【日中関係】  2003年に引き続き、2004年には、両国間での幅広い分野における交流が行われた。上述の11月の二度の日中首脳会談に加え、外相レベルでは、川口順子外務大臣(当時)が4月に訪中し、温家宝総理、唐家セン(とうかせん)国務委員、李肇星(りちょうせい)外交部長と会談したほか、6月に中国・青島で開催されたアジア協力対話(ACD)外相会合の際に日中外相会談を行った。また、町村信孝外務大臣も10月、11月と続けて日中外相会談を行い、間断なき対話を推進した。さらに、9月には河野洋平衆議院議長が訪中し、胡錦濤国家主席、呉邦国(ごほうこく)全国人民代表大会常務委員長、曾慶紅(そけいこう)国家副主席、唐家セン国務委員と会見するなど、活発な往来が行われた。  このほか、日中両国政府の幅広い分野における協力を進めるとともに、各種の政府間協議が行われている(注28)。 (表記注:唐家セン国務委員のセンの文字はCDROM本文中の表記が正しい表記である) <日中経済関係>  日本と中国の経済関係は発展し続けており、2004年の貿易総額は1,680億ドル(前年比26.9%増)となった(5年前の約2.5倍に相当)。輸出入額別に見ると、中国は日本にとって最大の輸入相手国、米国に次いで第二位の輸出相手国であり(注29)、日本は中国にとって最大の輸入先国である(輸出入総額では、第3位)。対中投資は、2004年度上半期の届出ベースで2,948億円(前年度同期比89.2%増)と大幅に増加し、対外投資総額に占める割合も14.6%(前年度同期は6.2%)と大きく拡大している。2001年12月の中国の世界貿易機関(WTO)加盟を経て、中国を加工輸出基地としてだけでなく、多くの日本企業が中国国内市場での展開を目的として中国に進出しており、日中経済の相互補完関係は一層深化している。  中国経済の発展は日本にとり「好機」であり、緊密化の度合いを増す日中経済関係の中で発生し得る経済摩擦を未然に防止することが重要である。日本としては、日中経済パートナーシップ協議(次官級(注30))等の二国間協議の場を活用し、中国における知的財産権問題をはじめ貿易、投資に係る様々な問題につき協議し、また、WTO・対中TRM(注31)においても、中国によるWTO加盟約束の履行状況等につき問題提起を行っている。 <人的交流の促進>  日中両国民間の相互理解・相互信頼の増進のためには、人的交流の拡大・深化が不可欠である。2004年には、日中間の人的往来は400万人規模(訪日者数65万人、訪中者数335万人(中国側推計))に達した。日本は、2004年9月1日より、中国の修学旅行生に対し査証免除措置を実施し、また、9月15日からは中国国民訪日団体観光の対象地域として、当初の北京市、上海市、広東省に加え、天津市、江蘇省、浙江省、山東省及び遼寧省を新たに追加した。同時に、日中間の交流の緊密化に伴い、一層重要となっている領事・治安分野においても当局間協議を実施し、日中協力を促進したほか、日中領事協定締結に向け交渉を進めている。 <新日中友好21世紀委員会(第二回会合の開催)>  2004年9月に新日中友好21世紀委員会(注32)第二回会合が東京で開催され、エネルギー・環境問題及び国民間の相互理解につき議論がなされ、(1)経済・エネルギー、環境分野での友好交流協力、(2)相互理解と信頼の増進、(3)文化交流等につき、「共通認識」として具体的な提言が発表された。 <海洋をめぐる懸案(注33)>  5月末、中国が日中中間線の西側水域で油ガス田の採掘施設建設に着手したことについて、契約鉱区及びその地下構造の一部が中間線の東側水域を含んでいるおそれがあることから、政府は中国側に対し、重大な懸念を表明するとともに、情報提供を累次にわたって要請した。また、日本も、7月より中間線の東側水域において物理探査を開始した。10月末には、東シナ海に関する日中協議を開催したが、中国側から地質構造等につき一般的な説明があったが、情報提供は不十分であり、11月のチリでの日中外相会談において、事前準備を一層入念に行い次回協議を成功させるべきであるとの考え方で一致した。  2004年には、中国の海洋調査船が日本の排他的経済水域(EEZ)において関連手続を踏まずに海洋調査活動を行う事例が増加した。2001年に相互事前通報の枠組みが成立した東シナ海における日本のEEZにおいて、同枠組みに合致しない事例が2004年には計4件確認された(前年は0件)。また、東シナ海以外の日本のEEZにおいては、国連海洋法条約の手続きを踏まずに日本の同意を得ていない調査活動が18件に上った(2003年は8件)。こうした事例については、その都度、現場及び外交ルートを通じて当該活動の即時中止を求め、厳重に抗議するとともに、2004年4月に開催された日中外相会談や町村外務大臣による中国要人との会談をはじめ、海洋調査船に関する日中協議(4月)、東シナ海に関する日中協議(10月)など、ハイレベルを含めた様々なレベルを通じて中国側に対し、国連海洋法条約等の遵守及び再発防止の更なる徹底を求めてきている。  11月10日、先島群島周辺海域の日本の領海を潜水航行した中国原子力潜水艦に関し、12日、町村大臣が程永華在京中国大使館公使(注34)を招致して抗議し、謝罪及び経緯の説明、再発防止を求めた。これを受け、16日、武大偉外交部副部長より阿南在中国日本国大使に対して、当該潜水艦が中国籍であることを確認した旨伝達の上、遺憾の意が表明された。11月のチリでの日中外相会談では李肇星外交部長より遺憾の意の表明を確認するとともに、再発防止について当然であるとの表明があった。さらに、11月のチリでの日中首脳会談においては、小泉総理大臣は再発防止が特に重要である旨述べた。 <対中国経済協力>  近年、中国は沿海部を中心に著しい経済発展を遂げており、それに伴い、日本の対中ODAも大幅な減少傾向にある。その一方で、中国は、内陸部における深刻な貧困問題や環境問題などを抱えており、日本のODAもそうした問題や相互理解促進のための人材育成といった分野を中心に供与されている。2003年度の実績は、円借款966.92億円、無償資金協力51.50億円(以上、交換公文ベース)、技術協力61.80億円(JICA経費実績ベース)であった。