4 国際組織犯罪、薬物 (1)国際組織犯罪  グローバル化や情報通信の高度化、ヒトの移動の拡大等に伴い、国境を越える組織犯罪が一層深刻化しており、これへの的確な対処のための国際的な連携・協力がますます重要になってきている。こうした状況をふまえ、国連、G8、金融活動作業部会(FATF)等において、精力的な取り組みが行われている。  国際組織犯罪防止条約及びその補足議定書は、組織犯罪を防止し、これと闘うための協力を促進する国際的な法的枠組みを創設するものである。同条約について、日本は、2003年5月にその締結に関して国会の承認を得たところであり、2005年1月現在、締結に向けた国内の法整備が進められている。  人身取引については、2004年12月に策定された政府としての包括的な人身取引対策行動計画(注12)に基づき、人身取引の防止・撲滅及び被害者の保護に向けた様々な諸施策を関係省庁との協力の下、鋭意推進している。本計画策定に先立って9月には政府協議調査団がタイ、フィリピンを訪問し、先方政府、関係機関及びNGO等と効果的な協力体制につき協議を行うなど、関係諸国との緊密な連携・協力も着実に進めている。  G8の枠組においては、国際組織犯罪対策上級専門家会合(通称リヨン・グループ)(注13)が、国際組織犯罪対策及び国際協力に取り組んできており、2004年は腐敗問題、サイバー犯罪対策等が議論され、日本もこれに積極的に貢献した。これらの議論の結果は同年5月のG8司法内務閣僚会合の宣言としてまとめられた。  一方、情報技術の急速な発展・普及に伴い、サイバー犯罪の深刻化及びこれに対する国際協力の必要性が高まりつつある点を踏まえ、欧州評議会において、1997年よりサイバー犯罪条約の作成作業が行われ、2001年に採択された。日本は欧州評議会オブザーバーとして本件条約の作成交渉に参加し、2001年11月に署名しており、2004年4月に、国会承認を得たことを受け、2005年1月現在、本件条約の締結に向けて国内の法整備が進められている。  FATFは、資金洗浄(マネーロンダリング)及びテロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進を目的としてOECD加盟国を中心に構成される国際的な枠組みである。資金洗浄対策に関する国際的な基準となる「40の勧告」及び「テロ資金供与に関する特別勧告(9の勧告)」の策定及び実施状況の監視を主な活動としており、2004年10月の全体会合では、キャッシュ・クーリエ(現金運び屋)に関する第9の特別勧告が採択されたほか、ミャンマー、ナウルといったアジア太平洋の非協力的な国・地域への追加的対抗措置の解除などが決定された。日本は、これまで全体会合での議論等に積極的に関与するとともに、非協力的な国・地域に関する取組のためのアジア太平洋地域の検討グループの議長を務めるなど、FATFの中心的なメンバーとして一定の貢献を果たしてきている。 (2)薬物  2004年3月、国連麻薬委員会が開催され、日本は、戦後の覚せい剤対策の成功例などを説明するとともに、今後の東アジアにおける覚せい剤対策の重要性を強調した。  また、薬物関連援助政策などにつき相互理解を深め、政策の調整を図るため、日本はミニ・ダブリン・グループ(注14)において、東南アジア・中国地域グループの議長を務め、東南アジア諸国における支援のあり方について積極的に議論を行った。  さらに日本は、国連による薬物対策のプロジェクトを継続的に支援しており、2004年度には国連薬物犯罪防止オフィス(UNODC)に対して約304万ドルを拠出した。UNODCは、その拠出金からタイ、ミャンマー、ラオス、ベトナム、中国及びカンボジアでの取締り強化プロジェクト(注15)(約35万ドル)や、東南アジア地域で押収された覚せい剤の分析のための東アジアATS取締強化への科学的支援プロジェクト(注16)など(約85万ドル)への支援を行った。