【人権に関する国連の政府間フォーラムの動き】  2004年3月から4月にかけて、ジュネーブにおいて開催された国連人権委員会第60会期では、約100本の決議・決定が採択に付されたが、そのうち約4割が投票に付されるなど、依然として政治色・対立色の強さが目立った。同会期では、松宮政務官がステートメントを行い、北朝鮮による日本人拉致問題の早急な解決を求めた。また2003年に引き続き「北朝鮮の人権状況決議」(注17)が採択され、北朝鮮の人権状況について調査・報告を行う「北朝鮮の人権状況特別報告者」(注18)の設置が新たに決定された。日本は共同提案国としてこの決議の作成に貢献するなど積極的に議論に参加し、北朝鮮による日本人拉致問題を人権委員会において正面から取り上げ、各国に印象づけた。また、日本は、基本原則を踏まえ、これまでと同様、「カンボジア人権状況決議案」(注19)を提出し、多数の共同提案国を得て、同決議が無投票により採決された。さらに、他の決議案の審議においても実効性のあるバランスのとれた内容となるよう積極的な努力を行った。  10月から11月にかけて、ニューヨークにおいて開催された国連総会第三委員会においても、投票に付される決議案が全体の3分の1近くに及ぶなど、人権や社会分野での様々な意見や価値観の違いが顕著に表れ、決議案への各国意見の調整に困難をきたす状況に変化は見られなかった。このような中、日本は、意見の対立する地域・諸国の間で橋渡しの役割を果たすなど、建設的な貢献を行うとともに、日本の立場を積極的に主張した。特に、国連代表部大使演説において、新たに任命された「北朝鮮の人権状況特別報告者」を歓迎し、日本人拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害の問題の解明・解決を主張した。