災害時にこそチャイルド・プロテクション(子どもの保護)活動を  スマトラ沖大地震・インド洋津波で大被害を受けたアジア地域。被災地では、災害発生直後から、世界各国のセーブ・ザ・チルドレンのスタッフによる緊急援助チームが編成され、食糧や物資の配給、被災した子どもたちの保護、漁業や観光業などで生計を失った人たちへの支援を行っています。  セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのスタッフが派遣されたのはスリランカ南部の町、マータラ。美しいビーチが広がるのどかな地域でしたが、津波は一瞬にして多くの人の命を呑み込み、生き残った者の人生もすっかり変えてしまいました。家を壊された多くの人たちが学校や寺院、またはグラウンドに設置されたテントなどに住んでいます。私たちはそうした避難キャンプを訪れ、米や乾燥麺などの食糧、石けんやタオルなどの日用品、鉛筆やノートなどの学用品を届けてきました。  避難キャンプを訪れると、子どもたちが笑顔で駆け寄ってきて、配給物資の積み下ろしなどを手伝ってくれます。しかし、その屈託のない笑顔の裏で津波によるトラウマを抱え、不便な避難所生活で相当なストレスを負っていることがわかります。ある村で出会った少年は津波で母親と兄弟を失ったといいます。彼が握り締めていた3枚の遺体の写真がとても痛々しく思えました。今回の津波で親を失った子どもの数はスリランカだけで3200人以上にもなるのです。  こうした子どもたちの心の傷を癒すには、思いっきり遊ぶことが一番の薬です。私たちはボールや縄跳び、ゲーム、塗り絵、絵本などを避難キャンプに住む子どもたちへ贈り、時には一緒に遊ぶことで、子どもたちが早く普通の生活に戻れるように支援しています。  一方、津波で多くの漁師が船や魚網を失い、ホテルやレストランなどで働いていた人たちも生計を失いました。セーブ・ザ・チルドレンでは、そうした被災者を雇用し、学校や道路沿いにたまった瓦礫やごみを撤去したり、家の再建に必要なブロックを製造するなど、短期的に現金収入を得てもらうプログラムも開始しました。  日本国内でも多くの団体・企業・個人の方々から被災地への支援金が寄せられています。被災地の復興には時間が必要なのです。セーブ・ザ・チルドレンとして今後も、子どもを中心に被災者らを支援し、復興に寄与していきたいと考えています。 執筆:社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 武田和代 ▲物資配給の拠点となっている仏教寺院でスリランカ人スタッフとともに学用品の入ったリュックサックを配る筆者(スリランカ・マータラ州ポルへナ村)