【日本の取組】  日本は、テロの防止・根絶には、幅広い分野において国際社会が一致団結し、息の長い取組を継続することが必要であると考えており、上述してきた国際的な努力に積極的に参加してきている。具体的には、CTAG等G8の取組に積極的に参加し、国連、ARF、APEC、ASEM等の多国間の枠組み及び二国間の枠組みを活用しつつ、各国に対し、テロ対策の強化及びこの分野における国際的協力の推進を呼びかけている。また、日本は、テロリストに対する制裁措置を定める安保理決議に基づき、国際社会と協調しながら、ウサマ・ビン・ラーディンやオマルをはじめとするタリバン、アル・カーイダ関係者及びハマス、パレスチナ・イスラミック・ジハード、アル・アクサー殉教者旅団、ラシュカル・エ・トイバ、センデロ・ルミノソ等合計423のテロリスト個人・団体に対し、外国為替及び外国貿易法に基づく制裁措置を実施している。  アフガニスタン内外での米国をはじめとする各国の活動に関しては、テロ対策特別措置法(2001年11月2日施行)に基づき、海上阻止活動に参加する米英軍等の艦船に対する海上自衛隊による艦船用燃料の補給や航空自衛隊による米軍物資の空輸等の支援を行ってきており、海上阻止活動の実効的な遂行等国際的なテロリズムの防止及び根絶のために大きく貢献している。同法は、2003年11月に期限を迎え、臨時国会において、さらに2年間の効力延長が決定された。  また、日本は、開発途上国に対するテロ対処能力向上(キャパシティ・ビルディング)支援に力を入れている。特に東南アジア地域に対しては、この地域におけるテロを抑止し、安全及び安定を確保することは日本の繁栄にとっても重要であることから、重点的に支援を実施している。具体的には、〔1〕テロ資金対策、〔2〕出入国管理、〔3〕航空保安、〔4〕税関協力、〔5〕輸出管理、〔6〕警察・法執行機関の協力、の6分野において、開発途上国から研修員の受入れを積極的に行っている。また、従来から実施している上記6分野に加え、2003年9月には、新しい試みとして、生物・化学テロ発生の際の危機管理・被害対処及びこれらテロに使用される物質の管理等に関する知識・経験の提供・共有を目的とした生物・化学テロ被害対処及び危機管理セミナーを、アジア太平洋諸国を対象として実施した。このセミナーは、2002年10月のAPEC首脳会議の際に、小泉総理大臣より、テロ対処面における危機管理能力向上を目的とした取組を2003年度より5年間実施する旨表明したことを踏まえて開催されたものである。  さらに、日本は、現在ある12のテロ防止関連条約・議定書の締結促進のため、10月に東南アジア地域諸国を対象として、テロ防止関連条約締結促進セミナーを開催した。以上の取組を通じて、日本は、開発途上国に対するテロ対処能力向上支援の分野で、2003年度に総計約280名の研修員を受け入れた。また、開発途上国への専門家の派遣や機材の提供も実施している。  また、日本は、国際テロ対策担当大使を中心として、各国とテロ情勢やテロ対策協力に関する意見交換を行っており、2003年は、2月に米国と、3月にロシアと二国間テロ協議を、11月には日米豪三国間のテロ協議を開催した。また、地域間でも12月にASEAN10か国を東京に招聘して東南アジア地域テロ対策協議を開催し、地域テロ情勢や今後の地域におけるテロ対策協力のあり方につき意見交換を行った。 ▼テロ対策特別措置法に基づき派遣された自衛艦を激励訪問する川口大臣(2004年1月) Column テロ対策特別措置法に基づく協力支援活動に参加して  2003年8月、私はインド洋へ展開中の海上自衛隊派遣海上支援部隊司令部へ赴任した。既に、護衛艦「はるな」、「あさぎり」そして補給艦「とわだ」の約650名で構成される派遣部隊が、母港からの長い航海に続き、協力支援活動に従事していた。赴任の際に、自衛艦旗を掲げ錨泊する3隻の自衛艦を見た時、私は自分の家に帰ったような安堵感と派遣部隊に参加できるうれしさと緊張を感じていた。  赴任後、私は協力支援活動を実施するにあたっての各国海軍との調整を任された。海上自衛隊の派遣が既に2年間に及ぼうとしており、その存在は広く認められていたものの、やはり人対人、国対国の交渉である。当初は、互いの妥協点を見つけるのに苦労し、時には利己的とさえ思える相手の要求に憤りを覚えることもあった。今では、互いの要求が異なることは国際社会の一側面であって、その中で相手を納得させる言動と自分を理解してもらえる行動が必要なのだと感じている。  1か月もすると「とわだ」をはじめとする各艦の誠実な協力支援活動が、各国海軍との信頼関係を築きあげ調整も順調となった。そして、国際テロの撲滅という共通の目的が、徐々に連帯感を生み、対話を繰り返していくうちに海上自衛隊が各国から高い評価を得ていることを知った。海上自衛隊を含む各国海軍は、互いに譲れない部分を有していたものの、洋上給油を終了して他国海軍艦艇「THANK YOU」の意味を込めて海上自衛隊の自衛艦旗を掲げてくれた時が、この活動に参加している一員として誇りに思える一瞬であった。  7か国延べ36隻の艦艇に対して協力支援活動を行い帰国の途につき、11月19日、母港である舞鶴港への入港をもって派遣が終了した。入港時、あいにくの雨であったが、その達成感から心の中は実に爽快で晴れやかであった。 執筆:第3護衛隊群司令部 1等海尉 稲葉 洋介 ▼インド洋上で各国海軍と協力支援活動にあたる海上自衛隊隊員