7 軍備管理・軍縮・不拡散 【総論】  2004年は、国際的な軍縮・不拡散体制が引き続き大きな挑戦に直面した年であり、日本をはじめ国際社会は、その解決のために精力的な努力を展開した。北朝鮮の核問題、イランの核問題、パキスタンの科学者による核関連技術流出などが2004年を通じて焦点となった。  これらの拡散の脅威に対処するため、2004年は、不拡散のための多国間枠組みを強化するための多様な努力が払われた。2月にブッシュ米大統領が不拡散に関する7項目提案を打ち出し、これを踏まえてG8シーアイランド・サミット(6月)において「不拡散に関するG8行動計画」が発表され、IAEA保障措置体制の強化や濃縮・再処理の機材・技術の移転制限等が打ち出された。この提案の内容を具体化するために原子力供給国グループ(NSG)や国際原子力機関(IAEA)で話し合いが行われている。4月には、非国家主体による大量破壊兵器及びその運搬手段関連の活動を違法化して具体的な措置をとるなど、加盟国に国内立法等を求める国連安保理決議1540が採択された。このほか、エルバラダイIAEA事務局長が提唱する核燃料サイクルへのマルチラテラル・アプローチについて、2005年2月、国際専門家グループによる報告書が公表された(注33)。  核軍縮に関しては、日本の核軍縮決議が165票という過去最多の支持票を得て国連総会で採択された。一方、5年に一度開催される2005年のNPT運用検討会議のための最後の準備会合が2004年4月〜5月に行われたが、主として核軍縮をめぐる立場の違いから参加国間の合意が十分に形成できず、運用検討会議の運営に不安材料を残した。  化学兵器禁止条約、生物兵器禁止条約についても、条約の国内実施の促進、機能強化の面で具体的な努力が締約国によって続けられた。  通常兵器分野では、対人地雷全面禁止条約発効後5年にして最初の検討会議が開催され、これまでの成果が確認され、同条約の目的を追求していく締約国の決意が表明された。  日本は新たな安全保障環境の中で、自国の平和と安全を確保するために、引き続き、国際的な軍縮・不拡散体制を強化すべく国際社会の先頭に立って努力していく方針である。特に、唯一の被爆国である日本にとって、核廃絶は国民の悲願であり、上述の核軍縮決議案を1994年以来毎年提出し、また、包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進に向けて国際社会に働きかける等、現実的・漸進的に核軍縮を進めるための努力を継続している。同時に、日本はこれまで二度にわたって「アジア不拡散協議(ASTOP)」(2003年11月及び2005年2月)を開催するなど、アジア地域における不拡散体制の強化を図るべく働きかけを強化している。