「日米地位協定」〜刑事裁判手続きの運用改善〜  米軍人や米軍に勤務している米国籍の文民である軍属が公務外で罪を犯し、日本の警察当局が被疑者の身柄を確保した時には、日本の警察当局は、これを引き続き拘禁できることとなっています。これは、被疑者が一般の日本人である場合と同様です。一方、日米地位協定は、米国側が被疑者の身柄を確保した時には、日本側が起訴する時まで米国側が被疑者を拘禁すると定めています。 このように、派遣国側(米国)が被疑者の身柄を確保した場合に受入国側が起訴する時点まで派遣国側(米国)が被疑者を拘禁するという枠組みは、北大西洋条約機構(NATO)の諸国間で締結されているNATO地位協定と同じですから、身柄の引渡しのタイミングについては、他の地位協定と比較しても、日米地位協定の規定は決して受入国である日本にとって不利になっているわけではありません。また、米国側は、自らが被疑者を拘禁している間、日本の警察当局による捜査活動に対して全面的な協力を行っています。ちなみに、米国が韓国と締結している米韓地位協定では、被疑者の韓国側への身柄の引渡しが起訴時に行われるのは、12種類の凶悪な犯罪の場合に限られており、それ以外の犯罪については起訴され、判決が確定した後になっています。  さらに、日米両国間では、1995年に沖縄県で発生した少女暴行事件を受け、殺人または強姦という凶悪な犯罪の場合には、被疑者の身柄を起訴より前の段階で引き渡すよう日本側が米国側に対し要請できる仕組みを作りました。この合意(刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意)に基いて、起訴前に身柄の引き渡しが3回実現しています。このように受入国が被疑者の身柄の引渡しを起訴前に要請できる仕組みに基づいて何度も実際に起訴前の身柄引渡しが行われている地位協定は、日米地位協定以外にはありません。この点で、むしろ日米地位協定は他の地位協定と比べてもっとも受入国側に有利であると言えます。また、2004年4月2日の日米合同委員会では、日米間の捜査協力の強化等に関する合同委員会合意が作成されるなど、日米間の運用改善に向けた取組が進んでいます(内容については本文参照)。 このほか、日米地位協定のQ&Aについては、外務省ホームページでも掲載されています。 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/qa.html を参照。)