現場発で組織の枠を超えてODA改革を推進〜バングラデシュからの報告〜  現在、途上国では十億人以上が日々貧困に苦しんでいます。このような途上国の現場で、日本の関係者がより良い開発援助に向けてどのように取り組んでいるのかについて、バングラデシュを例に紹介させていただきたいと思います。  バングラデシュは、東西パキスタンの内戦を経て1971年に独立しましたが、現在約1億4千万人の人口を抱え、年間の一人当たり国民所得は約400ドル(日本の約90分の1)の水準に留まっています。一般の国民の大多数は病気になっても治療らしい治療が受けられず、子どもは小学校に入っても三分の一が中途退学してしまいます。ダッカなどの都市では、痛々しい物乞いの人たちをよく見かけます。  この国では、日本をはじめ多くの国や国際機関が援助を行っているだけでなく、国内外のNGOの活動も盛んです。近年、途上国政府を中核に、開発事業の関係者が緊密に協力して一層効果的に開発を実現しようという「援助協調」の動きが進む中で、日本も途上国の現場からのイニシアティブで、ODAをより良いものとするための先進的な試みを次々と行っています。  当地では、4年前から日本大使館と国際協力機構(JICA)・国際協力銀行(JBIC)・日本貿易振興機構(JETRO)の各事務所が一体となって運営委員会を組織し、重点セクター(現在は12セクター)毎に作業部会を編成しています。この体制のもとで、無償資金協力、技術協力や円借款など様々な経済協力スキームを統合するセクター別援助方針を現地の主導で作成するとともに、現地の援助調整会合に積極的に参画し、他の援助国・機関との連携を推進しています。これにより、現地の実情を踏まえたより効果的・効率的な援助が可能となり、また日本の経験や技術といった強みも一層活用できるようになりました※1 。  また、現地にいる日本のNGOや企業、国際機関の日本人職員と開発援助勉強会を定期的に開催して、各方面の知見を援助政策に反映しています。さらに、ウェブサイトや各種メーリングリスト、メールマガジンを駆使してネットワークを拡大し、幅広い関係者と情報を共有するシステムを整えています。先方政府との現地での政策協議、国別援助計画の改定作業、世銀との共同セミナーや英国とのハイレベル共同訪問なども、現地を核に本国の協力を得て立案・実施しています。  途上国の開発問題については、日本国内や世界各地の国際会議などで様々な議論が行われていますが、具体的な個々の開発援助は各途上国の現場で日々実施されています。現地の最前線で働く日本の援助関係者として、日本国民の税金により賄われているODAが一層効果を上げられるよう、日々弛みなく改革を進めていきたいと思います。 執筆:在バングラデシュ日本大使館・経済協力班長 紀谷昌彦 ▲2004年11月22日にバングラデシュで行われた日・世銀共同セミナーの様子。日本からは堀口駐バングラデシュ大使ほか、世銀からは吉村副総裁兼駐日代表、ボリトル・バングラデシュ事務所主席エコノミストほかが出席 ※1 このようなバングラデシュでの現地ODAタスクフォース(バングラデシュ・モデル)の取組の詳細については、http://www.bd.emb-japan.go.jp/bdmodel/を参照。