第4節 欧州 【総論】  日本と欧州は、民主主義、人権、法の支配等の基本的価値を共有するとともに、国際社会の安定と繁栄に向けて主導的な役割を果たす上での戦略的パートナーである。国連安全保障理事会常任理事国かつG8のメンバーでもある英国、フランス、G8メンバーであるドイツ、イタリアをはじめ、欧州各国との間で、二国間関係を一層強化し、協力、協調を進めていくことが引き続き重要となっている。また、政治・安全保障、経済の面で国際社会における存在感をますます増大させている欧州連合(EU)や、冷戦後、欧州・大西洋地域を越えた地域での平和と安定に不可欠な役割を果たしている北大西洋条約機構(NATO)との間で、政治対話・協力を進めていくことは、日本が国際社会の中で主導的な役割を果たしていく上で、これまで以上に重要となっている。さらに、日本は、中・東欧、バルト諸国との間で良好な関係を基盤として、政治的安定と経済的繁栄を達成する努力を支えていくため、一層の対話と協力を進めている。このように日本と欧州諸国との間で、幅広く緊密な関係を促進し、政治的、経済的、また文化的交流が促進されるよう努めていくことがますます重要になっている。  1月、安倍総理大臣は英国、ドイツ、ベルギー及びフランスを訪問し、各国及びEUの首脳と会談した。また、日本の総理大臣として初めてNATO本部を訪問した。同じく1月、麻生外務大臣が、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー及びスロバキアを訪問し、各国の首脳や外相と会談した。 ■写真■ ブルガリア国立スポーツアカデミーに設置される土俵(草の根文化無償による供与)の引渡式に出席する麻生外務大臣(1月11日、ブルガリア)  5月には、麻生外務大臣が、日・EUトロイカ外相協議、V4+1外相会合(注1)、アジア欧州会合(ASEM)外相会合に出席し、またスペインを訪問して欧州諸国との関係強化に弾みがついた。6月には、安倍総理大臣がG8ハイリゲンダム・サミットに参加するためドイツを訪問して、G8各国及びEUの首脳と会談し、気候変動をはじめとする様々な分野における協力を確認した。また、グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバからなる地域協力の枠組み(GUAM)との間でも、日本を加えた形で、6月の外相級会合等を通じ、対話を強化している。  一方、欧州からも、プローディ・イタリア首相(4月)、メルケル・ドイツ首相(8月)、デ・ホープ・スケッフェルNATO事務総長(12月)など、要人の訪日が相次いだ。このように年間を通じて間断なく行われた欧州各国、機関との会談を通じ、日欧相互から、協力関係の強化のメッセージが発せられた年となった。 ■注釈■ (注1)チェコ、ハンガリー、ポーランド、スロバキアの協力の枠組み(V4:ヴィシェグラード4)に日本を加えた枠組み。