7 軍備管理・軍縮・不拡散 【総論】  2003年は、国際的な軍縮・不拡散体制が大きな挑戦を受けた年であり、日本をはじめ国際社会は、その解決のために精力的な努力を展開した。北朝鮮、イラク等の行動は、大量破壊兵器等の拡散の観点から、国際社会に深刻な懸念を呼び起こした。  北朝鮮は、1月、核兵器不拡散条約(NPT)からの脱退を表明し、その後、核兵器保有を強く示唆する発言を繰り返した。これは、日本の安全保障に直結する問題であり、また、国際的な核不拡散体制への重大な挑戦と認識された。日本は、国際原子力機関(IAEA)理事会、NPT運用検討会議準備委員会等多国間の場で米韓とも密接に協力しながら、北朝鮮の核問題に関し明確なメッセージを出すよう努め、また、8月及び2004年2月に開催された六者会合では核問題の平和的解決のために努力している。  イラクの大量破壊兵器開発疑惑については、日本を含む国際社会の平和的解決に向けた外交努力にもかかわらず、イラクは、かつて実際に大量破壊兵器を使用していた上、以後も多くの大量破壊兵器に関する疑惑が解消されることなく、査察への非協力をはじめ関連安保理決議の重大な違反を継続的に犯してきた。このような中、3月、米英軍等が関連安保理決議に基づいて国際の平和と安全を回復するために武力行使に踏み切った。  また、イランの核問題については、日本を含む国際社会が粘り強く働きかけた結果、12月18日、イランがIAEA追加議定書に署名する等の進展も見られた。さらに、翌19日、リビアが、米英の働きかけを受けて、すべての大量破壊兵器計画の廃棄及び、国際機関による即時の査察受入を決定したことは、大量破壊兵器等の軍縮・不拡散を進める上で、大きな意義を有する。  懸念国への拡散の問題に加えて、2001年9月の米国同時多発テロを契機に、テロ組織による大量破壊兵器等の取得や、使用の問題が、深刻な脅威として受け止められるようになった。懸念国やテロリストは、抑止が効かない、あるいは、効きにくいという意味で新たな脅威として認識された。このような新たな脅威に対処するためには、各国が個別に輸出管理体制の強化を図ることはもちろん、大量破壊兵器等に関する既存の国際的な軍縮・不拡散体制を強化し、普遍化するとともに、新しい取組が必要となる。このような取組として、2003年5月にブッシュ米大統領が提唱したものが、既存の国際法、国内法の範囲内で関係国が共同して拡散を阻止するための枠組みである「拡散に対する安全保障構想(PSI)」である。その後、PSIの基本原則である阻止原則宣言の発出、各種阻止訓練の実施といった精力的な取組が参加国間で行われてきている。日本は11か国の原参加国の一員として、積極的に参加している。また、6月のエビアンにおけるG8先進国首脳会議でも、テロ組織にとって比較的入手し易い放射線源や携行式地対空ミサイル(MANPADS)の管理・規制強化が打ち出された。2004年に入り、パキスタンからの核関連技術の流出が明らかになりつつあるが、こうした事情をも背景として、2月には、ブッシュ米大統領が、PSIの拡大や、国連安保理による不拡散決議の迅速な採択を求める等の大量破壊兵器の不拡散に関する7項目提案を行っている。  2003年は、通常兵器の分野でも、紛争終結後の復興・人道支援を阻害する大きな要因ともなっている小型武器や不発弾についての取組に進展があった。特に、小型武器については、7月、日本の猪口軍縮代表部大使が議長を務めた国連小型武器中間会合が開催された。  日本は新たな安全保障環境の中で、自国の平和と安全を確保するために、引き続き、国際的な軍縮・不拡散体制を強化すべく国際社会の先頭に立って努力していく方針である。特に、唯一の被爆国である日本にとって、核廃絶は国民の悲願であり、そのために核軍縮決議案を国連総会に提出し、また、包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進に向けて国際社会に働きかける等、現実的・漸進的に核軍縮・不拡散を進めるための努力を継続している。 大量破壊兵器、ミサイル及び関連物資等の軍縮・不拡散体制の概要