向に多大な影響を及ぼす可能性が高く、オバマ大統領の政権運営は厳しい局面を迎えている。 外交面において、オバマ大統領は、米国の国際的指導力の再生を目指して、国際協調を重視した外交・安全保障政策を志向するとともに、アフガニスタン・パキスタン、不拡散(含むイラン核問題)といった米国が抱える当面の課題のみならず、「核兵器のない世界」の追求、気候変動問題への積極的な対応といった自らの信念に基づく政策も推進した。12月、オバマ大統領は、就任以来、多国間主義と対話を中心とした外交及び国際協調を重視し、特に、「核兵器のない世界」に向けた目標を示し、世界的核軍縮に向けた機運の強化に貢献したことを評価され、ノーベル平和賞を受賞した。 ロ 経済 (総論) 2007年夏頃から、いわゆるサブプライム・ローン問題が顕在化し、2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻に代表されるように、多くの大手金融機関の経営が深刻化した。これを受け、10月には緊急経済安定化法が成立し、総額7,000億米ドルの不良債権買取プログラム(TARP)による公的資本注入や大手保険会社AIGの実質公的管理といった措置がとられるなど、政府による金融機関支援が進められた。また、FRBが12月にフェデラルファンド(FF)レートの目標値を0%〜0.25%に設定して以降、実質ゼロ金利政策が維持されている。金融機関による与信機能の低下は消費・投資の低迷等といった形で実体経済にも大きく影響し、GDPの実質成長率は2009年の第1四半期にマイナス6.4%(年率換算、前期比)まで悪化した。2009年の後半には政府による景気刺激策の効果により、住宅市場等で回復の兆しが見られ、第4四半期の実質GDP成長率(第一次推計値)は5.7%と前期比大幅改善となったが、自律的な景気回復には時間を要するとの見方もあり、予断を許さない状況が続いている。 (各論) 2月にオバマ政権は、金融機関の危機的状況に対し、主にTARP資金を財源として、ストレステスト(注1)の実施、資本の不十分な金融機関に対する資本注入、住宅ローン条件の見直しによる住宅購入者支援、ターム物資産担保証券貸出制度(TALF)(注2)の拡充等を盛り込んだ金融安定化計画を発表した。その後、5月に発表されたストレステストで、資本不足を指摘された銀行は全部で10行、資本不足額は総額746億米ドルと、当初の予想より少ない結果となり、資本不足を指摘された金融機関は相次いで増資することとなった。市場ではこれをもって金融危機は一応の終結を見たとの見方から、株価は上昇傾向にある。金融市場の安定化も背景に、大手金融機関は公的資金の返済を相次いで実施した。現在議会ではFRBの権限強化を含む金融規制改革に関する法案が審議されており、包括的な金融規制監督システムの構築を目指している。 悪化する実体経済に対し、2月にオバマ大統領は減税措置及びインフラ投資等からなる総額7,872億米ドルの米国再生・再投資法(ARRA)を成立させ、今後2年間で350万人の雇用の維持・創出を目指す旨を表明した。一方、失業率は10月に10%を突破するなど、高い水準が続いており、12月にオバマ大統領は雇用対策を柱とする追加的な経済対策の実施を発表し、議会で約1,550億米ドル規模の法案が審議されている。 2009年春から、米国議会では医療保険制度改革に着手した。米国の無保険者は4,000万人を超えるとされている。改革法案は公的保険プランの導入も視野に議会で審議されてきたが、共和党の反対や、民主党内でも公的保険プランや財源をめぐる対立により審議は難航している。オバマ大統領は、共和党の支持を取り付けるため、2010年2月に民主・共和両党指導部による超党派会合を開催したものの、歩み寄りは見られず、改革法案成立の見通しは不透明な状況にある。 米国再生・再投資法内訳 (注1) ストレステスト:FRBが2月から大手金融機関19行に対し、経済状況が「ベースライン」シナリオから乖離した「より厳しい(More Adverse)」シナリオに陥ることを前提とし、各行の貸出資産等を評価した結果の資本水準を査定し、資本不足が懸念される金融機関に対し、公的資本注入も含め、増資を求めるもの。 (注2) TALF(Term Asset-Backed Securities Loan Facility):消費者ローン、自動車ローン、学生ローン等のローン市場活性化のために、ニューヨーク連邦準備銀行による資産担保証券(ABS:Asset-Backed Securities)を担保とする融資制度。