【原子力の平和的利用:国際原子力機関(IAEA)による保障措置の強化・効率化】  国際原子力機関(IAEA)保障措置(注15)は、国際的な核不拡散体制の実効性を確保する上でその中核をなす制度である。核不拡散体制の維持・強化を主要外交課題の一つに掲げる日本は、保障措置強化の分野でも積極的な貢献を行ってきた。特に、日本は、できる限り多くの国が保障措置の強化のための「追加議定書」(注16)を締結することが重要との認識の下、2002年12月に東京で開催された「IAEA保障措置強化のための国際会議」の成果を踏まえ、「追加議定書の普遍化」を積極的に推進してきた。また、2003年9月の第47回IAEA総会においては、保障措置予算を中心とする通常予算の大幅な増加が決定され、日本としても、保障措置の財政的基盤を確保することは、保障措置の強化に資するものと考え、この予算増を受け入れた。一方、日本は、保障措置の効率化も重視しており、従来型の包括的保障措置と追加議定書に基づく保障措置との合理的かつ有機的な統合を目指す「統合保障措置」(注17)の適用、それに伴う保障措置受入に伴う負担や経費の軽減の実現に向けて努力するとともに、IAEA事務局に対しても保障措置活動の一層の効率化と経費削減を求めてきている。 (注15)IAEA保障措置:IAEAが各国と個別に締結した保障措置協定に基づき、核物質等が軍事目的に利用されていないことを確保することを目的として、「査察」を中心とした検認活動を行うもの。核兵器不拡散条約(NPT)締約国たる非核兵器国は、同条約第3条に基づき、IAEAとの間で保障措置協定を締結することが義務付けられている。 (注16)追加議定書:IAEAとの保障措置協定に追加してIAEAとの間で締結する議定書。追加議定書の締結により、IAEAに申告すべき原子力活動情報の範囲や「補完的アクセス」による検証対象場所を拡大する等、IAEAの権限が強化される。2003年12月末現在、79か国が署名し、38か国で発効している。 (注17)統合保障措置:従来型の保障措置と追加議定書に基づく保障措置と合理的かつ有機的な統合を図る概念。具体的には追加議定書の実施を通じ「未申告の原子力活動及び核物質の不存在」の結論がIAEAにより得られた国を対象に、従来型の保障措置に基づく通常査察を合理化する等により保障措置を効率化するもの。