ダルフール・ドナーミッション※1 に参加して  2004年9月、私は、アフリカのスーダン(ダルフール地方)とチャドを訪問しました。この地域は永年にわたる紛争により大規模な人権侵害や難民の発生が報告されており、G8シーアイランド・サミットでも議論されるなど、世界中で注目を浴びている地域です。  外務省職員は、担当する事案に応じて危険な地域を含め世界各地を訪れます。私たちは、そこで課せられた重要な責務を遂行する中で、新しい「出会い」に遭遇することもあります。今回のアフリカ出張も私にとってはまさにそのようなものでした。  私の今回の出張目的は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が主催したドナー・ミッションで日本代表を務めた佐藤アフリカ紛争・難民問題担当大使を補佐するものでした。関係者からのヒアリング、キャンプの視察などを通じ、難民に対して国際社会の支援が向けられる反面、難民が流入した地域にもともといた地域住民には支援が向けられず、結果的に相当程度の生活格差が生まれていること、また、水、たきぎといった限られた資源をめぐる争いから難民と地域住民の間に緊張関係が生じていることなどが問題点として浮き彫りになりました。私たちは、日本の支援(2100万ドル)は地域全体に行き渡るように活用されるべきであると考察し、これはその後の日本の支援方針となりました。  その一方で私が体験した多くの新しい「出会い」において最も強く印象に残ったことは、子どもたちから無邪気な笑顔と、歌と、踊りの歓迎を受けたことでした。なぜなら、生まれた時から、悪い治安状況の中で常に武装勢力の攻撃におびえながら、また、きれいな水や十分な食料すら手に入らない環境で育ってきたスーダンの難民や国内避難民の子どもたちに、日本の子どもと同じような笑顔を見たからです。私は、帰国後、出勤途中の電車の中で、買ってもらった傘の色が気に入らないと母親に文句を言う小学生の姿を見たとき、何とも言えない感覚の相違を感じざるを得ませんでした。  私は、今回のダルフール・ミッションを通じて、世界中の社会的弱者、紛争被害者等にはまだまだ国際社会の支援を必要としているという現実があり、また、そのような状況を作り出している問題を国際社会が一体となって根源から解決していくことの必要性を強く感じました。そこで果たすべき日本の役割は極めて大きいと考えています。私も、一人の日本人、外務省職員として、できる限りの努力をしていきたいと、これまで以上に強く思うようになりました。 執筆:外務省国際社会協力部人道支援室事務官 笹原直記 ▲チャドのイリディミ・キャンプで、スーダン難民の子供に囲まれる筆者(写真中央) ※1 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が主催し、2004年9月23日から28日にかけて、チャド東部及びスーダン・ダルフール地方の難民・国内避難民キャンプを視察したほか、両国政府要人、国連、NGO関係者との意見交換などを行った。参加国・機関は、日本のほか、米国、ドイツ、欧州連合(EU)、アフリカ連合(AU)など。