1 多角的貿易体制の強化 【多角的貿易体制の日本にとっての重要性】  戦後の日本は関税及び貿易に関する一般協定(GATT)/世界貿易機関(WTO)によるグローバル・ルールに則った(注1)多角的貿易体制の下での自由貿易を通じて今日の繁栄を築きあげてきており、今後も、その体制を改善・強化・発展させることは日本の発展にとって不可欠である。具体的には、例えば、規律が定まっていない分野で新たなルールを策定することや紛争処理システムを通じて一方的な制裁措置を是正させることなどが挙げられる。日本は、現在行われている「ドーハ開発アジェンダ」(新ラウンド)交渉において、貿易の更なる自由化及びグローバル化に対応した新たなルール作りを目指すとともに、重要性を増しつつある途上国の多角的貿易体制への取り込みと貿易の自由化による途上国開発への貢献を課題としながら積極的に交渉に参加することで、国益にかなった野心的かつバランスのとれた妥結に向けて努力している。  特に今次のラウンド交渉では、これまでのような四極(日本、米国、欧州連合(EU)、カナダ)を中心とした先進国主導ではなく、ブラジル、インド、中国やアフリカ諸国などの発言力も増してきており、また、近年はWTO加盟国の増大(WTO発足時の77か国から現在148か国に増加)による意思決定の遅れや、交渉分野の増大、交渉内容の複雑化など、WTOを取り巻く環境にも変化が見られる。こうした状況にも留意しながら、日本としても積極的に国際経済秩序造りに貢献していくことが必要である。