5 国連 【総論】  グローバル化が急速に進展する中、21世紀の国際社会が直面している諸課題への取組を進めるにあたり、唯一の普遍的かつ包括的な国際機関である国連の果たす役割はますます増大している。国連は、傘下の諸機関とともに、開発、人権、女性、児童、感染症、環境、国際組織犯罪、難民、文化などの問題について、世界の政府や非政府組織(NGO)が集い、討議し、規範(世界的なルール)を作るための場となっている。また、安保理は、自らの授権による多国籍軍の設立等(湾岸戦争時の多国籍軍、アフガニスタン治安支援部隊等)を通じて軍事面の役割を拡大しているほか、国連平和維持活動(PKO)も停戦監視を中心とした伝統的な平和維持活動(エチオピア・エリトリア、ゴラン高原)から、民主的統治、復興まで含む活動(東ティモール等)もあり、その活動分野は拡大している。  一方、3月の対イラク武力行使に関して、イラクによる国連査察への協力が不十分であることについては安保理理事国間で一致していたものの、査察継続の是非をめぐって理事国間で意見が割れ、安保理として一致団結できなかったことは、多くの加盟国に対して、安保理をはじめとする国連改革が急務であることを再認識させる結果となった。  また、9月に行われた第58回国連総会一般討論演説には、日本から川口外務大臣が出席し、その演説の中で、核問題や拉致問題などの北朝鮮問題に関する日本の立場を表明し、大量破壊兵器の拡散、テロの脅威に対処するためには国際社会が一致して取り組むことが何よりも重要であることを訴えた。また、「平和の定着と国造り」や「人間の安全保障」の取組の重要性を強調した上で、そうした取組強化のためには、安保理や行財政の改革をはじめとする国連改革が急務であることを訴えた。  2004年2月には、アナン国連事務総長が来日し、小泉総理大臣、川口外務大臣等と会談し、イラク問題をはじめとする国際情勢、国連改革を含む国連のあり方、日本と国連の関係等について率直な意見交換を行った。国連改革に関しては、日本の高い分担率、国連予算の増加傾向、国連事務局の少ない日本人職員数についての日本の不満を率直にアナン事務総長本人に伝達して同事務総長の努力を求め、これらの問題に対する同事務総長の前向きな姿勢を確認し、安保理改革を含む国連改革を早期に実現することについて意見の一致を見た。また、アナン事務総長は、国連事務総長としては初めて国会演説を行い、広く日本国民に対して、イラクの復興をはじめとする幅広い分野での日本の貢献についての高い評価、国際社会の平和と繁栄に向けての日本と国連の一層の協力関係の重要性を伝えた。 ▼アナン国連事務総長との会談に臨む小泉総理大臣(2004年2月 提供:内閣広報室)