【海外生活支援】  海外に在留する日本人の数の増加に伴い、日本国民の安全と快適な海外活動を確保するために求められる領事業務も複雑多岐にわたっている。中でも、海外で生活する国民の主な関心が、現地の治安、教育、医療事情であることを踏まえ、外務省では、国民の海外での福利を向上させるための環境整備の一環として、従来から、文部科学省と連携して日本人学校及び補習授業校に対する支援を行っている。また、海外における伝染病流行等の情報(医療情報)についても、各国政府や世界保健機関(WHO)などの情報を基に、渡航情報(スポット情報や危険情報)等を通じて広く情報提供に努めているほか、医療事情の悪い熱帯地域を中心とした開発途上国に在留する日本人の健康相談のために、国内医療機関の協力を得て、1972年から巡回医師団を派遣しており、2003年には40か国に派遣した。近年、こうした取組に加え、年金保険料の二重払い及び期間通算の問題の解決、外国運転免許証の取得手続の簡素化等、新たな分野における施策も、関係国との協議を通じて推進しており、年金保険料の問題については米国、韓国との間で社会保障協定が署名されたほか(2004年2月)、運転免許試験の相互免除については9月にイタリアとの間で交換公文に署名した。また、海外において刑に服している日本人受刑者の日本における社会復帰促進等を目的とする受刑者移送条約が6月に発効した。  1998年の公職選挙法の一部改正により、海外においても国政選挙に参加することが可能となったが、この在外選挙に関する事務も国民の権利実現の観点から重要である。2000年6月の衆議院議員総選挙及び2001年7月の参議院議員通常選挙に続き、2003年11月には、衆議院の解散による総選挙が実施され、約1万1,700人の海外在住の日本人が投票を行った。海外で投票するためには、事前に在外選挙人名簿に登録することが必要であり、在外公館では在外選挙制度の広報とともに、館員が在外公館から遠隔の地等に居住する在留邦人のために出張して登録申請を受け付けることにも努めている。  また、6月には、在外選挙制度の利便性を向上させる等のため、公職選挙法の一部改正が行われた。2004年4月1日以後に公示または告示される国政選挙については、在外公館投票と郵便投票の選択制が導入されるほか、同年1月1日からは、本人以外の同居家族による登録申請が可能となった。 TOPIC 発展する在外選挙  在外選挙制度(*)が創設されたのは、1998年のゴールデンウイーク。それから5年あまりの間、通算で3回の在外選挙を実施しました。まだまだ歴史が浅いと言えるでしょう。2002年10月1日現在の在外有権者数は約66万人と推定されますが、在外選挙への参加者数は少ないのが現状です。  海外に住む日本人が在外選挙に参加するには、在外公館の管轄区域内に継続して3か月以上住んでいることなどの一定の条件があります。特に重要なのは、あらかじめ日本国内の選挙管理委員会より在外選挙人証を取得しておくことです。この在外選挙人証がなければ、いかなる在外選挙の投票も行うことができません。  一方、国民にとっての利益を考え、在外選挙をより便利なもの、より身近なものとすべく、改めるべきは改めていくことも行政にとっては大切なことです。こうした観点から、2003年の公職選挙法の一部改正においては、在外選挙制度も改正の柱とされました。例えば、国外にいる有権者が、在外公館投票と郵便投票のいずれかを選択できること、一時帰国中の場合、登録地の選挙管理委員会において国内投票日の当日に投票ができること、あるいは投票開始日が公示または告示の翌日からとなるため、日本より時差の進んでいる国・地域に在住する有権者にとってより公平な選挙の機会が得られることなどです。さらに、在外有権者のニーズに沿い、シンガポール、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、サンパウロなどの大都市に所在の公館においても、在外公館投票ができるよう所要の準備を進めています。  改正やその運用の緩和と拡大を推し進めるにあたり、国民の皆様方の声が反映されるべきことは言うまでもありません。今後とも、皆様方の要望を十分に踏まえながら、こうした利便性の向上の措置を講じることにより、より多くの在外有権者の方々が在外選挙に参加できるよう努めていきたいと思います。 (*)国政選挙のうち、比例代表選出議員選挙に限る。 在外選挙の仕組み