「自己責任」〜危険の回避〜  2004年4月に発生したイラクにおける邦人人質事件をめぐっては、「自己責任」について活発な議論が交わされました。「自己責任」は、「気合いだー」や「負け犬」などとともに、「2004ユーキャン流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)のトップテンに選ばれるほど、広く人々の間に知られる言葉となりました。  しかし、「自己責任」という言葉の受けとり方は、人によって異なります。中には、「外務省は、邦人保護の職務を放棄するために『自己責任』という言葉を強調しているのではないか」などの誤解が生じたりもしました。  外務省としては、「自己責任」を主張することによって邦人保護という責務を回避しようとしているわけではありません。邦人保護は、政府の重要な任務であると考えており、国民の皆様が海外で危険に遭遇された場合には、その時々の状況を踏まえ全力を尽くして支援する方針に今後とも何ら変わりはありません。実際、イラクにおいて人質事件が発生した際には、人質となられた方々が一刻も早く無事に解放されるよう職員を総動員し、あらゆる外交努力を重ねるなど全力を挙げて取り組んできました。  しかし、外国においては、治安の確保は現地政府の責任であり、日本政府の取り組みにも国によって様々な制約があります。例えばイラクにおいては、テロリストなどの活動により、治安は非常に厳しい状況にあります。大使館員も常にテロの脅威に晒されているため移動を含め行動に大きな制約があります。このような状況の中では、邦人保護業務も極めて大きな制約を受けます。したがって、自らの安全を確保する上では、そもそも可能な限り危険に遭遇しないよう、危険を十分認識し、慎重に行動することが何よりも重要です。そして、このような自らの行動についての判断は、国民一人一人が、自らの責任において行うものであると考えています。  外務省としては、今後とも安全に関する情報の適切な発信に努力してまいります。海外に渡航・滞在される国民の皆様におかれては、外務省の渡航情報も参考としつつ危険を十分認識し、不測の事態に遭わないように慎重に行動して頂ければと考えています。特にイラクの場合のように、外務省の渡航情報において退避勧告が出ている地域に対しては、テロや誘拐などの危険に遭遇しないよう、「退避勧告」を真剣に受け止めて頂き、渡航は絶対に差し控えて頂くようお願いいたします。