親善大使として開発の現場を訪ねて  現在、私はUNDP※1 の親善大使として各国を視察しています。これまで、カンボジア(1999)、パレスチナ(2000)、ブータン(2001)、ガーナ(2003)、東ティモール(2004)を視察しました。初めは、このような大役を全うできるか不安もありました。しかし、私が親善大使を務めることで、少しでも国際協力を身近に感じてもらえればと思い、一生懸命取り組んでいます。  2003年に訪れたガーナでは、エイズ孤児の多いマンヤクロボ地区を視察しました。そこには、クイーンマザーと呼ばれる女性たちがいて、1人で6人もの孤児を引取って自分の子供と同じように育てていました。ガーナには「1人が富を得たら、それを貧しい人みんなに分け与える」という習慣があるのです。私は、先進国が失いかけている「心の豊かさ」について考えさせられました。また、エイズという深刻な問題を自分たちの手で解決しようと協力しあっている姿にとても感動し、私達としても、更に支援の手を差し伸べていくべきと感じました。  2004年には東ティモールを訪問しました。2002年に独立したばかりで、道路、学校、病院などの基本的なインフラがまだ整っていません。印象的だったのは、こうした環境下でも無邪気に遊ぶ子供たちの笑い声があることです。内紛が絶えなかった時期、子供は外で遊ぶことすらできませんでした。この光景を見て、平和を実感している人も多いでしょう。しかし、実際に子供たちに将来の夢を聞いても返事がありませんでした。子供たちの明るい未来のために、私達もできる限りの支援を行い、様々な産業を根付かせることが早急に必要だと感じました。  子供たちの無邪気さや可愛さは万国共通です。しかし、彼らの生活や未来はとりまく環境によって大きく左右されます。私は同じ子供を持つ母親として、世界の子供たちのために私達が何をすべきか、訴え続けていきたいと思います。  開発援助は、地味で時間がかかるという点で子育てに似ています。結果を出そうと焦らず、その国に相応しい開発を確実に進めていくことが大事です。これからも草の根の目線で見たことや感じたことを分かりやすく伝えて、国際協力の裾野を広げていきたいと考えています。 ※1 国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)は、アフガニスタンのように紛争後の復興を支援したり、開発途上の国や地域が自立できるまでの援助活動を行っている。