【スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害】  2004年12月26日午前10時頃(日本時間)、インドネシアのスマトラ島沖でマグニチュード9.0の大地震が発生し、これに伴う大規模な津波によりインド洋沿岸の諸国は未曾有の被害を受けた。アジアとアフリカの被災国で21万人以上、26名の邦人のほか欧米を含め様々な国・地域の人々が犠牲となり(2月4日現在)、また被災国の社会基盤は深刻な打撃を受けた。 ▲津波被害地のインドネシア・バンダアチェで犠牲者の遺体捜索に従事するマレーシアの警察官(2005年1月 提供:AFP=時事)  日本は、この深刻な被害に対し迅速な対応をとった。12月28日、人道的観点、邦人の被災及び二国間の友好関係などに照らし、当面の緊急対処及び復興のため、必要に応じて3,000万ドル程度の支援を行うことを表明した。また、インドネシア、スリランカ及びモルディブに対して計302万ドルの緊急無償資金協力を供与するとともに、上記3国及びタイに対しテント、浄水器、毛布、発電機、医療品等6,000万円相当の緊急援助物資を供与した。また、国際緊急援助隊として救助、医療及びDNA検体採取鑑定の専門家などのチームを累次被災地に派遣するとともに、自衛隊部隊による捜索・救助・救助物資輸送・医療・防疫活動を行った。ジャパン・プラットフォームをはじめとしたNGOも政府資金を活用して緊急人道支援を実施した。さらに、初動段階における支援を効果的に行う観点から、米国の発意によるコア・グループ(注2) に参加し、主要支援国及び国連との調整に努めた。  2005年1月1日、小泉純一郎総理大臣は日本として資金、人的貢献及び知見の三点で最大限の支援を行うこと、緊急支援措置として当面5億ドルの支援を関係国及び国際機関等に対し無償で供与すること、アジアの一員である日本として、その責任に見合った最大限の支援を差し延べる決意と連帯及び具体的措置を表明するためASEAN主催緊急首脳会議に出席することを発表した。同年1月6日、小泉総理大臣は町村信孝外務大臣とともにジャカルタで行われた同首脳会議に出席し、犠牲者への哀悼の意及び日本自身の被災経験から発する特別な同情の念、国連の緊急支援アピールへの最大限の協力を表明したほか、日本として資金、人的貢献及び知見の三点で最大限の支援を実施していくことを改めて強調した。小泉総理大臣は、資金面では5億ドルのうち2.5億ドルを国連等の緊急アピールに応えるべく関係国際機関を通じた被災国の支援に充て、2.5億ドル相当を深刻な被害を被った国々に対し二国間の無償資金協力として供与すること、人的貢献面では自衛隊を活用した輸送支援や衛生状況改善のための措置を実施すること、知見面では10年前に阪神・淡路大震災があった神戸で2005年1月18日〜22日に開催される国連防災世界会議にインド洋災害に関する特別セッションを設けることを提案した。また、続く1月28〜29日、タイ・プーケットで開催されたタイ政府主催の津波早期警戒アレンジメントに関する地域協力閣僚会議に日本からは、谷川秀善外務副大臣が出席し、日本からの提案に基づいて、暫定的な津波早期警戒システムの運用に向けて、各国・機関が協力する旨が閣僚宣言において表明された。 ▲ガユーム・モルディブ大統領と会談する谷川外務副大臣(2005年1月)  この小泉総理大臣のイニシアティブを受け、政府が一丸となって現在も最大限の支援に取り組んでいる(2月3日現在)。資金面では、小泉総理大臣が発表した2.5億ドル相当(注3)の二国間支援の中から、インドネシアに146億円、スリランカに80億円、モルディブに20億円、それぞれノン・プロジェクト無償を実施することを決定し、1月19日には拠出を完了した。また、谷川外務副大臣が1月11日にジュネーブで開催されたスマトラ沖大地震及びインド洋津波災害に関する閣僚級ドナー会合に出席し、当面6か月間に緊急に必要な支援(総額9.77億ドル)を要請する国連緊急アピール等に応え、約60の支援国によって表明された拠出誓約(総額約7.56億ドル)の約3分の1にあたる2.5億ドルを国連児童基金(UNICEF)、国連世界食糧計画(WFP)、国際移住機関(IOM)、国連開発計画(UNDP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、赤十字国際委員会(ICRC)などの関係する国際機関に拠出することを表明し、1月21日までに速やかに全額拠出を完了した。これらは仮設住居の提供、保健・医療、水・衛生、食糧等の分野の支援に加え、特に深刻な被害を受けた子供を保護することが重要であるとの観点に基づく、緊急人道支援に充てられるものである。さらに、草の根レベルでの被災者のため、インドネシア、タイ、スリランカにおいて草の根・人間の安全保障無償資金協力(約1.6億円)を実施した。  人的貢献面では、国際緊急援助隊として計1,600人規模の陸・海・空自衛隊による協力を実施している。被害発生直後の海上自衛隊による捜索・救助活動に加え、航空自衛隊のC-130輸送機1機がスマトラ島で援助物資等の空輸を行っているほか、陸上自衛隊派遣部隊も輸送及び医療・防疫活動などを行うため、ヘリコプターや車両等を積載した海上自衛隊の輸送艦でスマトラ島沖に赴き支援活動を行っている(2月3日現在)。  知見面では、国連防災世界会議においてインド洋津波早期警戒メカニズム構築のために国際機関及び二国間協力を通じた積極的な貢献を行っていく旨表明した上で、ODA(政府開発援助)を活用した日本の防災分野の援助方針である「防災協力イニシアティブ」を発表した。このイニシアティブは、開発途上国の自助努力支援や災害予防の視点を一層強化するとともに、災害の各段階に応じた一貫性のある協力として、日本が震災に関して培ってきた経験や知識、優れた技術(注4)を効果的に活用しつつ、開発途上国との対話を通じて防災協力を積極的に行っていくことを目的としている。  今回の津波で被災国の社会基盤は深刻な打撃を受けており、一刻も早い復旧・復興が求められている。短期的な緊急支援のみならず、国際社会と一体となって中長期的にも継続して支援を行っていくことが不可欠であり、各国ごとの事情を踏まえて関係国、機関とも協調しながら、日本として最大限の支援を行う方針である。さらに、1月11日に、日本は5億ドルの支援以外に、復旧・復興支援として、世界銀行及びアジア開発銀行(ADB)に日本が設立している信託基金を活用して、世界銀行に2,000万ドル、ADBに2,000万ドルの合計4,000万ドルの支援を行うことを表明した。  また、1月13日に行われたパリクラブ会合(注5)では、世界銀行及び国際通貨基金(IMF)が被災国の復興及び資金ニーズに関する完全な評価を実施するまでの間、要請のあった被災国について、対外公的債務の支払いを期待しないこと、及びその評価結果などを踏まえ、更なる措置の必要性を検討することで意見が一致した。  今後も、関係国・国際機関との協調の下、これまでに発表した支援措置を着実かつ効率的に実施するとともに、各国における事情・状況を踏まえて策定される中長期的な復旧・復興計画に基づき、日本として最大限の支援を行っていく考えである。