平成19年版(2007年)外交青書の刊行に当たって


 私は、2006年1月20日の国会における外交演説で、「我が国外交の目指すところを論 じ、国内外に伝えていくことに私自身努力する」と約束しました。外交政策を強力に推進していく上では、国民の皆様への説明責任を果たし、皆様からより一層の御理解と御支持を得ることが重要です。毎年刊行している外交青書は、過去1年間の日本の外交活動の記録であり、1年前の私の約束を果たすものでもあります。

 特に今年の外交青書は、 1957年に第1号を刊行してから区切りとなる50号目となります。50年前、日本の国連加盟を機に刊行された外交青書では、「国際連合中心」、「自由主義諸国との協調」及び「アジアの一員としての立場の堅持」を日本外交の三本柱として掲げました。その後、ソ連や中国との国交正常化、東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧州共同体(EC:欧州連合(EU)の前身)を通じた地域協力の推進、また冷戦終焉後は、北朝鮮やイランの核開発、米国同時多発テロの発生、アフリカの貧困問題の深刻化、世界貿易機関(WTO)や経済連携協定(EPA)を通じた貿易自由化の流れ等に見られるとおり、日本を巡る国際環境は大きく変わりました。これに応じて、国際社会の中で日本の占める地位や役割も飛躍的に増大しましたが、その間の日本外交の推移については、まさにこの50冊の外交青書が物語っています。

 私は11月30日に、日米同盟や国際協調、近隣アジア諸国の重視に加えて、日本外交の第四の柱を提示するスピーチを行いました。「自由と繁栄の弧をつくる」と題するもので、私は、東南アジアから南アジア、中央アジア、中東、中・東欧、バルト諸国において、普遍的価値を基礎とする豊かで安定した地域、すなわち「自由と繁栄の弧」の形成に取り組んでいく方針を打ち出しました。

 本年の外交青書では、第1章の前半で、この「自由と繁栄の弧」の構想について説明しています。「自由と繁栄の弧」の形成に向けては、本年以降新たな外交努力を傾注していく必要があります。また、後半は、2006年の国際情勢と日本外交の取組について総括しています。ここでは特に、北朝鮮を巡る諸問題に対する対処や中国、韓国との関係強化、国連改革や効率的な政府開発援助(ODA)の実施のための取組について概観しています。第2章以降では、「地域別に見た外交」(第2章)、「分野別に見た外交」(第3章)について記述しているほか、「国際社会で活躍する日本人と外交の役割」(第4章)では、国際機関や企業、非政府組織(NGO)等を通じて日本人が活躍している現状にも触れています。そして、「世論の理解と支持を得た日本外交」(第5章)では、外交政策に関する広報や国民の皆様の声を伺うための取組を紹介するとともに、外交を実施する上で必要となる基盤の整備について説明しています。

 私は、強力な外交の実施のためには、総合的な外交力の強化が必要だと訴えてきていますが、そのためには、国民の皆様に私共のやっていることをよく御理解いただかなければなりません。この外交青書がその一助となることを期待しています。


平成19年3月




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