東アジア共同体(EAc)とは?  最近「東アジア共同体(EAc※1 )」という言葉が政府関係者、ビジネス界、学界、シンクタンクなどの間でよく口にされています。EAcについて議論されるようになった背景には、この地域の急速な経済成長に伴って地域内の交流が急増したことでその重要性が認識されるようになったこと、また、金融危機への対処やテロや国境を越える問題への対応には地域全体としての協力が不可欠であるとの理解が広まったために、幅広い分野での機能的協力※2 が進んでいることなどが考えられています。  EAcの参加国の範囲はどこまでか、EAcが実体としてどのような機能を持つべきものなのか、例えば欧州連合(EU)と同様の機能を持つ統合体を想定しているのか、といったことについては、現時点では、まさにその概念やあり方についてASEAN+3(日中韓)を中核とする関係国や関係者の間で議論されているというのが現状です。  日本は、日本が属する東アジア地域で、このような協力関係が進展して重層的な連携が深まっていくことは望ましいことと考えており、EAcの形成に向けた動きを基本的には歓迎しています。そして、そのための様々な協力を行っていくとともに、EAcのあり方についての理論的な整理を行うための議論にも貢献していく考えです。その際には、(ア)東アジアの多様性を踏まえつつ、域内統合のダイナミズムを一層高めるためには、制度的枠組※3 の構築から始めるのではなく、まずは機能的協力を積み上げていくべきであること、(イ)東アジアにおける共同体形成がASEAN+3を中核としつつ他の地域パートナーの参加も得て「開かれた地域主義」として包含性・開放性・透明性が確保されるべきであること※4 、(ウ)これらの協力が民主主義、人権、市場経済、世界貿易機関(WTO)などにおける普遍的ルールや価値に則って推進されるべきであること、の3点が重要と考えています。 ※1 EAc:East Asian communityの頭文字をとったもの。 ※2 機能的協力:現時点で推進されている協力分野としては、貿易と投資、IT、金融、国境を越える問題(テロ、不正薬物取引、海賊、密入国、不拡散など)、開発支援、エネルギー、環境保全、食糧、保健、知的財産などが挙げられます。 ※3 制度的枠組:「共同体」を構成するためのルール。例えば欧州共同体におけるローマ条約など。 ※4 日本が「開かれた地域主義」が重要であると考えている根拠は、東アジア地域は、経済発展のレベル、伝統的価値、文化、民族、宗教、言語、政治体制など独特の多様性を有しており、この地域が更なる発展を目指す上では、透明性をもって他の地域のパートナーと連携していくことが重要であり、そうすることで東アジアにおける共同体形成が地域の内外のパートナーから歓迎されるとの考えに基づいています。