第3章 分野別に見た外交 第1節 国際社会の平和と安定に向けた取組 【総論】  2003年は日本及び国際社会の平和と安全に対する脅威への対応が大きな課題となる中で、内外における安全保障の確保が最重要の課題となった一年であった。国際社会は、複雑で多様な地域紛争の発生、国際テロや大量破壊兵器等の拡散といった脅威が存在するなど様々な流動的な要素をはらんでいる。日本を含むアジア・太平洋地域もその例外ではなく、特に北朝鮮の核問題や東南アジアにおけるテロ事件など不透明・不確実な要素が存在している。  このような安全保障環境の下、日本は、従来通り、〔1〕日米安全保障体制の堅持、〔2〕適切な防衛力の整備、〔3〕日本を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力の三つの柱からなる安全保障政策を推進していく考えである。  日米安全保障体制については、日米安全保障条約を引き続き堅持し、米軍の前方展開の下で日本の安全を確保することが必要であり、日本は、米国との同盟関係を一層堅固なものとしていく考えである。また、2003年は緊急事態に対処するための有事関連3法の整備も行われた。  防衛力の整備については、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本理念に従い、節度ある防衛力整備に努めている。日本は、1995年11月に決定された防衛計画の大綱、及び2000年12月に決定された中期防衛力整備計画(2001年度から2005年度)の下、継続的かつ計画的な防衛力整備を行ってきたが、近年の新たな安全保障環境の中で適切な防衛力を整備すべく、2003年12月の弾道ミサイル防衛(BMD)システム整備の決定に際し、2004年末までに新たな中期防衛力整備計画の前提として新たな防衛計画の大綱を前もって策定することが示された。  平和で安定した世界の中に日本及び日本国民の安全と繁栄がある。したがって、日本は様々なレベルでの外交努力を積み重ね、国際社会の平和と繁栄の実現を追求する必要がある。地域の安定を図るための二国間、多国間の協力、各国との信頼醸成に向けた政治・安全保障対話及び協力、軍備管理・軍縮・不拡散体制の強化、紛争の予防のための取組や国連平和維持活動(PKO)への参画等を通じた地域紛争への対応、域内各国の経済発展への支援・協力を通じた地域の安定性の増大、国際テロの防止・根絶のための努力等の分野で、日本は引き続き積極的な役割を果たしていく考えである。