麻薬に手を出しては絶対ダメ〜インドの例を中心に〜  最近の世界各国の「麻薬」に対する取締りや罰則は年々厳しさを増しており、死刑など日本とは比較にならないほど重い刑罰を科せらている国も少なくありません。一方で海外における日本人の麻薬犯罪も増加しており、2003年の邦人援護統計では63件、その人数においては69人(そのうちアジア地域だけで46人)に上っています。また、麻薬犯罪は20代〜30代で全体の3分の2以上を占め、その大多数が旅行者です。いまさら言うまでもなく、「麻薬」は洋の東西を問わずそもそも違法なものですが、特に最近インドでは「麻薬(多くの場合マリファナやハシシ)」の所持や密輸未遂などで逮捕される日本人が増加しています。例えば、初めてインドを訪れたバック・パッカーの日本人青年が、マリファナくらいなら大丈夫だろうと安易な気持ちで吸い始め、結果として数か月の滞在中に明らかな依存状態となった上、国内を長距離バスで移動中に警察の検問で荷物の中から数百グラムのマリファナを発見され、麻薬所持の現行犯で逮捕されるという事件も起こっています。  あまり知られていないかもしれませんが、インドでは1985年にいわゆる麻薬取締法が改正され、麻薬の所持・使用等に対する量刑が厳しくなっており、単なる所持でも罰金に加え10年から20年の懲役刑に処せられるなど長期にわたる拘留を強いられる可能性があり、密輸等の再犯では死刑すらあり得ます※1 。また、裁判までの勾留期間の長さや、刑務所での苛酷な生活は日本人の想像以上に厳しいものがあり、量刑が軽い場合であってもその代償はあまりにも大きなものになってしまいます。  また、現在インドに限らず世界中の在外公館の領事担当者をより悩ませているのは、薬物使用の影響によって精神障害を引き起こした旅行者の保護で、その数は逮捕者の数の比ではありません。日本人がホテルで暴れて手に負えないとの通報が増えており、飛行機に乗る寸前の空港ターミナルで突然暴れ出すといったケースもありました。一度このような状況に陥ると自らの力ではその中毒症状からは離脱することは非常に難しく、精神病院等でまず治療を受け、いざ日本に帰国するに際して専門の医師の同行がなければ飛行機に乗れないことになります。このようなことが、どれだけ日本で待っている家族に精神的、金銭的負担を強いることになるものかということに思いを致す必要があります。 「旅の恥は掻き捨て」は海外では通用しません。「麻薬に手を出しては絶対ダメ」です。 ※1 ちなみに、中国において、日本人が麻薬密輸の廉で執行猶予なしの死刑判決を受けた事実もあります(2005年3月29日現在控訴中)。